2008年9月29日月曜日

湖畔の名作

1995年から2001年にかけてインディアンスは、アルバート・ベル、マニー・ラミレス、ジム・トーミ、ケニー・ロフトンなど、スタープレーヤーを擁して黄金時代を迎えていた。




同時に、当時開場(1994年4月)したばかりのジェイコブス・フィールドの人気と相まって、およそ5年半もの間、連日連夜満員御礼になった。記録を破られた今も、野球史に残る偉大な記録である。




尚、ジェイコブス・フィールドという名前は2007年までで終了、地元保険会社のプログレッシブ社にネーミングライツを販売してしまったため、今年からは『プログレッシブ・フィールド』となっている。名前変更以来訪れていない為、個人的には呼びなれないが、徐々に慣れていくだろうか。




そういえば、ココで行われた昨年のプレーオフで謎の虫が大量発生し、マウンド上のチェンバレンを襲ったのが記憶に新しいだろう。














さて、プログレッシブ・フィールドも例によってカリスマ設計事務所HOKの作品だが、同年代に生まれた他球場とは一線を画す、個性的なデザインと仕掛けが目を引く。




コテコテのネオ・クラシック対決であればボルチモアのオリオール・パークに軍配が上がるだろうが、個人的にはプログレッシブ・フィールドの方が断然好き。




左右非対称でカクカクしている外野フェンスや、オープンコンコース&外野コンコースのフリースペース、フィールドが近いスタンド、スタイリッシュなスイートルーム等は、完全にHOKの十八番である。これは同年代のオリオール・パークやシカゴのUSセルラー・フィールドと同じく。


















しかしながら、今でこそ流行っている、外野フェンスに大型LEDビジョンを埋め込んでしまおうという奇想天外なアイディア(これは後にトロント、LAドジャース、カンサスシティが真似てる)や、歯ブラシ状の照明塔なんかはココ以降スタンダードになっていく傑作。特に夜になると映像のシカケと、照明の美しさが一段と目を引く。



































また”敢えて”キャパシティをコンパクトに抑えることによって、心地よい一体感が生まれ、こちらも同年代のセーフコ・フィールドや、テキサスのレンジャース・パーク等の”オオバコ球場”には無い都会的な雰囲気が漂う。



































何と言っても業界でも有名なのは、この外観(これはまだジェイコブス時代)。かつて鉄鋼業で栄えた工業都市クリーブランドをレペゼンしているかのような、鉄骨がむき出しになっているアグレッシブなデザイン。


































普段はあまり注目されることは無いが、居心地の良さと、洗練された雰囲気が程よい、バランス感覚に優れた球場。自信を持って是非とも訪れて頂きたい!!と大推薦したいトコだが、一点だけ不安材料が。




クリーブランドの街自体の雰囲気がすこぶる悪いのだ。というか怖い。工業の衰退により、一時はゴーストタウン化したと言われた街も活気を取り戻したと言っているが、昼間から不穏な雰囲気が漂うし、夜なんてとても出歩くような気分にならない。





初めて訪れた時は、アメリカにもこんな街があるのか・・・と驚いたくらいドンヨリとした雰囲気で、過去3回の訪問で、ホテルと球場以外の場所にほとんど行ったことが無い。





昼間出歩いている人も少ないのに、試合開始の時間になると何処からともなく人が集まってきて、この人達はどこから来たのか?と大変不思議な思いをした記憶がある。





それでも余りあるプログレッシブ・フィールドの魅力を知ってもらいたくて、真の野球好きなら是非観戦に訪れて頂きたい。シカゴやニューヨークから飛行機で1時間ちょっと。ダウンタウンのほぼど真ん中に位置しているため、主要ホテルからはほとんど歩いていけるハズ。





球場に着けば、インディアンスと、この美しいプログレッシブ・フィールドが、地元クリーブランドのファンにとって、いかに”誇り”と”希望”になっているか、ということがお分かり頂けるに違いない。





ウンチクの指摘どおり、広島市新球場と前田智徳についても近々語らねばなるまい。

2008年9月26日金曜日

偉大な記録

日米ともに野球シーズンはいよいよ佳境に入っているが、様々な個人記録の更新に関する報道も活発になっている。




そんな中、今月始めにある一つの素晴らしい記録が塗り替えられた。レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークのチケットが456試合連続でSold Outとなり、メジャーリーグの新記録を打ち立てたのだ。



















選手個人やチームの記録とは直接関係ないかも知れないが、しかしファンとチームが一緒に作り上げた記録だからこそ、価値のあるモノと言えよう。





2003年5月から足掛け約6年弱!全ての試合のチケットが売り切れ、また昨今のレッドソックスの人気と勢いから、今後も暫くこの記録は続いていきそうだ。























この記録の間、レッドソックスは04年、07年と2度もワールドチャンピオンに輝いており、ファンの後押しが結果として現れている理想的なカタチと言えよう。























さて、ファンが球場にどれくらい足を運んだか?というお題に対して、一般的には「観客動員数」という数値が用いられる。しかしながらフェンウェイ・パークの動員数は、いわゆる”大箱”(収容人数55,000人クラス)を持っているヤンキース、メッツ、ドジャース、カージナルス等には到底かなわない。





しかしながら「観客動員率」という数値に着目してみると、フェンウェイ・パークは実に101%をはじき出しており、全試合フルハウスという結果を実証している。(ちなみに2位はシカゴ・カブスのリグリーフィールドで99%、こちらも驚異的である)。





まあ、フェンウェイやリグリーのような”歴史遺産的”な球場はキャパが小さい(収容人数39,000人前後)ため、動員数で他チームに勝ることはなくとも、動員率が100%前後というのはチケットのプレミア性を生み出し、球団の価値を高めることになる。





「チケットなんかいつでも手に入るべ。」なんてファンに思わせてしまったら終わりなワケで、常にチケットが入手困難。という状況が、余計ファンを球場に足を向かわせることになる。日本で言えば阪神甲子園球場が最もそれに近いカタチとなっている。

















ということで昨今の新球場建設ブームの中で、”敢えて小箱球場を作ろう”という動きが活発となり、その結果マーケティング的に成功を収めたチームと球場がある。





それこそがクリーブランド・インディアンスとジェイコブス・フィールド(当時。今年からネーミングライツ契約で『プログレッシブ・フィールド』)であり、レッドソックスに破られるまで、1995年から2001年までの間に、455試合連続Sold Outという偉大な記録を打ち立てたのだ。


















以前は「球場やスタジアムは大きければ大きいだけ良い」というような風潮もあったが、観客動員数にとらわれずに、「身の丈にあったキャパで動員率を上げる」という発想。また、観戦環境の快適性・安全性という観点からも、見習うべき点は多々あると思う。




次回はメジャーでも屈指の好球場として知られている、プログレッシブ・フィールドについてハナシを進めて行きたい。

2008年9月23日火曜日

泣いた。

フリーター時代のデカは、うんちくやパパと度々カリスマ坦々麺ショップ『はしご』を訪れていた。




通常はしごの坦々麺(はしご的には”ダンダン”メン)の辛さのレベルは普通→中辛→大辛という具合だが、今日カウンターで並んだ客が”ゲキ辛”という注文をしていた。




一時は足繁く通いつめ、かつ辛いもの好きでもあるデカだが、ゲキ辛というカテゴリーの存在には初めて気づかされ、いささか驚いた。




さらにその客は運ばれてきたゲキ辛ダンダンにラー油を注ぎ込んでおり、カナリのツワモノであった。




さて、そんなくだらないハナシはおいといて、以前先生も言及されていた、『ラストゲーム(最後の早慶戦)』を見てきた。
























これは見たほうが良い!とか、お薦めっ!というハナシではなく、確実に見なければいけない作品であると断言する。




ネタバレしてしまうため、あまりストーリーについては触れないが、試合終了後に両校が校歌・応援歌を交換するシーンでは思わず涙を堪えきれなかった。




劇中にも登場する元慶應義塾塾長の小泉信三は「練習ハ不可能ヲ可能ニス」や「Be a hard fighter, and a good looser」等の名言でお馴染みだが、野球への関わりも大変深く、野球殿堂入りしていたとは知らず、恥ずかしながら勉強不足だった。




学生野球の父と呼ばれている早大野球部顧問の飛田穂洲と共に、野球弾圧と戦った姿に強く心を打たれた。




同様に野球部員たちの野球にかける情熱も。そんな姿を見て、僕は本当に野球が好きなんだろうか?と自問自答してしまうほどだった。




思わず目を背けたくなるツラいストーリーではあるが、一度は見ておかなければならない。




この秋は久々に神宮にも足を運ぼうと思う。

2008年9月17日水曜日

ミラクルレイズ

無事に今年最後の野球場巡業を終え、これからはまた細々と更新していこうと思う。数少ない読者の皆様には今後ともお付き合いいただければ幸いである。





さてこの時期、アメリカ人は開幕したばかりのNFLに夢中で、野球場でもTVモニターでフットボール観戦をしているという矛盾っぷりである。






まあ、5月のNBAファイナルシーズンしかり、よくある光景だがつくづくスポーツ好きな国民だなと改めて感心させられる。






そんな中ベースボールはと言うと、先週・今週と大注目を集めていたのがレイズとレッドソックスのア・リーグ東地区の首位攻防戦である。






本ブログでも度々紹介してきた超弱小球団レイズの地区優勝(最低でもプレーオフ進出)がいよいよ現実のものとなりつつある。


















そもそも球団発足以来10年間で9度のビリ、1度のブービー、5割以上の勝率をかつて残したことが無いチームが、早々に今季の勝ち越しを決め、地区優勝間近ということがにわかに信じがたい。しかも”ア・リーグ東地区”において。いまさらながらこれは本当にすごいことである。





ご存知の通り基本的に同地区はヤンキースとレッドソックスのためにあると言っても過言ではないため、どちらかが優勝し、どちらかがワイルドカードを獲得しプレーオフに進出するというのが規定路線だった。少なくともこの14年間は。





その2強を脅かす存在は、強いて言えば豊富な資金で地味にスター選手を獲得し続けている、ブルージェイズであったはず。リプケンやテハダの退団後完全に影が薄くなったオリオールズは無いにしても、まさかレイズに破られるとは相当なインパクトがある。





1994年以降連続してプレーオフ進出を続けてきたヤンキースは早くもレギュラーシーズンで姿を消すことになりそうで、今からオフの大粛清が確実となっている。


























チーム総年俸にして考えるとヤンキースは約237億円で30球団中ダントツトップ、一方レイズは30球団中ビリの約24億円。これだから野球は分からない。


























さて、レイズの驚くべき点は、チームの勝率が6割に近い高水準にも関わらず、打撃、投手の主たる個人成績上位にほとんど誰も名を連ねていないということ。





スター不在かつ、特に誰も目だった個人成績を残していないにも関わらず、これだけの成績を収めている要因は?






薄っぺらい表現であまり好きではないが、”チームワーク”と”ガムシャラさ”意外考えられないだろう。






前にも触れたが、ウェーバー制ドラフトで集まってきたまだ無名だが、有望な若手プレーヤーが、パーシバルを代表するベテラン選手と一体になって悪の帝国に立ち向かっていく姿はなんとも爽快。




















このひた向きさが星野ジャパンに欲しかった。なんてふと思う。





さて、こんな状況で密かにオイシイ思いをしているのはジョー・トーリかもしれない。昨オフにヤンキースを追われるように退団したが、ふたを開けてみれば古巣はあんな状況。

























一方新天地のドジャースでは既にナ・リーグ西地区において優勝を目前に控えており、今頃ざまあみろと思ってるかも知れない。






さらに8月からレッドソックスから移籍してきたマニー・ラミレスとのダッグもまた興味深く、長年ヤンキースとレッドソックスの間柄でハゲシク戦ってきた2名が今度は遠く離れた西海岸で力を合わせて戦ってる姿がなんともオモロい。

























2人はドレッドヘアーを切れだの切りたくないだの、子供のケンカみたいなことをやってるらしいが・・・そうは言いながらも移籍直後から打ちまくっているラミレスがカッコいい。





















話の着地点が見えなくなってきたので、最後にトーリの現役時代のベースボールカードを発見したので報告しよう。






























あまりにもワイルド過ぎて当人と判断つかないほどだった。

2008年9月4日木曜日

チームの人気者 (おまけ)

マスコットのハナシは前回で終わったはずだったが想定外の書き込みもあり、もう少しだけ続けよう。



『Famous Chicken』(上の写真)が野球界初のマスコットか?というワケで再度様々な文献をあたってみたが、やはり最古はNYメッツの『Mr.Met』に間違いないと思う。






Mr.Metは1960年初頭に登場しており、Famous Chickenは70年代末の登場である。





しかし彼の活躍こそがマスコットの認知度・地位向上のキッカケになり、また現在のスポーツの現場におけるエンターテインメントの常識すら変えた、類い稀なエンターテイナーだったということは間違いない事実である。
























”Famous Chicken”こと本名”San Diego Chicken”は、そもそもサンディエゴの地元ラジオ曲のプロモーションの一環で製作されたものらしく、地元の大学や動物園でも活躍してたらしい。






それがやがてサンディエゴ・パドレスの試合中でもパフォーマンスするようになり、ロックミュージックに合わせて踊るダンスがそれまでのボールパークで流れていた”オルガン演奏”に革命を起こし、やがて全国区の知名度となったそうだ。






もともと球団が作成したマスコットではなかっただけに(一応所有権はラジオ局が持っていた)、フリーでNBAやNFLといった様々なスポーツシーンでも活躍したそうで、稼ぎも相当なものだったと確認した。(先述の通り、パドレスの正式なマスコットはSwiging Friarである。)






しかしながら権利関係(所有権)の曖昧さや、過激なパフォーマンスで度々裁判沙汰になったり、試合進行を妨げる存在として敬遠され、人気が低迷、一時は不遇の時代を過ごしたようだが、現在もマイナーリーグを中心に全米中で活躍を続けているという伝説のマスコットというワケである。Chickenのスケジュールはこちらで確認することが出来るが、多忙を極めている。





















尚、マスコットの殿堂こと”Hall Of Fame Mascot”(そんなのあるんだ。)にも名を連ねており、野球界からはNYメッツの『Mr.Met』と先日話したフィラデルフィアの『Phille Phanatic』(その1参照)しかメンバーに名を連ねていない。





Mr. MetやPhillie Phanatic含め、他のマスコット達は所属のチームや団体があるにも関わらず、Chickenだけはあくまで”フリー”という立場をとっている。




さらに米有力スポーツ雑誌『The Sporting News』では”20世紀のスポーツ界で最もパワフルな100名”の中でベーブ・ルースやモハメド・アリと肩を並べて登場したり、エルビス・プレスリーのライブや、ホワイトハウスに招待されるなど、マリエもびっくりなセレブなのである。
























一部報道によると、体力の限界により引退も囁かれているが、まだまだ元気なChickenの姿を、アメリカのどこかの片田舎でふと発見することが出来るかもしれない。






















話題も一段落したトコロで、恐らく今年最後の野球場巡業にでも出かけてくることにする。