2009年6月15日月曜日

緑の怪物 (その3)

試合開始間際ともなると、満員に膨れ上がったスタンドは、真っ赤に染まる。




想像に難くないが、ファンのテンションは常に高く、狭い座席、コンコース、通路には人が溢れ返り、殺気さえ感じる。





しかしながらフェンウェイ・パークのノスタルジックな美しさが、雰囲気を決して殺伐とさせることはなく、場内には「ココにしか流れていない特別な空気」というものが存在する。







熱狂的なファンの歓声とブーイング、ホットドッグやビールの匂いが充満してる薄暗いコンコース、カクテル光線に照らされた芝の輝きと土の匂い、隣のファンと肩肘がぶつかってしまうほど狭い座席。






お世辞にも快適とは言えない観戦環境にもかかわらず、ファンはこの”空気感”を求めて、手に入りにくい高価なチケットを手に入れ、わざわざ球場まで足を運ぶのだろう。


これは同じく熱狂的なファンを持つカブスとリグリー・フィールドの雰囲気にほとんど似ているが、ちと違う点もある。



それは何かと考えたが、多分、過去5年で2回ワールドチャンピオンに輝いたレッドソックスと(2004年、2007年)、100年ソレから遠ざかっているカブスとの差かなとも感じた。




すっかり我がチームに対して”プライド”を取り戻したレッドソックスファンと、いまだ”自虐的な”カブスファンという構図は、少々乱暴かもしれないが、両チームの成績を見る限り、その観戦スタイルと気持ち的な余裕の差があるのではと感じた。




レッドソックスとて”バンビーノの呪い”が解けるまでは実に86年も要したわけだが、ファンの誰しもが「あの2004年で全てが変わった」と口を揃えて話す。




チームもビジネスチャンスと捉えたのか、ここぞとばかりに04年以降スイートルームやラウンジ席など、一見古き良きボールパークには似つかわない、いわゆる”今風のアッパーグレードのシート”を次々拡張・販売し(→主に法人客相手に)、経済的にも大きな成功を収めてきた。




以来、勝って→稼いで→良い選手を獲って(07年の松坂の巨額契約含む)→そしてまた勝つ、というチームの好転が04年以降始まった。




ただ一方で、球場のあちこちを歩くと、ちょっとレッドソックスの(商業的な)色気が出すぎてる感じがしなくも無い。ちとそんな気分にもなった。




いまだに広告を極限まで排除し、ショボい設備のスイートルームしか持たず、ガンコなまでに昔のスタイルを崩さないカブスとは、対照的である。




なんて難しい話しはさておき、隣に座ったギャルの過激なフリップに目を奪われつつ、7回はお決まりの『Take Me Out To The Ballpark』と、8回はココでの定番、『Sweet Caroline』の際には球場内のボルテージが最高潮に達する。




通ぶるなら「Oh Oh Oh~」と「So Good!」の掛け声もお忘れなきよう、予習いただきたい。








まあ、つべこべ言わずとも、赤レンガがお似合いのボストンの街並みに調和した、フェンウェイ・パークの優雅な佇まいと、心底レッドソックスを愛し、絶えず球場に足を運ぶファンの姿に触れられたことは、僕の野球人生の中でも、思い出深き経験として今後も記憶されていくだろう。




文中で少し触れたテッド・ウィリアムズや、Sweet Carolineのハナシはここでは書ききれない為、またいつか別の機会で取り上げられればと思う。

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