2008年6月30日月曜日

クイーンズの雄 (その2)

4回に渡ってダラダラとお届けしてきたNY特集も今回がひとまず最終回。





最後に来年4月オープン予定の新しいNYメッツの本拠地、シティ・フィールドについて。既に外観は完成しつつある(隣は現役のシェイ・スタジアム)。

















設計段階から既にシティバンクによるネーミングライツ取得が発表されていたが、これは以前お話しした通り、予めネーミングライツによる収入を建設費に充ててしまおうという発想。





それにより、新球場建設の為の特別予算に対するNY市民への追加課税を軽減できるというワケ。よってスポンサー企業はネーミングライツによる単なる広告価値だけではなく、地域社会への貢献も実現できる。





しかしそのネーミングライツの額は史上最高と言われており、年間23億円×20年分=約460億円である。後にシティバンクは昨今のサブプライム問題で1兆円規模の損失を出すことになり、それどころじゃないだろ的な意見も聞こえてきそうだが、如何なものか。





さて、新球場のデザインについては今更説明不要なくらい、HOKお得意の演出が随所に散りばめられている。レンガと鉄骨を組み合わせたシックでクラシックな色使いに、360°アクセス可能なオープンコンコース、エンターテインメントスペースを配置、そして設備はハイテクというまさにネオクラシックを地で行く作り。
















































コンセプトは非常に明確で、”メッツ色”を前面に出すのではなく、かつてニューヨークを本拠地としていた2つの人気チーム、「ドジャース」と「ジャイアンツ」をオマージュするというもの。





かつてブルックリン・ドジャースで活躍した、あのジャッキー・ロビンソンの名を冠したメインホールなど仕掛けられているが、何と言ってもハイライトは球場外観がエベッツ・フィールド(ブルックリン・ドジャースの旧本拠地)をカンペキに模して設計されている点。

































以前も取り上げたとおり、既にメッツは2001年よりブルックリンにサイクロンズというシングルAチームを誘致しており、地元では圧倒的な人気を呼んでいる。















やはりマーケティング的な観点(どうやってヤンキースに対抗するか)からも、オールド・ベースボールファン=ブルックリン地区のファン層の囲い込みというのはメッツにとって重要な課題なのだろうとデカは推測する。





仮にコレが01年のサイクロンズ誘致時から計画的に練り上げられていたプロジェクトだったとしたら、来春のシティ・フィールドの完成を以ってひとまず完結することになろう。





一方、ヤンキースも既にシングルAをスタテン・アイランドに誘致しており、マンハッタンを挟んで、ブロンクス地区と共にファン層の囲い込みに対抗するか。
















大都市NYにおけるファン層の拡大戦略を新球場建設と、マイナーリーグ・チームの存在意義にまで重ね合わせて考察したら。中々オモシロイ展開となるワケである。(但し、単なる私見であるので悪しからず。)




最後にシティ・フィールドの『Fan Walk』を紹介しよう。




これは新球場のメインエントランスにファンの「名前」や「メッセージ」を彫ったレンガを敷き詰めることが出来るという企画。既にクリーブランドや、シカゴでも同様の企画が実施されているが、いずれも好評を得ている。

















レンガの大きさによって値段は違うが、1ブロック$195~$395でウェブサイト上で販売されている。

















ファンも新球場の一部として参加することができ、その収入によってチームも潤う。





これで昨今の落書き問題も解決するハズである。

2008年6月29日日曜日

クイーンズの雄 (その1)

仮にニューヨークに旅行か出張に行く機会があったら。仮に貴方が野球好きで、球場に行くチャンスがあったら。



ほとんどの方はヤンキース、ヤンキー・スタジアムを選ぶことだろう。



どうもヤンキースに比べて知名度、人気ともに分の悪い感のあるNYメッツだが、こちらの魅力もお伝えしておきたい。



シェイ・スタジアムは築40年以上をむかえ、多分当時としては近代的だったんだろうなぁと思わせる外観に、同じく当時大流行した”クッキーカッター”式の大型スタジアム。


















クッキーカッターは60年~70年代に大流行した多目的スタジアムの典型で、多くのチーム(を持つホームタウン)が当時MLBとNFLとの共用スタジアムを建設した。ここもその一例。





現在は間借ししていたNYジェッツも出て行き、野球専用スタジアムとしてその余生を送っているが、もともとはあまり評判のよくない球場である。




すぐ近くにはラ・ガーディア空港があり、忙しく行きかう飛行機の騒音は試合中もひっきりなし。コンコースは薄暗く、観客席や手すりも至る所が傷み、さびていたり。そこら辺のウェブサイトやガイドブックを見てもこの球場を賞賛している意見はあまり見かけない。


































しかし前評判があまりにも悪すぎたせいか、デカは意外と良い球場ではないかと逆に好印象を持った。


















多目的大型スタジアムにしてはフィールドが近く見えて、ヤンキー・スタジアムには無い、ゆったりまったりとした空気が球場全体を包む。


















ベタにチームカラーの「青」と「オレンジ」をしっかり基調にした球場全体の色使いも、昨今のシックな雰囲気の新球場に慣れてしまった身には逆に新鮮。



















既に完成間近の新球場『シティ・フィールド』がセンター後方に隣接し、観戦時には若干の圧迫感を与えるものの、シェイももう少し現役でいてほしい感じもしなくはない。


















こちらも今年限りで取り壊される前に、是非一度は拝んでおきたい球場と推薦したい。





何と言っても昨今のメッツのラインナップといったらヤンキースより豪華と言っても過言ではない。




投手陣はペドロ・マルチネスと、ヨハン・サンタナの新旧サイ・ヤング賞コンビは言わずもがな、かつてヤンキースでも活躍し、足を顔の近くまで上げるフォームが有名な”男爵”こと、オーランド・ヘルナンデスも未だ健在。クローザーにはデカ大ファンのビリー・ワグナーが控える。


























     野手陣も、ホセ・レイエス、カルロス・ベルトラン、カルロス・デルガド、モイゼス・アルー、デビッド・ライトと新旧のビックネームが顔をそろえる。




あまりにラインナップが豪華な割りに成績がいまいち平凡だったため、6月に監督のランドルフが解任された直後であるが、それにしても見所は多い。




ましてや他ディビジョンながら、ある意味NYメッツの”ルーツ”である、LAドジャース、SFジャイアンツ戦ともなればそれなりの盛り上がりは期待できるハズ。侍タカシ・サイトウvsデビッド・ライト。

















シェイ・スタジアムを出て、地下鉄でマンハッタンに向かう途中、隣接地にはもう完成間近のシティ・フィールドが。

















続く。。。

2008年6月25日水曜日

ブロンクスの雄 (その2)

新ヤンキー・スタジアムといえば、レッドソックスの大ファンの建設作業員が、ヤンキースに呪いをかけようとオルティスのレプリカジャージを建設現場に埋めたという嘘のようなホントなニュースが記憶に新しい。
























手がけるのはもちろんアノHOK















新ヤンキー・スタジアムのフィールドの形状は、現役と見比べて頂くと分かるとおり、ソックリ。というかホームベースから外野フェンスの数値は全て同じに設定してある。(バックネット裏までの距離のみ縮められている模様。)














「伝統は引き継ぎ、設備は最新鋭」



まさにHOKの十八番である。



特に球場正面は1920年代の先代スタジアム建設当時の形状を再現しており、オールドファンにはたまらない演出といえるだろう。
















観客席の幅は広げられ、その分座席数は若干減る模様。現役のショボイ映像設備は相当グレードアップされ、エンターテインメント性が格段に向上するはず。


スイートルームや、バー、レストランの数も増え、観戦方法も多様化する。













球場外周のコンコースは吹き抜けで採光が良く、開放感のある仕上がりになる予定。















最近他球場に見受けられる奇をてらった演出や、小細工は無いものの、”正統派”オトナの球場が完成するに違いない。大御所HOK渾身の傑作に今からワクワクを禁じえない。








ヤンキースは既に来季以降のスポンサーシップセールスを開始しており、多額の建設費を回収するために、早くも「現状より良い条件」を提示するスポンサー探しに躍起になっている。



例えば11年間続いたヤンキースとアディダスのパートナーシップも今季で終了し(させられ)、来季の新スタジアム以降はナイキがそれに取って代わる予定。恐るべし・・・
















次回はクイーンズの雄、シェイスタジアム。

2008年6月19日木曜日

ブロンクスの雄 (その1)

今年のMLBオールスターゲームまで1ヶ月を切った。イチロー、松井、福留等の日本人選手出場の可能性があり、注目が集まる。さらに舞台は今シーズンを最後に現役を退くヤンキー・スタジアム。





既にご承知の通り、シェイ・スタジアムも今年で最後となり、NYヤンキース、NYメッツ共に来年からは新球場でプレーすることとなる。





NYの両球場については、個人的にさほど思い入れは無いものの、野球刑事としては一度は触れなければならない話題と思い、今後数回に渡り両球場の「現状」と「今後」について簡単にハナシを進めて行きたいと思う。





まずはブロンクスのヤンキー・スタジアム。 たぶん世界一有名な野球場。


















現行のヤンキー・スタジアムは「1923年開場」と一般的には表記されているが、1973年には一度取り壊されおり、1976年に再び建て直されている。俗に言われる、『ルースが建てた家』→『スタインブレナーが建て直した家』である。




実質は築30年強なので、日本の球場に例えるなら甲子園球場ほどの”伝統”は感じず、神宮球場的な”古さ”が際立つ。





球場の作りは流行のオープンコンコースや、360°アクセス可能な作りにはなっておらず、アミューズメント的な娯楽スペースも用意されていない。





強いて言えば外野左中間にあるモニュメントパークがそれに当たるか。ルース、ゲーリック、ディマジオ等、数々のレジェンドにお目にかかれる。これこそヤンキースだけがなせる技。個性というか特権。
















他の名物と言えば、試合後に流れるシナトラの♪New York New York♪と、グランド整備のおじさんのYMCA。あとはMLB一価格が高いが特に旨い訳ではないビールとホットドッグ(by Nathans)くらいか。


















そうは言っても、一般的には世界一人気のある野球チームの世界一有名な球場ということで、全米中・世界中から訪れるファンや観光客にとって憧れの地であることは間違いない。




















同様に地元ファンやメディアのテンションは常に高く(つまり過激)、単に”野球観戦”というだけではなく”ホンモノのメジャーリーグの空気に触れる”と言う意味では最も適した場所なのかも。



















個人的に印象的だったのは駅から球場まで続く高架下に並ぶスポーツバーやヤンキースグッズの店の数。オフィシャルっぽいものから、パチモノっぽいアイテムまで圧巻の品揃え。


















尚、BOSTON RED "SUCKS"のようなTシャツは生半可な気持ちで着ない方がいいと思う。遊び半分の観光客にとっては高い代償を払うハメになるだろう。















いずれにせよ、無くなる前に(今シーズン中に)一度は訪問されておいたほうが良いかもしれない。でないとまだ見ぬ「新ヤンキー・スタジアム」との違いが分からないまま一生を終えることになってしまう。





メンツ的には一時期よりはスター性にかけるラインナップかもしれないが、生で見れば決して損した気分にはならないのでは。

次回は新ヤンキー・スタジアムについて。続く。。。

2008年6月15日日曜日

あれから僕達は

先週末、第90回全国高校野球選手権大会(いわゆる夏の甲子園)、神奈川県大会の組み合わせが発表された。





今年は区切りの”記念大会”ということで、北海道、東京の他、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、兵庫の6県も東西・南北に分かれ、2校ずつ代表校が選出される。






我が母校は『北神奈川大会』で、7/15~7/27の決勝戦@横浜スタジアムまで、6試合が予定されている。優勝候補の東海大相模、桐蔭、桐光などがヒシメク激戦区。


















一方『南神奈川大会』は北地区に比べて強豪校が少ないと言われているが、横浜高校も藤嶺藤沢、日大藤沢、平塚学園と同ブロックに身を投じ、こちらも激戦が予想される。





尚、例年より2、3日早いスケジューリングとなっているが、これは8月の北京オリンピックの影響で、本大会の日程が前倒された影響によるもの。





まあ、どういう基準で南北に分けられたのか良く分からない部分もあるが、対戦相手が決まった以上、目の前の敵を倒すのみ、後輩達には是非頑張ってもらいたい。





さて、前回神奈川県大会が2つのブロックに分けられたのはちょうど10年前。1998年の第80回記念大会時もそうだった。






当時は神奈川県が”東西”に分けられ、東地区は松坂大輔擁する「横浜高校」が、西地区はスマップ中居君もピックリの「平塚学園」が甲子園出場を果たした。





ちょうどデカたちは神奈川県東地区の第1シードとして出場していたものの、早々に負けてしまい、短い夏だったと記憶している。






県大会敗退後、湘南のビーチで日焼けをしていたら、横浜vsPL学園・延長18回の死闘がラジオから流れて来たのを思い出す。エライ試合やってんなーと、言いながらもギャルの水着姿に釘付けだった。



















あれから10年。






松坂は100億ドルでレッドソックスに入団、上重聡は立大を経て日テレのアナウンサーに、明徳義塾の寺本四郎は故郷の徳島でスポーツバーを経営しているというウワサが。






同じくあの夏を彩った新垣、和田、杉内はいずれもソフトバンクで活躍している。




















デカの仲間はというと、あれから大学に進み、就職。そしてキャプテン、パパ、ずんなま、アゴさん、天然パーマのよっちゃんまでもが結婚し、家庭を築こうとしている。






デカは?






デカになった。






それだけかもしれない・・・


























SMAPの夜空ノムコウを日吉のベルボアで熱唱してたのもちょうど10年前の1998年。






♪あのころの未来に僕らは立っているのかな~♪







なんて歌詞が妙に心に突き刺さる。






何故か高校野球の話題から、ふとセンチメンタルな気分になってしまった。




当時より遥かに大きな希望や不安を胸に、10年後のデカと仲間達はどこに立っているのだろう。






しかし、コレだけはずっと変わらないはず。。。









エンジョイベースボール♪

2008年6月10日火曜日

☆祝☆

狭いスタンスに、背筋をピンと伸ばして、お尻をプリッと突き出す構え。




左脇を開けて、ヒジを上げてバットをカクカク動かしてタイミングを測る。




極端なアッパースイングから、非常に大きく、そして優雅なスイングワーク。




野球史において最も美しいとさえ言われている、唯一無二、ケン・グリフィー・ジュニア(以下ジュニア)のスイングである。




















若かりし頃は「ハンク・アーロンのホームラン記録を抜くだろう」なんて言われていたが、マリナーズ→レッズ移籍以降、幾多のケガや、スランプを乗り越え、ようやくメジャー史上6人目となる600号ホームランを記録した。




思ったより時間が掛かったかもしれないが、星の数程いるメジャーリーガーの中でも、”たった6人”しか成し得ていない大記録である。(ボンズとソーサの疑惑を除けば正味4人目ということになる。)

  • 762本  - バリー・ボンズ  
  • 755本 - ハンク・アーロン 
  • 714本 - ベーブ・ルース  
  • 660本 - ウィリー・メイズ  
  • 609本  - サミー・ソーサ  


いくつかのメディアでも既に報じられているが、ジュニアの特筆すべき点は”クスリのスキャンダル”とは無縁だということ。特に米国内では改めて、ジュニアの功績に目を向けようという動きがある。(アトランタ・ブレーブスのチッパー・ジョーンズもしかり。)
























1998年、全米中がホームラン狂想曲に沸き、ナショナル・リーグではマグワイア(70本)とソーサ(66本)の一騎打ちに注目が集まったが、同年アメリカン・リーグの本塁打王にひっそり輝いたのはジュニア(56本)であった。当時は「2人のHR競いから脱落」したなんて報じられたものだが、ジュニアこそクリーンな”真のキング”だった。




今となっては、当時の主役であったボンズ、マグワイア、ソーサ等が相次いでスキャンダルにさらされていく中、ジュニアは真のスーパースターとして今後も永久に語り継がれていくハズ。




















また弊ブログでも取り上げているように、近年は黒人への野球の普及活動や、がんチャリティ等でも先頭となってリーダーシップを発揮している。




明るくて人懐っこい性格と、世界一美しいスイングで、もう少しの間ファンを魅了し続けて欲しい。
























ジーター、Aロッド、プホールズなど、スタープレーヤーは数多くいれど、デカの中で永遠のスーパースターといったら今も昔もジュニアだけである。