野球ほど数字や記録が多岐にわたるスポーツは他に無いだろう。
そのルーツを遡ると、1900年代に入る前には既にスコアブックが存在し、さまざまな記録の概念も確立されていたと言われている。
打者であれば、打率、打点、本塁打。
投手であれば、勝敗(勝率)、防御率、奪三振。
こういったタイトルが100数十年もの間、何の疑いも無しに”主要タイトル”として重要視され続けてきた。
ところが1970年代にビル・ジェームスという男がこれらのタイトルの価値、に疑問を投げかけたのである。
例えば首位打者、打点王、最多勝投手などは高額の年俸を稼ぎ、スタープレーヤーとして君臨してきたが、実際はどれだけチームの勝利に貢献してきたのかと。
裏を返せばこれらの主要タイトルとは無縁でも、チームの勝利に貢献している選手はいるのではないかということ(この辺が後に話す『マネーボール』のポイントとなる)。
そもそも野球というスポーツは個人競技ではなく、団体競技であり、チームの勝利を目的としているスポーツである。
当然チームが勝つためには、相手より1点でも多く得点を取るべきであり、打者には「得点産生能力」が求められる。(投手でいえばその逆。)
当時無名のライター、野球史研究家であったジェームスは、「産生得点(Runs Created)」の概念を提唱し、打力の指標は旧来の打率、打点、本塁打という数字ではなく、「得点を産生する能力で選手を評価するべきだ」と主張した。
そこで「産生得点(RC)」の計測法を考案したのである(計算式は非常に複雑かつ、あまり意味がないものなので、ウィキを参照頂きたい)。
これこそがセイバーメトリクスの誕生であり、旧来の指標に囚われることなく、野球のデータを客観的・統計学的観点から捉え、選手の価値や戦略の正当性を分析するというものである。
尚、”セイバーメトリクス”とは、アメリカ野球学会の略称SABR(Society for American Baseball Research)と測定基準(metrics)を組み合わせた造語である。
またセイバーメトリクスでは、打点、得点圏打率、防御率など、”たまたま”そのシチュエーションに出くわしただけというような数値も否定し、さらに「勝負強さ」や「采配の妙」というような、数値化できない能力は無視。
さらに、バントや盗塁といった戦略をも真っ向から否定したことも、当時は目からウロコであった。
ところがこう言った主張は、現場の監督、コーチ、スカウトなどには到底受け入れられず(彼らの仕事を半ば否定・無視することになるから)、当時は単なる野球オタクの戯言として、半ば冷やかに受け取られていたらしいが、一部のマニアックなファンや、ESPN誌なんかに取り上げられるようになり、80年代後半にはセイバーメトリクスの認知度が徐々に広まっていった。
しかし彼の究極の目的は、セイバーメトリクスをファンやメディアの批評のツールとするだけでなく、実際に球団運営に反映させることだった。
セイバーメトリクスがその後、90年代後半から00年代にかけて、実際に球界の常識を覆していくほど影響力を持つとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。。。
続く。
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