2010年3月30日火曜日

その名の通り (最終回 プロ野球編)

1934年に日本で初めてのプロ野球チーム「大日本東京野球倶楽部」が誕生し、翌35年にはアメリカ遠征をおこなっている。



ところが同チームにまだ”ニックネーム”が無いことを知った、当時世話役だった、フランク・オドールにより、『東京ジャイアンツ』を提案される。
































理由はオドール自身がニューヨーク・ジャイアンツの選手であったこと、ジャイアンツが当時アメリカでも最も人気のあるチームの一つだったことが挙げられるが、以後それが定着する。





正式名称も東京ジャイアンツから、いつしか日本語読みとなり、東京巨人軍、読売巨人軍と変化して行った。。。





これが日本におけるプロスポーツチームのニックネームの起源と言われている。





36年に誕生した阪神は、米国屈指の工業都市であった、デトロイトを、地元・阪神工業地帯の姿と重ね合わせ、デトロイト・タイガースから、『タイガース』を拝借した。





同じく36年に誕生した中日は、当初「名古屋軍」と呼ばれていたそうだが、当時・親会社の中日新聞社長の杉山”虎之助”の名前にちなんで中日タイガースにせいっ、て言ったらしいけど、「社長、タイガースはもう大阪で使われています!」って話しになったらしい。んで、虎之助の干支が、”辰年”だったため、そのまま『中日ドラゴンズ』になったそうだ。






戦後、広島復興のシンボルとして誕生した”広島カープス”は、地元出身の政治家、谷川昇によって名づけられた。

















鯉自体が出世魚であり、元々広島市内を流れる太田川が鯉の産地であったこと、広島城が”鯉城”というニックネームを持っていたことが決め手となった。谷川自身ハーバード大を卒業したほど英語が堪能な人物だったらしいが、後に市民からCARPは単複同形じゃね?という指摘が入り、結局『広島東洋カープ』となった。




僕が知る限り、世界中でも類を見ない「~S」とニックネームが複数形にならないチームである。




『(東京)ヤクルト・スワローズ』のニックネームは、前身である国鉄時代、国鉄唯一の特急列車が「つばめ号」だったことに由来しているらしい。


























                                                   

国鉄スワローズ→サンケイ・スワローズ→サンケイ・アトムズ→ヤクルト・アトムズ→ヤクルト・スワローズ→東京ヤクルトスワローズと変遷していった。




『横浜ベイスターズ』は、横浜港と星にちなんで。前身の大洋ホエールズは、いわずもがな、大洋漁業(現マルハニチロ水産)が捕鯨を得意としていたため。






こちらも親会社が変わるたびに、松竹ロビンス→大洋ホエールズ→大洋・松竹ロビンス→大洋ホエールズ→横浜ベイスターズ、と球団名も変わっていった。





一方パ・リーグのチームは、度重なる親会社の変更、解散、合併等により、ニックネームの由来もどこを基準にハナシを進めれば良いかよくわからないので、現在のチーム名を軸に説明していこう。



『埼玉西武ライオンズ』は、西鉄時代から、百獣の王、ライオンをイメージして。西武ライオンズとなってからは、「ジャングル大帝」のレオをキャラクターに採用。




西鉄クリッパーズ→西鉄ライオンズ→太平洋クラブ・ライオンズ→クラウンライター・ライオンズ→西武ライオンズ→埼玉西武ライオンズ、と変化。





『千葉ロッテマリーンズ』は、球団の公式見解によると、”海の勇者みたいなイメージ”、、、ということらしい。
























                                                  

チーム名は、毎日オリオンズ→毎日・大映オリオンズ→東京オリオンズ→ロッテオリオンズ→千葉ロッテマリーンズ、と変遷していった。






『オリックスバファローズ』は、以前は近鉄パールス(真珠)というあまりにも可憐過ぎるニックネームだったが(1949-58)、その後59年には現役時代「猛牛」のニックネームで活躍した千葉茂を監督に招へいしたことから「近鉄バファロー」となり、「近鉄バファローズ」となった。その後オリックスと合併し、今日に至る。


























オリックスは、阪急ブレーブス→オリックス・ブレーブス→オリックス・ブルーウェーブとなり、近鉄は、近鉄パールス→近鉄バファロー→近鉄バファローズとなり、最終的に合体して→オリックス・バファローズとなった。






『東北楽天ゴールデンイーグルス』は、東北地方に生息するイヌワシ”Golden Eagle”にちなんで。戦前にも後楽園イーグルスというチームが存在したそうだが、全く無縁。






『福岡ソフトバンク・ホークス』。”ホークス”というニックネームは南海、ダイエー、ソフトバンクと親会社が変わっても、代々受け継がれていき、ジャイアンツ、タイガース、ドラゴンズについで長い歴史を持つニックネームなのだ。元々は南海の社章が鳥をイメージされていたため。社員からの募集で決定された。























南海ホークス→ダイエー・ホークス→ソフトバンク・ホークス→福岡ソフトバンク・ホークス





『日本ハムファイターズ』は新聞の公募で。





東急フライヤーズ→東映ファイターズ→日拓ホームファイターズ→日本ハムファイターズ→北海道日本ハムファイターズ






プロ野球チームって、ファンや、地域の”公共物”なはずなのだが、経営母体やスポンサーが変わるたびに、ニックネームや、チーム名が変更されてきた歴史をみると、改めて日本のプロ野球はメジャーリーグのチームや、欧米のサッカーチームと比べて、独特な歴史を歩んできたのだなと、考えさせられた。





この辺の事情が長らく球団の経営理念なんかにも反映されてきたのだろう。球団は”親会社の広告塔”として、独立での採算や収益を度外視し、スタッフも親会社からの出向陣が多くを占め、長らく旧態依然の経営がなされてきたのだ。





そんなことが球団のネーミングからも見え隠れした今日この頃であった。

2010年3月16日火曜日

その名の通り (その3 ナ・リーグ編)

『ニューヨーク・メッツ』                                       
                               ”メトロポリタンズ”の略。都会人、都会的な、みたいな感じ。実は1800年代にもニューヨーク・メトロポリタンズという野球チームが実在していたらしい。ニューヨークからジャイアンツが、ブルックリンからドジャースが去った後、NYに再び復活した野球チームにこの名称を受け継いだ。チーム自体には全然興味ないけど、ココのロゴは秀逸だと思う。






















                                                                           


『フィラデルフィア・フィリーズ』


フィリーは、フィラデルフィアの通称。またはフィラデルフィアの人。まんま。

























                                                                      

『ワシントン・ナショナルズ』


これもかつて1800年代にDCに存在したナショナル・ベースボール・クラブに由縁している。エクスポズが消滅し、モントリオールから移転してきた際に再び命名される。




『フロリダ・マーリンズ』

Marlinとはマカジキのこと。ヘミングウェイが晩年暮らしたキー・ウエストが舞台となった『老人と海』にマカジキが勇猛な魚として登場することから。しかし、マーリンズ、マリーンズ、マリナーズと混同するね。尚、2012年には本拠地移転に伴い、”マイアミ・マーリンズ”と呼び名が変わる模様。





















                                               


                                                                          

『ピッツバーグ・パイレーツ』

1800年代に起こったリーグ編成のどさくさにまぎれて、他チームから有望選手を引っこ抜いて、略奪したのがもとで、海賊行為、略奪者というニックネームが定着する。そーゆう意味ではは巨人も”読売パイレーツ”だな。




















                                                   
                                                                        


『シンシナティ・レッズ』


レッドストッキングスから。その後チームの大半がボストンに流れ、今のレッドソックスを形成する。赤い靴下はボストンでも受け継がれた。





















                                                
                                                                       



『アトランタ・ブレーブス』                                                    

ネイティブアメリカン(インディアン)の首領と交流のあったオーナーが命名。勇敢な人=インディアンの戦士というニュアンスらしい。


















                                                        
                                                      




『シカゴ・カブス』                                    

CUBとはライオンとか狼とかの野獣の子の総称だが、ココでは小熊のこと。ロゴを見ればおわかりだろう。球団創設当初、他チームから選手を引き抜かれ、若者しか残らなかったチームを見て、当時の新聞記者がCUBS(子供たち)と名付けたと言われている。尚、CUBには「見習い・新米」という意味もあるのだ。



























『ミルウォーキー・ブリュワーズ』                              

ビールの街だから。醸造所。ブリューワー。ロゴにも麦。
























                                                                       


『ヒューストン・アストロズ』


地元が宇宙産業が盛んだから。ちなみにNBAのロケッツもNASAにちなんでと行きたいところだが、こっちは元々はサンディエゴから移籍してきた外様チームで、サンディエゴ時代からロケッツを名乗っていた。ということで関係無いので知ったかぶらないように注意されたい。























                                                                        


『セントルイス・カージナルス』                               

州鳥であるCardinal=ショウジョウコウカンチョウから。深紅のユニフォームとカケて。

















                                                                          
                                                                     


『コロラド・ロッキーズ』


ロッキー山脈から。















                                        



『アリゾナ・ダイヤモンドバックス』                            

アリゾナに生息する、Diamondback=ダイヤガラガラヘビから。














                                                                        




『ロサンゼルス・ドジャース』                                

ブルックリン時代の”トロリー・ドジャー”から。参照



























『サンフランシスコ・ジャイアンツ』                          

こちらもNY時代のニックネームからそのまま拝借。参照


























『サンディエゴ・パドレス』


Padreはスペイン語で神父。かつてスペインからやってきた宣教師団がサンディエゴから布教活動を始めたことに由来。マスコットも修道士。



















2010年3月8日月曜日

その名の通り (その2 ア・リーグ編)

『ニューヨーク・ヤンキース』


丘の上に球場があった「ハイランダース」時代から、「ヤンキース」へ。「ヤンキー」=「アメリカ人そのもの」。という意識がファンにとってはたまらないんだろうが、僕にとってはなんかアメリカ(特にニューヨーク)そのものって感じでなんかイヤだ。恐らく世界一有名な野球チームなだけに、世界中至る所で○○ヤンキースって存在するんだろうけど、そういう意味では米国外で使用するのはおかしいんだよね。


























『トロント・ブルージェイズ』


地元カナダ・オンタリオ州の州鳥、(青)カケス=Blue Jayから。ヒネリなし。ちなみにかつてカナダにもう一つ存在したメジャーリーグのチーム、モントリオール・エキスポズはモントリオールで万博があったからエキスポズに。こちらもヒネリなし。



























『ボストン・レッドソックス』


大昔、赤靴下をはいていたからレッドストッキングス。んで、レッドソックスへ。メンバーの殆どはシンシナティからやってきたため、元々はシンシナティ・レッドストッキングス(今のレッズ)が実はチームの源流。







『ボルチモア・オリオールズ』


元々チームはミルウォーキー発祥で、その名もブリュワーズ。で、セントルイスに移転して、ブラウンズ。その後ボルチモアにやってきたのは1954年のコト。地元メリーランド州の州鳥、ムクドリ=Orioleから。ヒネリなし。
























『タンパベイ・レイズ』


長らく、地元の名物マンタ=Devil Rayからニックネームをとったデビルレイズだったが、2008年より”デビル”をとって、心機一転「レイズ=Rays」に。RAYは光線と(なんで)?、エイの2つの意味がある。デビルをとった以降、どん底を抜けたチームの快進撃はご存じの通り。





























『クリーブランド・インディアンス』


1800年代にクリーブランドで活躍したインディアン出身のプレイヤー、ルイス・ソカレキスに敬意を表して。ロゴといい、チーム名といい、アメリカという差別に煩い国で、よく定着してるわな。その点が、これぞニックネーム!と言わんばかりの傑作と評価したい。いまどき政治家や企業がインディアンとか言ったら速攻でどっかの人権保護団体から訴えられるでしょ。




















『シカゴ・ホワイトソックス』


ホワイトストッキングスから。八百長でブラックソックスと揶揄されたり、短パンユニと不遇の時代を経験するものの、今日に至る。






























『カンザスシティ・ロイヤルズ』



カンザスシティで行われている家畜際「アメリカン・ロイヤル ライブストック・パレード」にちなんで。まあ、他にコレといって何もないとこだもんな。






















『デトロイト・タイガース』


球団創設当初の靴下の色(オレンジとネイビーのシマシマ)がタイガーカラーだから。(参照)。





『ミネソタ・ツインズ』


チームの本拠地である、ミネアポリス市とセントポール市が姉妹都市でツインシティと呼ばれいてるため。尚、最近見かけるキャップのTCの文字は、TWIN CITYに由来している。
























『テキサス・レンジャース』


地元警察(公安局)、テキサス・レンジャーから。

























『ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム』


エンゼルスはまんま、LOS ANGELESから。でも微妙にスペルが違うので気をつけよう。エンゼルスはANGELSとなる(LのあとのEがない)。






『シアトル・マリナーズ』


新聞紙上の公募で採用。シアトルが港町だから。





『オークランド・アスレチックス』

元々は1800年代に存在した、フィラデルフィアのスポーツクラブ、フィラデルフィア・アスレチック・クラブから。その後フィラデルフィア・アスレチックス→カンザスシティに移転後、オークランドに辿り着く。チーム名が長いため、通ぶりたいなら、A’s(エーズ)と呼ぼう。アメリカ人相手だと殆ど通じるから。


























次回はナショナル・リーグ編に続く。。。

2010年3月2日火曜日

その名の通り (その1)

野球チームの名称やニックネームは数限りないが、あれは一体どこからきてどのように定着していったのだろうか。





※当然チームのニックネームは野球に限った話しではないが、例によってここでは野球についてハナシを進めていきたい。






世界初の野球チームがニッカポッカをはいていたから、ニューヨーク・ニッカポッカーズ(ニックス)と呼ばれていたと言い伝えられているが、当初はその”身なり”からニックネームが付けられていったと推測するのが全うだろう。





いつしか各地にフランチャイズ化されていった野球チームが、「本拠地都市名」に加えて、彼らのユニフォームの「ストッキングの色」でニックネームが付けられていったことは以前説明した。






ご存じボストン・レッドストッキングス、シカゴ・ホワイトストッキングスを始め、シンシナティ・レッドストッキングス(今のシンシナティ・レッズ)、セントルイス・ブラウンストッキングス等々。。。























ちょっと変わったとこだと、デトロイト・タイガースも球団設立当初、ストッキングの色がオレンジとネイビーの縞模様で、それがトラっぽいということで、「タイガース」と名付けられた。(日本人にとってタイガーカラーと言えば、イエロー×ブラックだが、西洋人にとってのタイガーカラーって、オレンジ×ネイビー、もしくはブラックなんだって。)























でもさすがにいつまでも靴下の色だけじゃ、芸が無いだろってことで、そのうち様々なニックネームが流行っていったが、そのいずれにしろチームが自ら「こう呼んでください!」って決めたものではなく、ファンや地元の人など、第三者によっていつのまにか呼ばれ出していったというほうが正確らしい。






まあ、人間に置き換えればそうだよね。ニックネームって、自分から僕をこう呼んでくれ!っていうより、いつのまにか周りからそう呼ばれて定着するってもんだと思う。






例えば、丘の上に球場があったニューヨーク・ハイランダーズ(NYヤンキースの前身チーム)、背の大きな輩が多かったニューヨーク・ジャイアンツなど。
























ちなみに当時のハイランダーズの本拠地球場はマンハッタンで最も海抜から高い場所に位置していたらしく、その名の通り『ヒルトップ・パーク』と呼ばれていたが、その後本拠地をポロ・グラウンズに移転したあたりからハイランダースではなく、「ヤンキース」というニックネームが定着していったらしい。






















だってもう丘の上にいないじゃんみたいな。






尚、「ヤンキー」を辞書で引くと、”南北戦争時の北軍の軍人”、”アメリカ北東部地方の住人”、などと記載されているが、広義では”アメリカ人そのもの”を指す用語だ。厳密に言えば、オランダからの移民が、イギリスからの移民を「あいつら」と呼ぶ際に「ヤンキー」という呼び方をしたとも言われている。





かつてニューヨークにあったもう一つのチーム、ブルックリン・ドジャースに関しては、ブルックリンにあった路面電車(トロリー)をタダ乗りする輩たちを「トロリー・ドジャー」と呼び、結局それがそのままチーム名に定着してしまった。



























もともとドジャースはブルーカラーの人々をレペゼンしてたからなのか(だからチームカラーもブルーなんだけど)、あまりカッコいいニックネームを付けられなかったのだろうか。ニューヨーカーが、ブルックリンの人々をちょっと差別的に馬鹿にして呼んでたようなもんで。


























そこでドジャースは何度も違うニックネーム、例えばキングスやロビンスとかを提唱したらしいが、あまりにもドジャースがハマりすぎて、以後変更されることなく今日まで至っている。まあ、結果的には世界中でも指折りに有名なチームの一つにまでなったのだが。





ちょっと面白くなってきたところで、また次回。その他のチーム名(ニックネーム)の由来について、紐解いていきたい。