今後チーム内で激しい競争を強いられることは想像に難くないが、好調レイズの一員として今後プレーオフを目指せる環境に身を置ける意義は非常に大きいと思う。また、若い選手が中心のレイズにとっても松井の勝負強い打撃と百戦錬磨の経験は、シーズンが佳境に差し掛かるほど頼られることとなるだろう。球界一のインテリ監督、ジョー・マドンの存在も心強い。
但し、今年はキャンプも練習試合もまだ経験していないヒデキは、暫くの間レイズ傘下のトリプルA『ダーラム・ブルズ』で世話になる事が既に決定している。このチーム、日本人にはなじみが薄いかもしれないが、米国内では最も有名なマイナーチームの一つと言われている存在なのである。
理由は1988年に公開されたケビン・コスナーの主演映画『BULL DURHAM(邦題:さよならゲーム)』の舞台として取り上げられた事による。同作は同じくケビン・コスナー主演でかの有名な『フィールド・オブ・ドリームズ』の一年前に公開された、マイナーリーガーの希望と哀愁を描いたB級映画だが、本作のヒットにより当時ブルズの名も一躍ネイションワイドのものとなった。
ちなみに劇中で描かれていたブルズはシングルAのマイナーチーム(しかもブレーブス傘下)だったが、映画の影響で人気が出てしまったチームに観客が押し寄せ、シングルAのキャパシティでは足らなくなり、新球場の建設と共に1998年にトリプルAへの昇格を果たしたのだ。ノースカロライナの田舎チームが、他の貧乏マイナーチームにとって垂涎のサクセスストーリーをやってのけたのである。その時にアフィリエイトもブレーブスからレイズ(当時のデビルレイズ)に移行したのだ。
さてこのブルズだがチームの歴史は長く、タバコ会社の野球チームとして1902年に創設されたことが起源となっている。ちなみにヤンキースやレッドソックスが創設されたのが1901年であるからほぼ同等の歴史を持つと言うわけだ。チーム名は『ブル・ダーラム・タバコ社』の社名から、ダーラム・ブルズと呼ばれるようになった。
元々ノースカロライナはタバコの名産地として知られており、今もキャメルやKOOL等のブランドでおなじみの『RJレイノルズタバコ社』も隣町のウィンストン・セーラムに本拠地を置いている。(ブル・ダーラム・タバコ社はその後吸収、合併を繰り返し会社自体は現存しないものの、2003年に当時の工場が復元され今もダーラムの観光名所となっている)。
本拠地のダーラム・アスレチック・パークは、ホームランを打つと煙が出るイナたい仕掛けの牛の形をしたブル・ダーラム・タバコ社の広告が有名だったが(劇中にも登場する)、現在は球場も牛も2代目となっている。(先代は旧球場と共に現役を退き、今は新球場のコンコース内でひっそりと余生を過ごしている)
実は「ブルペン」の言葉の由来は「BULL/PEN=牛の囲い」と解釈するのが普通とされているが、このブル・ダーラム社の牛の形をした広告が投球練習場の後ろにあったから、それにちなんで投球練習場自体が「ブルペン」と呼ばれるようになったという説もいまだ有力なのである。この辺はちょっとした野球ウンチクとして押さえておきたい。
尚、現在2代目の牛が鎮座している同球場のレフト側のフェンスは異様に高く設定されており、本場ボストンのアレをそのまんまパクった「ブルーモンスター」と呼ばれている(呼ばせている)。
話しは変わるが、35歳のおっさんがメジャーデビューを果たす『オールド・ルーキー』という映画もご記憶の方もいるだろう。ロードサイドのスピードレーダーで球速表示されるシーンが印象的な映画だったが、劇中にも主人公のジム・モリスがマイナーからメジャーにコールアップされるシーンがあり、彼が最後に所属していたのもこのダーラム・ブルズである。
またダーラムはアメリカの野球のナショナルチームの本拠地としても機能しているため、日米大学野球選手権なんてのもココの球場で行われる事になっている(隔年で)。斎藤祐樹がダーラム・アスレチック・パークのマウンドに登板した記憶がある人は相当の野球オタクに違いない。
まあ、そんなどうでもいい事を考えながらヒデキの活躍と、一日も早いメジャー昇格を願おうではないか。
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