2012年11月26日月曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク 『ランク圏外/中地区編』

圏外/USセルラー・フィールド
 - ホーム :シカゴ・ホワイトソックス
 - オープン:1991年
 - デザイン:HOK Sport(現Populous)
 - 収容人数:40,615人




今では偉そうにアレコレ語っている自分だが、初めてメジャーリーグに触れたのはたった8年前のココだった。濃い緑の天然芝の美しさと、その夏らしい薫りに酔いしれ、結果的にあの時の感動が僕の人生の一部を変えてしまったと言っても過言ではない。

球場自体はオリオール・パークの1年前に開場した、HOKの「プロトタイプ的作品」だが、まだネオクラシックの風情は感じられない。ただし、先代のコミスキー・パークから「風車式爆音スコアボード」が踏襲されるなど、「やりたかったこと」は大いに感じられる。

個人的に好きなのはレフト外野コンコースにあるシャワー。ただシャワーの蛇口から水が出るだけなのだが、夏場にファンが水浴びするためにと、旧オーナーのビル・ベックにより考案されたもので、これも旧コミスキー・パークより移設されてきている(球界の風雲児ことベックの功績についてはいつか語りたい)。

今回のランキングからは泣く泣く外したが、永遠に我が青春のボールパークであることは間違いない。




圏外/プログレッシブ・フィールド
 - ホーム :クリーブランド・インディアンス
 - オープン:1994年
 - デザイン:HOK Sport(現Populous)
 - 収容人数:43,429人




不況や治安悪化から街を立ち直らせるべく、「クリーブランド復興計画」の一環としてダウンタウンの一等地に建てられた模範的な「箱庭的ボールパーク」。かつて鉄鋼業で繁栄したクリーブランドらしく、白い鉄骨がむき出したままのユニークな外観(そういえば造船業で財をなしたスタインブレナーもこの街出身)。

開場翌年の95年から足掛け6シーズンにかけ、455試合連続チケットSOLD OUTの金字塔を樹立した(その後ボストンのフェンウェイパークに塗り替えられた)。コッテコテのネオクラシックスタイルのオリオール・パークで一世を風靡したHOKが、たった2年後に全く毛色の異なるこの作品を世に送り出した事に、多芸というか、引き出しの多さというか、素直に敬服する。

従来は当たり前のようにセンターに鎮座していたスコアボード類を、景観を意識して端っこに寄せる手法や、歯ブラシ型の縦置き照明などは以降の球場デザインに大きな影響を与えた。間違いなくメジャーでも5本の指に入るであろう好球場だけに、ココのランク入りは正直最後の最後まで悩んだ。が、いかんせんダウンタウンの治安と言うか雰囲気が悪過ぎるため(怖すぎるため)断念。いやしかし、球場自体は本当に素晴らしい!!




圏外/コメリカ・パーク
 - ホーム :デトロイト・タイガース
 - オープン:2000年
 - デザイン:HOK Sport(現Populous)
 - 収容人数:40,120人




工業地帯だったデトロイトに倣えと、大阪を地元とする阪神が球団名をパクったのは有名なハナシ。”虎”というと東洋では「黄色」と「黒」のイメージだが、”タイガー”というと西洋では「オレンジ」と「ネイビー」のイメージだそうだ。その昔、タイガースのユニフォームの靴下の色がオレンジとネイビーの縞柄だったから付けられたニックネーム。

球場内にはメリーゴーランドや観覧車があり、ボールパークらしい楽しさを提供してくれるのは有難いが、メリーゴーランドが馬では無く、タイガーなのがポイント。これが結構リアルで怖いので子連れの親御さんは気をつけよう。

ココの球場のフィールドは地下1階レベルに掘られて設計されており、メインコンコースがストリートレベルにあるというユニークな造り。日比谷野外音楽堂と同じような造りと言えば分るだろうか?これはアリゾナのグッドイヤーボールパーク(レッズとインディアンスのスプリングトレーニングサイト)などにも採用されている手法。自動車産業ややブラックミュージックで一時代を築いた「モータウン」として世界的にも有名だが、とにかくこの街も治安悪過ぎ、怖すぎ。




圏外/クアーズ・フィールド
 - ホーム :コロラド・ロッキーズ
 - オープン:1995年
 - デザイン:HOK Sport(現Populous)
 - 収容人数:50,398人




ご存じ「マイル・ハイ・スタジアム」。海抜0メートル地点より9%も打球が飛ぶと言われている、メジャーきっての打者天国。昨今メジャーリーグでも乱発気味のノーヒッターだが、ココでの達成者はいまだに96年の野茂秀雄ただ一人だけ。

球場内の座席の色は基本ダークグリーンで統一されているが、アッパーデック3階席の20列目が丁度海抜1マイル(1600m)に当たるため、そのラインだけ座席がチームカラーのパープルに塗られている。レンガと鉄骨を組み合わせた典型的なHOKの初期型ネオクラシック作品で、開場当時はそれなりに評価されていたようだが、これだけHOK作品が飽和状態となった今では特にヒネリも工夫も無いように見えてしまう不幸。ただ、デンバーのような中級都市に5万人を超える大箱は今となっては珍しく、こんなところに90年代という時代を感じてしまう。




圏外/ミラー・パーク
 - ホーム :ミルウォーキー・ブルワーズ
 - オープン:2001年
 - デザイン:HKS
 - 収容人数:41,900人




春先、秋口のミルウォーキーの過酷な寒さをしのぐ為、開閉式天然芝球場という形式を採用しているが、ココの屋根は扇子を真ん中から割る用に開くメカニズムを採用しており、世界でも稀(というか他に知らない)。建設工事中にはクレーン倒壊事故により2名の作業員が亡くなると言う悲劇にも見舞われたが、予定より1年遅れで開場した。

ブルワーズの選手がホームランを打つと、マスコットのバーニー・ブルワーが滑り台から滑り降りてくるパフォーマンスが有名。というか唯一の彼の仕事と言っていい。かつてミルウォーキーにはドイツ系の移民が大量に流入した為、ビール製造のメッカとなったそうだ。へ~。

あとミルウォーキーと言えばハーレーダビッドソンが有名で、投手交代の際にはスポンサーでもあるハーレーのバイクが球場内を一周するというパフォーマンスが旧スタジアム時代からのお決まり。

2012年11月16日金曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク 『ランク圏外/西地区編』

圏外/オードットコー・コロシアム
 - ホーム :オークランド・アスレチックス
 - オープン:1966年
 - デザイン:Skidmore, Owings and Merrill
 - 収容人数:35,067人




ご存じ”メジャー最低の球場”。元々の名称「オークランド・(アラメダ・カウンティ)コロシアム」から、1998年のネーミングライツ販売以降、「ネットワークアソシエイツ・コロシアム」、「マカフィー・コロシアム」、「オーバーストックドットコム・コロシアム」、「オードットコー・コロシアム」と落ち着かない。

球場周辺のコンビニやガソリンスタンドのキャッシャーは鉄格子で囲われており、この街に来た事さえ後悔させる。あまりの治安の悪さに客が寄りつかないため、近年本拠地のフリーモントへの移転を試みており、「シスコ・フィールド」なる新球場の設計図まで出来てたのに計画はとん挫中。

球団がケチな為か、球場スタッフの数が極端に少なく、大概どの席も座り放題。ただ、敢えて2階席に陣取りカリフォルニアの夕暮れをゆっくり拝むのが自分流。色んな意味で哀愁が漂ってくる。




圏外/ドジャー・スタジアム
 - ホーム :ロサンゼルス・ドジャース
 - オープン:1962年
 - デザイン:Praeger-Kavanaugh-Waterbury
 - 収容人数:56,000人




かつては「全米一美しい球場」と讃えられた時期もあったが、気づけばボストンのフェンウェイ、シカゴのリグリーについでメジャーリーグで3番目に古い現役球場となってしまった。球場改修は度々行われているものの、辛気臭さをぬぐえないまま老いていく印象を受ける。来季よりオーナー陣が一新されることで、今後の方向性に変化が起こる可能性があり、注目したい。

2011年の開幕戦では駐車場でファンが暴行を受け、意識不明の重体となる悲しい事件が起こったが、このような悲劇が二度と起こらないよう警備も徹底して頂きたいところ。名門・人気チームにしてはチームストアがショボい点も残念。最近マイナーチームでももっと充実してまっせ!とゲキを入れたくなる。

初心者にはお薦めしないが、チケットは駐車場をウロついてるダフ屋と交渉すると、意外な出物にあり付ける可能性大。




圏外/レンジャース・ボールパーク・イン・アーリントン
 - ホーム :テキサス・レンジャース
 - オープン:1994年
 - デザイン:David M. Schwarz Architectural Services, Inc.
 - 収容人数:48,194人




ココもネオクラッシック型ボールパークの典型だが、シアトルのセーフコ同様HOK作品では無い。近年には珍しくなった大箱球場で、何もかもがデカいテキサスならでは!と言いたいところだが、意外に場内は圧迫感がある。

外野スタンドはレフト、ライトそれぞれ2-3階席まであり、センター後方には球団事務所や貸しオフィスが入居しているビルがそびえたっている。どうせ周りに何にもないんだから、個人的にはもっと開放感のあるデザインが良かったのだが。

あと、何故か場内売店のアルコール販売のレギュレーションが異常に厳しく、在米IDを所持していないと(日本国籍パスポートは通用しない)この歳でビールの販売を断られるケースが多々ある。そういう時はスタンドを練り歩いてる売り子の兄ちゃんにチップを多めに渡して融通してもらおう。

来季はネーミングライツを売って球場名が変わってるかも。




圏外/チェース・フィールド
 - ホーム :アリゾナ・ダイアモンドバックス
 - オープン:1998年
 - デザイン:Ellerbe Becket
 - 収容人数:48,633人





世界初の開閉式天然芝球場。通常であれば悪天候や寒さからプレイヤーやファンを守るため球場には屋根が設置されるが、ココは真逆。修羅の如く照りつけるアリゾナの太陽から身を守るため、晴天時にクローズされるケースがほとんど。

右中間にはマイナー球場のアイディアをそっくりパクったプール&ジャグジーが設置されており、美女が水着でWOW~というケースもしばしば。シャイな日本人には敬遠されかねない商品だが、未だにソールドアウトを続けている人気企画である。

ただしアリゾナに行く機会があれば、個人的にはココよりもフェニックス近郊のユニークなボールパーク達をチェックしてもらいたい。スコッツデール、キャメルバック、ピオリア、サプライズ、グッドイヤーなど、スプリングトレーニングサイトとしても有名な施設が半径数十キロ以内にゴロゴロ転がっているので、車を借りてボールパークお遍路の旅に出かけられてはいかがだろうか。あなた好みのマイナー球場が見つかるハズよ。




圏外/ミニッツメイド・パーク
 - ホーム :ヒューストン・アストロズ
 - オープン:2000年
 - デザイン:HOK Sport(現Populous)
 - 収容人数:40,981人




”世界初のドーム球場”として人類に多大なるインパクトを与えた先代のアストロ・ドームと比べると、どうしてもかなり影が薄い印象。ココも開閉式の屋根を採用しているが、ほぼ同級生のセーフコと比べると、ハコ庭的圧迫感は否めない。

センター後方のフィールド内に「タルズ・ヒル」と呼ばれる丘があり、かつてシンシナティの本拠地であったクロスリー・フィールドの形状を模したらしい。またかつてのヤンキー・スタジアムやタイガー・スタジアムを模して、フラッグポールが何とフィールド内に立てられている。嗜好を凝らすのは結構だが、当然プレーの邪魔になることは請け合いで、選手からのクレームにより、来季から撤去されることになっている。

また球団自体もオーナーの交代を経て、来季からはリーグを変えア・リーグ西地区に移転し、マリナーズとビリ争いを繰り広げる予定。




圏外/ペトコ・パーク
 - ホーム :サンディエゴ・パドレス
 - オープン:2004年
 - デザイン:HOK Sport(現Populous)
 - 収容人数:42,445人





ペトコと言えば、第1回WBC準決勝で韓国のキム・ビョンヒョンから、代打・福留が右中間に放った特大ホームランが印象的。ただ通常はメジャー30球場中でも屈指の”打者墓場”として有名。

ココも例によってHOKの中期作品で、ネオクラシックの流れを大いに汲んでいるものの、白い鉄骨やネイビーの座席を採用し、サンディエゴらしいマリンテイストを意識した雰囲気。レフトにはウェスタン・メタル・サプライ社の築100年にもなるビルディングをそのまま利用し、さながらオリオール・パークの二番煎じ的な要素も見受けられる。外野にはメジャーでは珍しい芝生席と、ビーチをイメージした砂場が広がっており、カリフォルニアの解放感をまんま表現した好球場。

そう、確かに良い球場なのだが個人的な思い入れも特に無く、今回惜しくもランク外とさせて頂いた。サンディエゴ・シーワールドでシャチには挨拶しておこう。

2012年11月13日火曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第6位』

第6位/セーフコ・フィールド
 - ホーム :シアトル・マリナーズ
 - オープン:1999年
 - デザイン:NBBJ
 - 収容人数:47,860人







時は1995年、マリナーズの選手たちはロッカールームでマイアミの住宅情報誌に夢中になっていた。チームの人気低迷に輪をかけて、本拠地キングドームの老朽化が進み、シアトルの街に新球場が建設される見込みが無ければ、球団のフロリダ移転がいよいよ現実味を帯びていたからだ。


しかしながら、新球場の建設費の一部は市民への増税により賄われなければならず、世論を味方に付ける為にも、チームの奮起がこの時ほど望まれていた事は無かった。


このシーズンのマリナーズは一時首位エンゼルスから13ゲーム離されていたものの、シーズン終盤に奇跡の大逆転劇を演じ、球団史上初の地区優勝・プレーオフ進出を果たしたのだ。


特にディビジョンシリーズでヤンキース相手に2勝2敗で並んだ最終第5戦、延長11回裏にエドガー・マルティネスがレフト線に放ったタイムリーツーベースヒットは、「The Double」と呼ばれており、サヨナラのホームに滑り込んだまま、チームメイトに揉みくちゃにされた若き日のケン・グリフィー・ジュニアの弾ける笑顔と共に、今でもシアトルのベースボールファンの胸に強烈に焼き付いている。


結果的にこの年、マリナーズはリーグチャンピオンシップシリーズで敗退したものの、この活躍がきっかけとなり新球場建設へ大きなウネりとなっていった。球団社長のアームストロングの言葉を借りれば、ベーブルースがヤンキー・スタジアムを建てたのなら、セーフコ・フィールドを建てたのはケン・グリフィー・ジュニアなのである。


こうして世紀の爆破解体ショーによって消滅した先代のキングドームの南側に、新球場セーフコ・フィールドは世界2番目の「開閉式天然芝球場」として誕生した。


世界中にいくつか存在する他の開閉式球場は、「ドーム(天井)が開く」という感覚だが、ココの場合は「屋外球場に屋根が被さる」といった表現の方が的確である。屋根は晴天時には球場後方の「BNSF鉄道」のレールの上に被せられており、悪天候時にのみ屋根がスライドしてフィールド上に被さる仕組みになっている。


試合中継中にバオ~ンという汽笛が鳴り響くのがお馴染みだが、あれはこの線路を行き来する貨物列車の合図なのである。


ココも例によってレンガと鉄骨を組み合わせたエクステリアや、敢えて手動式のスコアボードを採用するなど、当時の流行『ネオクラシック・スタイル』を地で行くコンセプトとなっているが、意外にもHOKの作品では無い。


スタンドは1階、2階、スイートレベル、3階とシアトルのマーケット規模感から言ったら少々大き目に感じるが、開場当時は年間350万人以上集客するメジャー屈指の人気球場だった。が、近年はチームの低迷と共に観客動員も200万人そこそこと低迷を強いられている。


スイートレベルのど真ん中に鎮座する”オーナーズスイート”の壁には山内溥オーナーの肖像写真が飾られているが、ご本人は一度も球場に足を運んだことは無いそうだ。


さて、シアトルといえばコーヒーが有名だが、実はマイクロブリュワリーの宝庫でもある。球場内でも『Mack & Jack』、『Red Hook』、『Fat Tire』といった地元産ビールをドラフトで楽しめるカウンターがあるので、ここはありふれたバドやクアーズではなく、レアなブランドを手に観戦されたい。


ツマミにはコンコース内売店『Grounders』の "World Famous" Garlic Friesが最適である。ガーリックと油でギトギトまみれたフレンチフライがついついビールを進めてしまうので要注意。また、ダウンタウンにあるクラムチャウダーの老舗『Ivar's』も球場内に出店しており、春先、秋口の肌寒い日には特にお薦め。


個人的には目をつぶっても歩けるくらい通い詰めた球場だけあって、正直6位と言うポジションに友情票は否めないが、シアトルの街や人々同様に非常にフレンドリーで居心地の良い空間であることは間違いない。


3塁側2階席後方にはテラスでくつろげるオープンスペースが広がっているが、そこから望むシアトルダウンタウンのスカイライン越しに沈む夕日の美しさは特筆。エリオット湾から微かに薫ってくる潮風も手伝って実にさわやかな気持ちになれるのだ。


ご存じの通りチームは10年以上の間低迷期に入っているが、願わくば開場当時の大熱狂をいつかまたココで経験してみたいものである。その時には多少のベテランファンとなった自分が感慨にふけることが出来るのではと、淡い夢があるのである。

2012年10月23日火曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第7位』

第7位/ナショナルズ・パーク
 - ホーム :ワシントン・ナショナルズ
 - オープン:2008年
 - デザイン:HOK Sport (現Populous)
 - 収容人数:41,487人





そもそも球場の話しをする前に、涙なしには語れないワシントンDC(以下DC)の野球史について振り返ってみよう...


南北戦争以前の1850年代には既にホワイトハウスの職員連中が中心となって『ナショナル・ベースボール・クラブ』(現在のチーム名の由来となっている)なる団体が存在していたようだが、1891年にはプロリーグの発足を契機に『ワシントン・セネタース』というプロ球団が発足する。が、下記以降の負の歴史である。


●初代セネタース  →1891年発足、不人気の為1900年解散。
●2代目セネタース→1901年再発足、不人気の為1960年ミネソタに移転(今のツインズね)。
●3代目セネタース→1961年再々発足、不人気の為1972年テキサスに移転(今のレンジャースね)。


こうして3度も嫁はんに逃げられたDCは「野球人気が定着しない街」というレッテルを張られてしまう。米国では”ナショナルパスタイム”としての地位を確立してきたベースボールだが、その国の首都にメジャー球団が存在しない状況がこの後33年間も続いていく。


転機となったのは2004年オフ、モントリオール・エキスポズが人気低迷の為、球団をMLBに売却し、2005年シーズンよりDCへの移転が決定、新生『ワシントン・ナショナルズ』が誕生した。こういった経緯の中で、2008年に満を持して完成した新球場がこの『ナショナルズ・パーク』である。しかし、チームの不甲斐ない成績に客足は遠のき、新球場ブームは数ヶ月と持たなかった。


かくしてナショナルズは”球界のお荷物”と揶揄される事もあったが、この頃から着々とウェーバー制ドラフトの恩恵を受け、ストラスバーグやハーパーと言った有望株を次々と獲得していった。そして今シーズンのチームのブレイクは御承知の通り、移転以来初の地区優勝を決め、実に首都DCでは79年ぶりのポストシーズンゲームが開催されたのだ(悪夢のような最後だったけど)。


さて球場の話しに戻ろう。ココも例によってHOKの作品だが、球界に与えたインパクトは「エコ」と「脱・ネオクラシック」という2つのコンセプトにチャレンジした点にある。


球場の建築資材には5500トンもの産業廃棄物を再利用し、その他は輸送コストを抑えるため極力地元産の建材を使用。太陽光蓄電により照明に使用するエネルギーを20%削減、照明自体も省電力のものを採用した。フィールドの下には雨水の貯水技術を完備し、水の使用も年間30%削減させた。また、メトロやバスといった公共交通の利用を推奨し、自転車の駐輪場が充実している点もいかにも欧米らしい。


結果的に北米のプロリーグが使用するスタジアムとしては初めて、環境に配慮した建物に与えられる認証システムLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)を所得した施設となり、以降の大型スタジアム建設に大きな影響を与えた。


今まで米国の球場設計のコンセプト(立地選定やデザイン)は日本の20年先を行ってるなーと思ってたけど、ココの取り組みを見て30年以上の差が出来たなと痛感したわ。


球場デザインは白、グレー、ベージュを基調にまとめられ、非常にシンプルなイデタチ。まるで「オフィスビルのようで殺風景」という悪口を良く聞くが、個人的には乱発気味だった”ネオクラシック・スタイル”には正直飽き飽きしていたとこだし、ココのシックで大人な雰囲気の佇まいは逆に新鮮に感じた。座席はネイビーで統一され、チームカラーとのマッチングにも納得感がある。(しかし敢えて苦言を呈するなら、なぜフェンスもネイビーで統一しなかったのだろう。)


スコアボード類のレイアウトもさすがに熟練の感があり、昨今セイバーメトリクスの浸透から、データ・指標が大幅に増えた選手のスタッツや、アウトオブタウン関連の情報などがスッキリまとめられ、観客にとっては見やすくて優しい。


お薦めは右中間のスコアボード後方の「スコアボードウォーク」という巨大なスタンディングバー・スペース。試合前から生バンドのライブが入って、多くの若者で賑わっている。この辺りにNYのハンバーガーの有名店『SHAKE SHACK』(Citi Fieldに続いて2店舗目)が長蛇の列を独占しているので、冷やかしがてら食してみては。


1塁側のアッパーデッキからは連邦議会議事堂やワシントン記念塔が良く見え、プレーボール前のNational Anthemが、いつもよりちょっと特別な音色に聞こえるのは気のせいではないだろう。


合衆国の威厳と、未来への提案がギッシリ詰まった好球場なだけに、もう嫁はんには逃げられないようにと願うばかりである。

2012年10月14日日曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第8位』

第8位/エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム
 - ホーム :ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム
 - オープン:1966年
 - デザイン:Noble W. Herzberg and Associates
 - 収容人数:45,957人





意外にもメジャー30球場の中で4番目に古い現役球場である(ア・リーグではボストンのフェンウェイ・パークに次いで2番目に古い)。


元々ドジャースタジアムで居候の身だったエンゼルスの為に、66年に専用球場として建設されたが、80年代にはNFLのラムズが流入してきてフットボール兼用スタジアムへ改築される不幸に見舞われた。


しかし97年にチームのオーナーシップがウォルト・ディズニー社に譲渡されるや状況が一変する。


エンターテインメント界の雄・ディズニーによる演出と、ボールパーク界の魔術師ことHOK社のノウハウが融合した大型リノベーションが実現し、辛気臭かった老いぼれスタジアムは、見事子供から大人まで楽しめるボールパークに生まれ変わった。


アメフト用に増築された左中間のスタンドは根こそぎ取り除かれ、代わりにビックサンダーマウンテンを連想させるような岩山を設置、普段は小川が流れ、エンゼルスのHR時には花火と噴水がブチ上がるシカケ。この岩山、表から見ると分かりにくいが、外野コンコースから背後に周るとアルファベットの「A」を型取られている事がしっかりと確認できる。


同じく左中間(現在の照明がある位置)に鎮座していた「ビックAサイン」が代わりに球場横のハイウェイ沿いに移転され、今もアナハイムのランドマークとして余生を送っている。


個人的には夏場の試合終了後に行われる花火大会がお薦め。球場の照明を全て落とし、左中間の岩山後方に上げる花火は他球場のソレとは比較にならないスケール感で圧倒される。さすがディズニー仕込みの演出と唸らずにはいられない。チームのホームページで試合スケジュールをチェックする際は「Fire Works」の注意書きを見落とさず、是非狙って観戦計画を立てて頂きたい。あ、あとココは三塁側がホームだから、座席に拘る人は気を付けて。


ディズニーは既にチームのオーナーシップからは退いてるものの、現オーナー、アルトゥーノ・モレノ氏(MLB史上ヒスパニック系初の球団オーナー)による地道なマーケティング活動が実り、見事2009年にはESPNによる「北米4大スポーツ全122チームの中でのベストフランチャイズ」の栄誉にも選ばれた。


「ボールパークとはどうあるべきか?」この辺の方向性の打ち出し方が非常に分かりやすくて、ほぼ同年代で年々老いていく雰囲気のドジャースタジアムよりも個人的には好き。


近隣にはディズニーランドはもちろん、ちょっと車を飛ばせばユニバーサルスタジオ、ナッツベリーファーム等のテーマパークには事欠かず、ニューポートビーチやハンティントンビーチ、大型ショッピングモールやアウトレットで買い物天国でもある。こんな”ザ・アメリカ”を満喫したい人にとって、ベストなロケーションと言えるだろう。


球場自体の完成度やクオリティーは昨今の新球場たちには到底かなわないかも知れないが、基本的な”ボールパーク”に必要とされるものは揃っている。


何よりLA特有のカラッとした空気、のどかな夕暮れの風景、熱狂的だが決して下品では無いファンが作りだす雰囲気が見事に融合し、球場全体をウェッサ~イな空気が包みこむ。何とも居心地のいい球場である。


まあ、ココがオレンジカウンティじゃなければランクインはしてないけどね!