さて、ストラスバーグの話題で終わりかけたメジャーのドラフトについて、もう少しだけハナシをしていこう。
現状、メジャーリーグのドラフト対象となるのは、アメリカ、カナダ、プエルトリコの大学生、高校生、独立リーグでプレーしているアマチュアプレーヤーが対象となる。
従い、現在メジャーリーガーの一大勢力となっているドミニカや、ヴェネズエラ出身の選手は”正規の”ドラフトからは対象外となっている。
各チームとも独自に作ったアカデミーや(広島東洋カープもしかり)、独自のスカウティングのネットワークを中南米に張り巡らせ、将来有望な若者と都度個別の契約を獲っていくわけである。
ドミニカにはチームの公認・非公認含め、およそ6,000もの私設ベースボールアカデミーがあると言われており、ひとたびメジャーのスカウトの目に止まれば、有能な若者と代理人は一攫千金のチャンスとなるわけである。
しかしながら、国民の平均年収が日本円にしておよそ25万円程度と言われているドミニカでは、チームからの契約金(およびその仲介手数料)目当てに暗躍する人々を巡るトラブルが近年大きな問題となっている。
一方で、チームのスカウトも契約金の一部をポケットに入れてしまったり、逆に契約した選手からキックバックを要求したりという、悪質な横領事件が立て続けにあった。
「契約してやるから関係者みんなで潤おうぜ」
みたいなテンションだろう。
あまり日本では報じられていないが、昨年同様の事件がヤンキース、レッドソックス等名門チーム含み、関係者の一斉摘発&処分があった。
聞いた中では、例えばスカウト部長が子分のスカウトに、選手のスカウティングレポートを過大に評価するよう命令し、チームから選手に支払われる契約金の、水増しされた部分をフトコロに入れてしまう。
なんて手口もあったらしい。
一方選手も必死で、いかに速い球、遠くに飛ばす力をスカウトに認めてもらえるかが勝負なワケで、ドミニカの国内リーグや、アカデミーではステロイドの使用が日常化しているとの話も聞く。
メジャーリーグで、2005年以降行われた薬物検査に違反した選手のうち、およそ60%がドミニカ出身者というデータもある。
最近世間を賑わせている、マニー・ラミレス、A-Rod、オルティスなんかを見てると、若い頃に手にした薬物を止められずに、年々増す契約金や年棒のプレッシャーに耐えられず、、、という図式が当てはまってしまう。(事実かどうかは別問題だが、本人の口からもそういう類のコメントは過去にあった。)
また、年齢のサバ読みも横行しており、ソリアーノ、テハダ、ゲレーロと言ったスーパースター達も年齢詐称を気付かれずに、何年もメジャーリーグでプレーしていた事実が最近発覚したことは、皆さんも記憶に新しいだろう。
同じ才能の選手が2人いれば若い方を獲ることは当たり前なわけで、戸籍制度がイマイチあいまいな中南米では戸籍の売買や、年齢詐称もさほど難しくないと聞く。
デビュー以来”クリーン”なイメージで打ちまくっているプホールズも、近年は年齢詐称やステロイドの使用が疑われているという由々しき事態にまで発展している。
僕はプホールズはそのようなこととは無縁であると心から願っているし、彼の才能に嫉妬している外野のたわごとだと聞き流しているが。。。
もちろん、ドミニカ出身の選手が全て薬物に手を出し、年齢を詐称し、仲介する代理人も全て悪質だということではない。アメリカでの成功を夢見て、必死に白球を追いかけている少年や若者が大多数だと思う。
ただ、やれ「薬物は違反だ」とか、「年齢はゴマかしちゃいかん」、と道徳を説いたところで、問題の根本が”貧困”にある限り、養うべき家族や親族からの期待と重圧に負けてしまい、ひとたび契約金を手にするために手段を選ばない若者も後を絶たないという事実がある。
前に黒人メジャーリーガーの減少について話したことがあるが、現在メジャーで圧倒的な存在感を見せるドミニカ勢と、その金の卵たちが抱える問題についても、みなさんに理解を深めて頂きたい。
次回以降はお坂東さんと、モーガン・フリーマンさんが渡米される前に、エンジェルスとアナハイムについてハナシを進めて行きたいと思う。
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