2010年2月3日水曜日

野球進化論 (その5)

で、いよいよ名著(と絶賛された)『マネーボール』の登場である。











『マネーボール』に関しては既に皆さんご承知の通り、かなり端的にいうと、貧乏・弱小球団のオークランド・アスレチックス(以下A’s)が、新進気鋭の敏腕GMビリー・ビーンのもと、チーム再建に着手、限られた資金で選手を獲得し、強豪チームに立ち向かい、勝利を重ねていくというサクセスストーリーである。






もっと具体的に言うと、それまで球界関係者から「単なる野球オタクの戯言」と敬遠され続けてきたセイバーメトリクスを、初めて球団運営に実践したビリー・ビーンとA’sの快進撃を痛快に描いている作品である。一部野球ヲタの間でしか盛り上がっていなかったセイバーメトリクスが、ようやく市民権を得たのも『マネーボール』の功績によるものが大きいだろう。






ビリーは百数十年の間、何の疑問も持たずに野球界で支持されてきた旧来の指標、、、特に打率や打点の代わりに、出塁率や長打率という指標に着目し、先述したOPSやWHIPといったような新たな指標で選手を評価、獲得していった。






























一般的に打率.350で出塁率.400の選手と、打率.250で出塁率.400の選手では、一般的には前者の方が高給取りだったわけで、後者のような(例えばジミに四球を選び続けて出塁率/長打率が高い選手など)あまり注目されにくい”隠れた逸材”を掘り出し、それらの選手を安価で獲得し、彼らが活躍を続けていったことが、限られた予算で、A’sが勝利を重ねていくことができた要因だったと信じられている。































投手にしてみれば、これも一般的に高給取りの、勝利数をたくさん稼ぐ先発投手や、ハデな脱三振王などのスター選手にはあまり目を付けず、地味ながら被OPSが低く、WHIPの数値が優秀な投手に目を付け、そういった選手も安価で獲得していった。






また、作戦上、バントや盗塁を行わず、”指揮官の采配の妙”というファクターを一切排除したことも、セイバーメトリクス=マネーボールの大きな特徴として挙げられる。






これは同時に、”現場”ではなく、”フロント”がチームをコントロールするという、これまでとは違った球団運営の形態をも生み出した。






誤解されている方も多いかと思うが、セイバーメトリクス、ないしはマネーボールは、バントしない、走らない、エンドランもない、究極の「動かない野球」→「ビック(ベース)ボール」である。かなりザックリ言えば、粘って四球を選んで走者を溜め、長打で返す。というような感じ。






ちょうど『マネーボール』が発売された2003年当時、A’sは4年連続プレーオフ進出を果たし、アメリカンリーグ西地区の強豪として確かに君臨していた。






(ただ、あの当時は、バリー・ジト、マーク・マルダー、ティム・ハドソンという奇跡3本柱が偶然、同時期・同チームに揃っていた。ただそれだけのハナシ。という見方もあるが。。。)



































あれから6年がたった今、A’sは、06年を除く5シーズンでプレーオフ進出を逃し、特にここ3年は連続負け越し、昨年に至っては地区最下位に甘んじ、再び低迷期を迎えている。






一方で、WBCで連覇した日本代表や、05年にワールドチャンピオンに輝いたホワイトソックス、ココ数年快進撃を続けているエンゼルスのように、今、野球のトレンドは「機動力野球」→「スモール(ベース)ボール」に再び回帰し始めているのではないか、という意見も昨今は多い。


























一時はセイバーメトリクスが提唱する「ビックボール」が球界のトレンドとされていたが、今となってはセイバーメトリクス(ないしはマネーボール)の弊害を唱える論者も増えてきている。






「ビックボール」か、「スモールボール」か?の論争は、特に米国では宗教戦争に例えられるように、今日も各地でし烈な論争が繰り広げられているのだ。






だんだんハナシが逸れてきたが、そのうち戻るので、このまま続く。

2 件のコメント:

  1. いいよいいよ。こういうの好きだよ。

    毎試合9人ピッチャー使って、全員1回だけ投げる。9人のピッチャーは右左のオーバー、サイド、アンダーをごちゃまぜ。

    ってどうかな。野球はそんなに甘くないか

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  2. 大昔は一人の投手が完投するのが当たり前だった時代。


    いつかそういう日が来る可能性があることは否定できませんね。

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