第4位/リグリー・フィールド
- ホーム :シカゴ・カブス
- オープン:1914年
- デザイン:Zachary Taylor Davis
- 収容人数:41,009人
カブスとリグリー・フィールドについてユニークな点は多々あるが、最も感心するのは「球界の常識」にことごとく屈していないという点である。
「野球は太陽の下でやるものだ」というポリシーの元、21世紀に入ってもなお可能な限りデーゲーム開催にこだわり、球場内のスコア表示の類も極めてアナログ且つ最小限に留められているので、試合から少しでも目を離すとアウトカウントすら分からない状態に陥ってしまう。その為か、観客がラジオを聴きながら観戦している確率は全米でもココが最も多いんじゃないだろうか。
場内の座席は現代人の規格にはピッチが狭く、しかも1階席の半分から後ろはアッパーデッキが被って打球(特にフライ)を追えないし、屋根を支える柱があらゆる方向の視界を遮り、球場全体が一見とても不便で理にかなっていない構造となっている。
それでも昼間から多くの観客がスタンドを埋め尽くし、容赦なく敵を野次り、愛するカビー(Cabbie)を応援し、そしてうなだれるという作業をかれこれ100年近く続けている。特に90年代以降のカブス人気は凄まじく、観客動員率は毎試合ほぼ95%の水準で推移しており、チケット入手は困難を極める。
そもそも勝たないとお客さんが球場に来てくれないとか、ナイターじゃないと放映権が高く売れないとか、球場には娯楽施設を用意しなければいけないとか、マスコットが観客を煽らなければ盛り上がらないとか、いわゆる”今日のボールパーク”でまかり通っている常識がココには全く通用していない。球場が雰囲気を作るのではなく、観客が雰囲気を作っていくという究極の空間なのである。
いや、実際には来場した観客だけでは無い。「Wrigleyville(リグリービル)」と呼ばれている球場周辺地域には多くのスポーツバー、非公認のチームストア―やチケットブローカーのショップが軒を連ね、球場後方に隣接した一般民間住宅の屋上から観戦できる「Wrigley Rooftops」なる企画もチケット入手困難な程人気を博している(当初はモグリの企画だったが、現在は入場料収入の17%を球団に支払うことでオフィシャルエンドーサーとして認められている)。
街全体が球場の為に存在しているのか?球場が街の為に存在しているのか?恐らく両方なんだろうな。もはや野球の試合を行うハコという存在を超越し、地域住民の生活の中心であり、活力であり、生きがいなのだろうと思う。この年季の入った濃密な関係性はさすがのHOKでも再現できない世界感である。
本球場を設計したデービスさんは鉄骨球場の創生期に活躍したボールパーク設計の第一人者で、ホワイトソックスの元本拠地(1910~1990年)、「旧コミスキー・パーク」も彼の作品。
フェンウェイのイレギュラーな造形とは対照的で、リグリーはシンメトリーで優雅な佇まいが印象的。レンガ造りでセクシーな曲線を描くバックストップや、元オーナーのビル・ベックにより考案された深緑色のツタが絡んだ外野フェンスの美しさに思わずため息がこぼれてしまう。このご時世に場内の景観を優先し、場内の広告看板の類も極力排除されている点も見逃せない。
リグリーと言えばかつてチームアナウンサーのハリー・キャリーが放送席から身を乗り出して観客と合唱したセブンスイニングストレッチが有名だが、彼の死後は毎回ゲストを呼んでその代役を務める事になっている。
余談だが第40代アメリカ大統領のロナルド・レーガン(1911~2004年没)が俳優に転身する前にカブスのラジオアナウンサーを勤めていたことは有名で、後に大統領となってからのユーモアを交えた名演説の数々はこのキャリアで磨かれたものとされている。しかしながら93年という長寿を全うしたレーガンも、カブスがワールドチャンピオンに返り咲く姿を見届ける事は出来なかった。。
最後にカブスがワールドチャンピオンに輝いたのは1908年の事で、ワールドシリーズ出場ですら1945年を最後に遠のいている。ボストンで「バンビーノの呪い」を解いたセオ・エプスタインが昨年カブスの球団社長に抜擢され、いよいよシカゴで「ビリーゴートの呪い」を解くことが出来るか盛んに注目を浴びている。
しかしながら結果がどうであれ、リグリービルとその住民たちは今日も明日も愛すべき負け犬(Lovable Losers)と共にこの場所で生活し、歴史を刻んで行くのである。この100年間変わらずそうしてきたように。
2012年12月11日火曜日
2012年12月2日日曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第5位』
第5位/リッチモンドカウンティバンク・ボールパーク
- ホーム :スタッテンアイランド・ヤンキース(A-SS)
- オープン:2001年
- デザイン:HOK Sport (現Populous)
- 収容人数:7,171人
1990年代の終わり、ルドルフ・ジュリアーニ元NY市長による”ニューヨーク活性化キャンペーン”の一環で、ヤンキース、メッツのマイナーチームをそれぞれNY市内に誘致するということで両チームと合意。当初はマンハッタンに新球場建設の噂もあったようだが、最終的にはメッツの傘下には「ブルックリン・サイクロンズ」がブルックリンのコニー・アイランドに移転され、ヤンキースの傘下には「スタッテンアイランド・ヤンキース(以下SIヤンキース)」がココ、スタッテンアイランドへ移転されてきた。
両チームとも「ニューヨーク・ペンリーグ」という「シングルAショートシーズン」に所属、特にSIヤンキースとサイクロンズとの対戦は本家のサブウェイシリーズに倣って、“フェリーシリーズ”と呼ばれ人気を博している。(マイナー組織を上から言うとトリプルA、ダブルA、シングルAアドヴァンス、シングルA、シングルAショートシーズンなのでメジャーから数えると6軍相当ということになる。)
本家のNYヤンキースが「Bronx Bombers」なら、子分のSIヤンキースは「Baby Bombers」と呼ばれており、チーム創設以来、王建民、ロビンソン・カノー、ブレッド・ガードナー等、後にヤンキースの主力に成長していった選手もココで過ごした時期もある。
移転当初から2年間はニューヨーク大学のグランドに居候していたものの、2001年にこの素晴らしすぎるフランチャイズが完成した。設計はHOKが担当しており、さすがの安定感。球場メインゲートは船のセイルをモチーフにしたような演出で、場内も白とネイビーが基調の爽やかなマリンテイスト。何と言っても全席オーシャンビューでニューヨーク湾を望め、のどかに行き交う貨物船やフェリーの向こうにはマンハッタンの摩天楼を拝める。世界広しといえどもこれだけ贅沢なグレートビューの球場は他に見当たらない。
球場設備もシングルAショートシーズンにしては異例ともいえる贅沢さで、18部屋のプライベートスイートを完備し、ライト外野フェンスには超大型LEDビジョンが埋め込まれている(写真はリノベ前のモノ。)メジャー顔負けと言ったら大げさかも知れないが、トリプルAクラスに十分匹敵する充実度と言っても過言ではない。
チケットは5-10ドルとお手頃なので好みの席をチョイスし、毎イニング登場する観客を飽きさせないイベントの仕込みに感心させられたり、それなりに品揃えが充実しているチームストアではマンハッタンでは手に入らないSIヤンキースオリジナルアイテムをゲットしよう。ロゴが可愛いので、キャップやTシャツは一味違った土産モノとしても最適(但し野球好き限定)。
試合後は子供を対象に、フィールドに降りてベースランニングを経験できるイベントもあり、家族で訪れるもよし、気になるあの子をデートに連れ出すもよし、いずれにしろメジャーとは違った解放感に米国のベースボールカルチャーの奥深さに触れられるハズ。
正直マイナーリーグの球場を対象にするべきか悩んだが(そうでなければこの順位にはクリーブランドのプログレッシブ・フィールドが入っていた)、一人でも多くの方にココの魅力を知って頂きたいと言う思いから今回ランク入りとさせて頂いた。
マンハッタンの最南端バッテリーパーク(地下鉄で言うとSouth Ferry駅)からスタッテンアイランド行きの無料フェリーに乗り、右手に見える自由の女神に敬礼しながら約30分弱程度。フェリー降り場到着後は案内に従いながらボートウォークを伝い5分程度で球場に到着する。
尚、シーズンは6月から9月の間と短いので訪問の際には要注意。ウェブサイトで事前に予定をチェックされたい。http://www.milb.com/index.jsp?sid=t586
NYのもう一つのヤンキース、、、激しくお薦めである。
- ホーム :スタッテンアイランド・ヤンキース(A-SS)
- オープン:2001年
- デザイン:HOK Sport (現Populous)
- 収容人数:7,171人
1990年代の終わり、ルドルフ・ジュリアーニ元NY市長による”ニューヨーク活性化キャンペーン”の一環で、ヤンキース、メッツのマイナーチームをそれぞれNY市内に誘致するということで両チームと合意。当初はマンハッタンに新球場建設の噂もあったようだが、最終的にはメッツの傘下には「ブルックリン・サイクロンズ」がブルックリンのコニー・アイランドに移転され、ヤンキースの傘下には「スタッテンアイランド・ヤンキース(以下SIヤンキース)」がココ、スタッテンアイランドへ移転されてきた。
両チームとも「ニューヨーク・ペンリーグ」という「シングルAショートシーズン」に所属、特にSIヤンキースとサイクロンズとの対戦は本家のサブウェイシリーズに倣って、“フェリーシリーズ”と呼ばれ人気を博している。(マイナー組織を上から言うとトリプルA、ダブルA、シングルAアドヴァンス、シングルA、シングルAショートシーズンなのでメジャーから数えると6軍相当ということになる。)
本家のNYヤンキースが「Bronx Bombers」なら、子分のSIヤンキースは「Baby Bombers」と呼ばれており、チーム創設以来、王建民、ロビンソン・カノー、ブレッド・ガードナー等、後にヤンキースの主力に成長していった選手もココで過ごした時期もある。
移転当初から2年間はニューヨーク大学のグランドに居候していたものの、2001年にこの素晴らしすぎるフランチャイズが完成した。設計はHOKが担当しており、さすがの安定感。球場メインゲートは船のセイルをモチーフにしたような演出で、場内も白とネイビーが基調の爽やかなマリンテイスト。何と言っても全席オーシャンビューでニューヨーク湾を望め、のどかに行き交う貨物船やフェリーの向こうにはマンハッタンの摩天楼を拝める。世界広しといえどもこれだけ贅沢なグレートビューの球場は他に見当たらない。
球場設備もシングルAショートシーズンにしては異例ともいえる贅沢さで、18部屋のプライベートスイートを完備し、ライト外野フェンスには超大型LEDビジョンが埋め込まれている(写真はリノベ前のモノ。)メジャー顔負けと言ったら大げさかも知れないが、トリプルAクラスに十分匹敵する充実度と言っても過言ではない。
チケットは5-10ドルとお手頃なので好みの席をチョイスし、毎イニング登場する観客を飽きさせないイベントの仕込みに感心させられたり、それなりに品揃えが充実しているチームストアではマンハッタンでは手に入らないSIヤンキースオリジナルアイテムをゲットしよう。ロゴが可愛いので、キャップやTシャツは一味違った土産モノとしても最適(但し野球好き限定)。
試合後は子供を対象に、フィールドに降りてベースランニングを経験できるイベントもあり、家族で訪れるもよし、気になるあの子をデートに連れ出すもよし、いずれにしろメジャーとは違った解放感に米国のベースボールカルチャーの奥深さに触れられるハズ。
正直マイナーリーグの球場を対象にするべきか悩んだが(そうでなければこの順位にはクリーブランドのプログレッシブ・フィールドが入っていた)、一人でも多くの方にココの魅力を知って頂きたいと言う思いから今回ランク入りとさせて頂いた。
マンハッタンの最南端バッテリーパーク(地下鉄で言うとSouth Ferry駅)からスタッテンアイランド行きの無料フェリーに乗り、右手に見える自由の女神に敬礼しながら約30分弱程度。フェリー降り場到着後は案内に従いながらボートウォークを伝い5分程度で球場に到着する。
尚、シーズンは6月から9月の間と短いので訪問の際には要注意。ウェブサイトで事前に予定をチェックされたい。http://www.milb.com/index.jsp?sid=t586
NYのもう一つのヤンキース、、、激しくお薦めである。
2012年11月28日水曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク 『ランク圏外/東地区編』
圏外/シティ・フィールド
- ホーム :ニューヨーク・メッツ
- オープン:2009年
- デザイン:Populous (旧HOK Sport)
- 収容人数:41,922人
そもそも金融バブルの真っただ中に新球場プロジェクトをぶち上げ、羽振りよくシティバンクがネーミングライツを取得したまでは良かったが、開場半年前に起きたリーマンショックがそもそもケチのつき始め。シティに多額の公的資金が注入されると、「納税者フィールドにしろよ!」という辛辣な世論が飛び交い、挙句の果てにはオーナーが巨額詐欺事件に巻き込まれるというトラブル。大枚をはたいて獲得した大物も次々と不良債権化していき、かくして新球場バブルもあっけなく崩壊した。
エクステリアはかつてブルックリンに存在した、「エベッツ・フィールド」を現代の世に甦らせた秀作で、コレに関しては正直拍手を送らざるを得ない。ただし場内の演出は過度にブルックリン・ドジャースへのトリビュートが意識されているけど、エベッツしかり、ジャッキー・ロビンソンしかり、そもそもあなたの球団じゃないでしょ?と突っ込みたくなる(ドジャースとジャイアンツの西海岸移転がメッツ球団誕生のきっかけとなったのは間違いないのだが)。
フィールドやフェンス形状も必要以上に奇をてらったデザインが施されており、はっきり言ってクドい。先代のシェイ・スタジアムの方が長閑でメッツらしかったと言ったら可哀そうだろうか。場内で最も賑わっているのはセンター後方にあるNYハンバーガーの人気店「SHACK SHACK」という皮肉。近隣のラ・ガーディアを発着する飛行機は相変わらずノイジーで、コレはシェイ時代と変わらない。
圏外/シチズンズバンク・パーク
- ホーム :フィラデルフィア・フィリーズ
- オープン:2004年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:43,651人
古都フィラデルフィアの風情をそのまま生かしたネオクラシック調デザイン、美しい天然芝、カクテル光線、マスコットのフィリー・ファナティックが、全米一ブーイングが執拗と言われているフィリーズファンを盛り上げ、コンコースからは地元名物「フィリー・チーズステーキ」の香ばしい匂いが充満する。
完全に期待通りの空間なハズなのになぜだろう。。。球界関係者の間でも屈指の好球場と専ら評判だが、個人的には期待が大きすぎたのか、氾濫するHOK作品に飽きてしまったのか、驚くほど良いと感じられなかった球場。コンコースが異様にチープに感じてしまったんだな。ユニークな点と言えば、試合中にダイヤモンドクラブのレストラン内からダグアウト裏のバッティングゲージが覗けるシカケになっており、試合そっちのけでトーミの打撃練習にくぎ付けになっていたわ。
お目当てのチーズステーキも、球場の売店で作り置かれているものはパンが固いので性に合わず、ダウンタウンに帰る途中の2大有名店、「PAT'S」か「GENO's」でテイクアウトした方がおいしいで。ちなみに24時間営業なんで試合後でもご安心を。
圏外/ロジャース・センター
- ホーム :トロント・ブルージェイズ
- オープン:1989年
- デザイン:Robbie Young + Wright
- 収容人数:49,260人
世界初の開閉式球場として、球界は元より建築業界をも震撼させた(らしい)ユニーク物件。開場当時は1992-93年の2年連続ワールドチャンピオンなど、ブルージェイズの好成績と共に観客動員も絶好調だった。以降、開閉式ドームのノウハウは福岡ドーム等に脈々と受け継がれていく。ただし建造物として一見の価値はあるものの、空前のネオクラッシックブーム前夜に建てられた為、当時最新鋭のデザインも20数年経った今にはちと古く感じられてしまう所はやむを得ない。そういえば松井秀喜がメジャーデビューを飾ったのもこの球場。
元々は「スカイ・ドーム」という愛称で親しまれていたが、2004年に通信大手のロジャース社に球場が買収されるとともに、名称も「ロジャース・センター」に改名。センターの綴りが”Center”ではなく、敢えて”Centre”と言うところがカナダらしくブリティッシュ流。球場にはホテルが併設されており、現役時代にロベルト・アロマーが住んでいた事で有名。試合中、窓際で淫らな行為をすると即退場になるので要注意。近年天然芝に貼り替えられるという噂があるが、真相はいかに!?
圏外/トロピカーナ・フィールド
- ホーム :タンパベイ・レイズ
- オープン:1990年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:42,735人
ココも密かなるHOK作品だが(ブレイク前の)、元々は野球専用球場として建てられたわけではなく、当初はアリーナフットボールや、アイスホッケー場として利用されていた。恐らくメジャーリーグで最後となるであろう人工芝&密封式ドーム球場である。90年代初頭からマリナーズ、ホワイトソックス、ジャイアンツの球団誘致にことごとく失敗し、98年のエクスパンションでようやくデビルレイズ(現レイズ)のフランチャイズとして落ち着いたのは、開場から8年後のこと。
プレーオフでも空席が目立つのは一概に球場のせいだけとは言えないが、ココを脱出することによって何かが変わることは間違いなさそうだ。数年前にはセントピーターズバーグのマリーナ沿いに新球場の建設予定と設計図まで出来あがってたのに、いつのまにかプロジェクトはとん挫。
唯一この球場で面白いのは、内野の人工芝以外の部分にはきちんと本物の土を入れている点。人工芝球場のせめてものエクスキューズを大いに感じる。ナゴヤドームや横浜スタジアムのようなオレンジ色の人工芝を内野に敷いた「ボールパーク風」の安っぽい演出よりはまだマシか。
- ホーム :ニューヨーク・メッツ
- オープン:2009年
- デザイン:Populous (旧HOK Sport)
- 収容人数:41,922人
そもそも金融バブルの真っただ中に新球場プロジェクトをぶち上げ、羽振りよくシティバンクがネーミングライツを取得したまでは良かったが、開場半年前に起きたリーマンショックがそもそもケチのつき始め。シティに多額の公的資金が注入されると、「納税者フィールドにしろよ!」という辛辣な世論が飛び交い、挙句の果てにはオーナーが巨額詐欺事件に巻き込まれるというトラブル。大枚をはたいて獲得した大物も次々と不良債権化していき、かくして新球場バブルもあっけなく崩壊した。
エクステリアはかつてブルックリンに存在した、「エベッツ・フィールド」を現代の世に甦らせた秀作で、コレに関しては正直拍手を送らざるを得ない。ただし場内の演出は過度にブルックリン・ドジャースへのトリビュートが意識されているけど、エベッツしかり、ジャッキー・ロビンソンしかり、そもそもあなたの球団じゃないでしょ?と突っ込みたくなる(ドジャースとジャイアンツの西海岸移転がメッツ球団誕生のきっかけとなったのは間違いないのだが)。
フィールドやフェンス形状も必要以上に奇をてらったデザインが施されており、はっきり言ってクドい。先代のシェイ・スタジアムの方が長閑でメッツらしかったと言ったら可哀そうだろうか。場内で最も賑わっているのはセンター後方にあるNYハンバーガーの人気店「SHACK SHACK」という皮肉。近隣のラ・ガーディアを発着する飛行機は相変わらずノイジーで、コレはシェイ時代と変わらない。
圏外/シチズンズバンク・パーク
- ホーム :フィラデルフィア・フィリーズ
- オープン:2004年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:43,651人
古都フィラデルフィアの風情をそのまま生かしたネオクラシック調デザイン、美しい天然芝、カクテル光線、マスコットのフィリー・ファナティックが、全米一ブーイングが執拗と言われているフィリーズファンを盛り上げ、コンコースからは地元名物「フィリー・チーズステーキ」の香ばしい匂いが充満する。
完全に期待通りの空間なハズなのになぜだろう。。。球界関係者の間でも屈指の好球場と専ら評判だが、個人的には期待が大きすぎたのか、氾濫するHOK作品に飽きてしまったのか、驚くほど良いと感じられなかった球場。コンコースが異様にチープに感じてしまったんだな。ユニークな点と言えば、試合中にダイヤモンドクラブのレストラン内からダグアウト裏のバッティングゲージが覗けるシカケになっており、試合そっちのけでトーミの打撃練習にくぎ付けになっていたわ。
お目当てのチーズステーキも、球場の売店で作り置かれているものはパンが固いので性に合わず、ダウンタウンに帰る途中の2大有名店、「PAT'S」か「GENO's」でテイクアウトした方がおいしいで。ちなみに24時間営業なんで試合後でもご安心を。
圏外/ロジャース・センター
- ホーム :トロント・ブルージェイズ
- オープン:1989年
- デザイン:Robbie Young + Wright
- 収容人数:49,260人
世界初の開閉式球場として、球界は元より建築業界をも震撼させた(らしい)ユニーク物件。開場当時は1992-93年の2年連続ワールドチャンピオンなど、ブルージェイズの好成績と共に観客動員も絶好調だった。以降、開閉式ドームのノウハウは福岡ドーム等に脈々と受け継がれていく。ただし建造物として一見の価値はあるものの、空前のネオクラッシックブーム前夜に建てられた為、当時最新鋭のデザインも20数年経った今にはちと古く感じられてしまう所はやむを得ない。そういえば松井秀喜がメジャーデビューを飾ったのもこの球場。
元々は「スカイ・ドーム」という愛称で親しまれていたが、2004年に通信大手のロジャース社に球場が買収されるとともに、名称も「ロジャース・センター」に改名。センターの綴りが”Center”ではなく、敢えて”Centre”と言うところがカナダらしくブリティッシュ流。球場にはホテルが併設されており、現役時代にロベルト・アロマーが住んでいた事で有名。試合中、窓際で淫らな行為をすると即退場になるので要注意。近年天然芝に貼り替えられるという噂があるが、真相はいかに!?
圏外/トロピカーナ・フィールド
- ホーム :タンパベイ・レイズ
- オープン:1990年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:42,735人
ココも密かなるHOK作品だが(ブレイク前の)、元々は野球専用球場として建てられたわけではなく、当初はアリーナフットボールや、アイスホッケー場として利用されていた。恐らくメジャーリーグで最後となるであろう人工芝&密封式ドーム球場である。90年代初頭からマリナーズ、ホワイトソックス、ジャイアンツの球団誘致にことごとく失敗し、98年のエクスパンションでようやくデビルレイズ(現レイズ)のフランチャイズとして落ち着いたのは、開場から8年後のこと。
プレーオフでも空席が目立つのは一概に球場のせいだけとは言えないが、ココを脱出することによって何かが変わることは間違いなさそうだ。数年前にはセントピーターズバーグのマリーナ沿いに新球場の建設予定と設計図まで出来あがってたのに、いつのまにかプロジェクトはとん挫。
唯一この球場で面白いのは、内野の人工芝以外の部分にはきちんと本物の土を入れている点。人工芝球場のせめてものエクスキューズを大いに感じる。ナゴヤドームや横浜スタジアムのようなオレンジ色の人工芝を内野に敷いた「ボールパーク風」の安っぽい演出よりはまだマシか。
2012年11月26日月曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク 『ランク圏外/中地区編』
圏外/USセルラー・フィールド
- ホーム :シカゴ・ホワイトソックス
- オープン:1991年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:40,615人
今では偉そうにアレコレ語っている自分だが、初めてメジャーリーグに触れたのはたった8年前のココだった。濃い緑の天然芝の美しさと、その夏らしい薫りに酔いしれ、結果的にあの時の感動が僕の人生の一部を変えてしまったと言っても過言ではない。
球場自体はオリオール・パークの1年前に開場した、HOKの「プロトタイプ的作品」だが、まだネオクラシックの風情は感じられない。ただし、先代のコミスキー・パークから「風車式爆音スコアボード」が踏襲されるなど、「やりたかったこと」は大いに感じられる。
個人的に好きなのはレフト外野コンコースにあるシャワー。ただシャワーの蛇口から水が出るだけなのだが、夏場にファンが水浴びするためにと、旧オーナーのビル・ベックにより考案されたもので、これも旧コミスキー・パークより移設されてきている(球界の風雲児ことベックの功績についてはいつか語りたい)。
今回のランキングからは泣く泣く外したが、永遠に我が青春のボールパークであることは間違いない。
圏外/プログレッシブ・フィールド
- ホーム :クリーブランド・インディアンス
- オープン:1994年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:43,429人
不況や治安悪化から街を立ち直らせるべく、「クリーブランド復興計画」の一環としてダウンタウンの一等地に建てられた模範的な「箱庭的ボールパーク」。かつて鉄鋼業で繁栄したクリーブランドらしく、白い鉄骨がむき出したままのユニークな外観(そういえば造船業で財をなしたスタインブレナーもこの街出身)。
開場翌年の95年から足掛け6シーズンにかけ、455試合連続チケットSOLD OUTの金字塔を樹立した(その後ボストンのフェンウェイパークに塗り替えられた)。コッテコテのネオクラシックスタイルのオリオール・パークで一世を風靡したHOKが、たった2年後に全く毛色の異なるこの作品を世に送り出した事に、多芸というか、引き出しの多さというか、素直に敬服する。
従来は当たり前のようにセンターに鎮座していたスコアボード類を、景観を意識して端っこに寄せる手法や、歯ブラシ型の縦置き照明などは以降の球場デザインに大きな影響を与えた。間違いなくメジャーでも5本の指に入るであろう好球場だけに、ココのランク入りは正直最後の最後まで悩んだ。が、いかんせんダウンタウンの治安と言うか雰囲気が悪過ぎるため(怖すぎるため)断念。いやしかし、球場自体は本当に素晴らしい!!
圏外/コメリカ・パーク
- ホーム :デトロイト・タイガース
- オープン:2000年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:40,120人
工業地帯だったデトロイトに倣えと、大阪を地元とする阪神が球団名をパクったのは有名なハナシ。”虎”というと東洋では「黄色」と「黒」のイメージだが、”タイガー”というと西洋では「オレンジ」と「ネイビー」のイメージだそうだ。その昔、タイガースのユニフォームの靴下の色がオレンジとネイビーの縞柄だったから付けられたニックネーム。
球場内にはメリーゴーランドや観覧車があり、ボールパークらしい楽しさを提供してくれるのは有難いが、メリーゴーランドが馬では無く、タイガーなのがポイント。これが結構リアルで怖いので子連れの親御さんは気をつけよう。
ココの球場のフィールドは地下1階レベルに掘られて設計されており、メインコンコースがストリートレベルにあるというユニークな造り。日比谷野外音楽堂と同じような造りと言えば分るだろうか?これはアリゾナのグッドイヤーボールパーク(レッズとインディアンスのスプリングトレーニングサイト)などにも採用されている手法。自動車産業ややブラックミュージックで一時代を築いた「モータウン」として世界的にも有名だが、とにかくこの街も治安悪過ぎ、怖すぎ。
圏外/クアーズ・フィールド
- ホーム :コロラド・ロッキーズ
- オープン:1995年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:50,398人
ご存じ「マイル・ハイ・スタジアム」。海抜0メートル地点より9%も打球が飛ぶと言われている、メジャーきっての打者天国。昨今メジャーリーグでも乱発気味のノーヒッターだが、ココでの達成者はいまだに96年の野茂秀雄ただ一人だけ。
球場内の座席の色は基本ダークグリーンで統一されているが、アッパーデック3階席の20列目が丁度海抜1マイル(1600m)に当たるため、そのラインだけ座席がチームカラーのパープルに塗られている。レンガと鉄骨を組み合わせた典型的なHOKの初期型ネオクラシック作品で、開場当時はそれなりに評価されていたようだが、これだけHOK作品が飽和状態となった今では特にヒネリも工夫も無いように見えてしまう不幸。ただ、デンバーのような中級都市に5万人を超える大箱は今となっては珍しく、こんなところに90年代という時代を感じてしまう。
圏外/ミラー・パーク
- ホーム :ミルウォーキー・ブルワーズ
- オープン:2001年
- デザイン:HKS
- 収容人数:41,900人
春先、秋口のミルウォーキーの過酷な寒さをしのぐ為、開閉式天然芝球場という形式を採用しているが、ココの屋根は扇子を真ん中から割る用に開くメカニズムを採用しており、世界でも稀(というか他に知らない)。建設工事中にはクレーン倒壊事故により2名の作業員が亡くなると言う悲劇にも見舞われたが、予定より1年遅れで開場した。
ブルワーズの選手がホームランを打つと、マスコットのバーニー・ブルワーが滑り台から滑り降りてくるパフォーマンスが有名。というか唯一の彼の仕事と言っていい。かつてミルウォーキーにはドイツ系の移民が大量に流入した為、ビール製造のメッカとなったそうだ。へ~。
あとミルウォーキーと言えばハーレーダビッドソンが有名で、投手交代の際にはスポンサーでもあるハーレーのバイクが球場内を一周するというパフォーマンスが旧スタジアム時代からのお決まり。
- ホーム :シカゴ・ホワイトソックス
- オープン:1991年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:40,615人
今では偉そうにアレコレ語っている自分だが、初めてメジャーリーグに触れたのはたった8年前のココだった。濃い緑の天然芝の美しさと、その夏らしい薫りに酔いしれ、結果的にあの時の感動が僕の人生の一部を変えてしまったと言っても過言ではない。
球場自体はオリオール・パークの1年前に開場した、HOKの「プロトタイプ的作品」だが、まだネオクラシックの風情は感じられない。ただし、先代のコミスキー・パークから「風車式爆音スコアボード」が踏襲されるなど、「やりたかったこと」は大いに感じられる。
個人的に好きなのはレフト外野コンコースにあるシャワー。ただシャワーの蛇口から水が出るだけなのだが、夏場にファンが水浴びするためにと、旧オーナーのビル・ベックにより考案されたもので、これも旧コミスキー・パークより移設されてきている(球界の風雲児ことベックの功績についてはいつか語りたい)。
今回のランキングからは泣く泣く外したが、永遠に我が青春のボールパークであることは間違いない。
圏外/プログレッシブ・フィールド
- ホーム :クリーブランド・インディアンス
- オープン:1994年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:43,429人
不況や治安悪化から街を立ち直らせるべく、「クリーブランド復興計画」の一環としてダウンタウンの一等地に建てられた模範的な「箱庭的ボールパーク」。かつて鉄鋼業で繁栄したクリーブランドらしく、白い鉄骨がむき出したままのユニークな外観(そういえば造船業で財をなしたスタインブレナーもこの街出身)。
開場翌年の95年から足掛け6シーズンにかけ、455試合連続チケットSOLD OUTの金字塔を樹立した(その後ボストンのフェンウェイパークに塗り替えられた)。コッテコテのネオクラシックスタイルのオリオール・パークで一世を風靡したHOKが、たった2年後に全く毛色の異なるこの作品を世に送り出した事に、多芸というか、引き出しの多さというか、素直に敬服する。
従来は当たり前のようにセンターに鎮座していたスコアボード類を、景観を意識して端っこに寄せる手法や、歯ブラシ型の縦置き照明などは以降の球場デザインに大きな影響を与えた。間違いなくメジャーでも5本の指に入るであろう好球場だけに、ココのランク入りは正直最後の最後まで悩んだ。が、いかんせんダウンタウンの治安と言うか雰囲気が悪過ぎるため(怖すぎるため)断念。いやしかし、球場自体は本当に素晴らしい!!
圏外/コメリカ・パーク
- ホーム :デトロイト・タイガース
- オープン:2000年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:40,120人
工業地帯だったデトロイトに倣えと、大阪を地元とする阪神が球団名をパクったのは有名なハナシ。”虎”というと東洋では「黄色」と「黒」のイメージだが、”タイガー”というと西洋では「オレンジ」と「ネイビー」のイメージだそうだ。その昔、タイガースのユニフォームの靴下の色がオレンジとネイビーの縞柄だったから付けられたニックネーム。
球場内にはメリーゴーランドや観覧車があり、ボールパークらしい楽しさを提供してくれるのは有難いが、メリーゴーランドが馬では無く、タイガーなのがポイント。これが結構リアルで怖いので子連れの親御さんは気をつけよう。
ココの球場のフィールドは地下1階レベルに掘られて設計されており、メインコンコースがストリートレベルにあるというユニークな造り。日比谷野外音楽堂と同じような造りと言えば分るだろうか?これはアリゾナのグッドイヤーボールパーク(レッズとインディアンスのスプリングトレーニングサイト)などにも採用されている手法。自動車産業ややブラックミュージックで一時代を築いた「モータウン」として世界的にも有名だが、とにかくこの街も治安悪過ぎ、怖すぎ。
圏外/クアーズ・フィールド
- ホーム :コロラド・ロッキーズ
- オープン:1995年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:50,398人
ご存じ「マイル・ハイ・スタジアム」。海抜0メートル地点より9%も打球が飛ぶと言われている、メジャーきっての打者天国。昨今メジャーリーグでも乱発気味のノーヒッターだが、ココでの達成者はいまだに96年の野茂秀雄ただ一人だけ。
球場内の座席の色は基本ダークグリーンで統一されているが、アッパーデック3階席の20列目が丁度海抜1マイル(1600m)に当たるため、そのラインだけ座席がチームカラーのパープルに塗られている。レンガと鉄骨を組み合わせた典型的なHOKの初期型ネオクラシック作品で、開場当時はそれなりに評価されていたようだが、これだけHOK作品が飽和状態となった今では特にヒネリも工夫も無いように見えてしまう不幸。ただ、デンバーのような中級都市に5万人を超える大箱は今となっては珍しく、こんなところに90年代という時代を感じてしまう。
圏外/ミラー・パーク
- ホーム :ミルウォーキー・ブルワーズ
- オープン:2001年
- デザイン:HKS
- 収容人数:41,900人
春先、秋口のミルウォーキーの過酷な寒さをしのぐ為、開閉式天然芝球場という形式を採用しているが、ココの屋根は扇子を真ん中から割る用に開くメカニズムを採用しており、世界でも稀(というか他に知らない)。建設工事中にはクレーン倒壊事故により2名の作業員が亡くなると言う悲劇にも見舞われたが、予定より1年遅れで開場した。
ブルワーズの選手がホームランを打つと、マスコットのバーニー・ブルワーが滑り台から滑り降りてくるパフォーマンスが有名。というか唯一の彼の仕事と言っていい。かつてミルウォーキーにはドイツ系の移民が大量に流入した為、ビール製造のメッカとなったそうだ。へ~。
あとミルウォーキーと言えばハーレーダビッドソンが有名で、投手交代の際にはスポンサーでもあるハーレーのバイクが球場内を一周するというパフォーマンスが旧スタジアム時代からのお決まり。
2012年11月16日金曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク 『ランク圏外/西地区編』
圏外/オードットコー・コロシアム
- ホーム :オークランド・アスレチックス
- オープン:1966年
- デザイン:Skidmore, Owings and Merrill
- 収容人数:35,067人
ご存じ”メジャー最低の球場”。元々の名称「オークランド・(アラメダ・カウンティ)コロシアム」から、1998年のネーミングライツ販売以降、「ネットワークアソシエイツ・コロシアム」、「マカフィー・コロシアム」、「オーバーストックドットコム・コロシアム」、「オードットコー・コロシアム」と落ち着かない。
球場周辺のコンビニやガソリンスタンドのキャッシャーは鉄格子で囲われており、この街に来た事さえ後悔させる。あまりの治安の悪さに客が寄りつかないため、近年本拠地のフリーモントへの移転を試みており、「シスコ・フィールド」なる新球場の設計図まで出来てたのに計画はとん挫中。
球団がケチな為か、球場スタッフの数が極端に少なく、大概どの席も座り放題。ただ、敢えて2階席に陣取りカリフォルニアの夕暮れをゆっくり拝むのが自分流。色んな意味で哀愁が漂ってくる。
圏外/ドジャー・スタジアム
- ホーム :ロサンゼルス・ドジャース
- オープン:1962年
- デザイン:Praeger-Kavanaugh-Waterbury
- 収容人数:56,000人
かつては「全米一美しい球場」と讃えられた時期もあったが、気づけばボストンのフェンウェイ、シカゴのリグリーについでメジャーリーグで3番目に古い現役球場となってしまった。球場改修は度々行われているものの、辛気臭さをぬぐえないまま老いていく印象を受ける。来季よりオーナー陣が一新されることで、今後の方向性に変化が起こる可能性があり、注目したい。
2011年の開幕戦では駐車場でファンが暴行を受け、意識不明の重体となる悲しい事件が起こったが、このような悲劇が二度と起こらないよう警備も徹底して頂きたいところ。名門・人気チームにしてはチームストアがショボい点も残念。最近マイナーチームでももっと充実してまっせ!とゲキを入れたくなる。
初心者にはお薦めしないが、チケットは駐車場をウロついてるダフ屋と交渉すると、意外な出物にあり付ける可能性大。
圏外/レンジャース・ボールパーク・イン・アーリントン
- ホーム :テキサス・レンジャース
- オープン:1994年
- デザイン:David M. Schwarz Architectural Services, Inc.
- 収容人数:48,194人
ココもネオクラッシック型ボールパークの典型だが、シアトルのセーフコ同様HOK作品では無い。近年には珍しくなった大箱球場で、何もかもがデカいテキサスならでは!と言いたいところだが、意外に場内は圧迫感がある。
外野スタンドはレフト、ライトそれぞれ2-3階席まであり、センター後方には球団事務所や貸しオフィスが入居しているビルがそびえたっている。どうせ周りに何にもないんだから、個人的にはもっと開放感のあるデザインが良かったのだが。
あと、何故か場内売店のアルコール販売のレギュレーションが異常に厳しく、在米IDを所持していないと(日本国籍パスポートは通用しない)この歳でビールの販売を断られるケースが多々ある。そういう時はスタンドを練り歩いてる売り子の兄ちゃんにチップを多めに渡して融通してもらおう。
来季はネーミングライツを売って球場名が変わってるかも。
圏外/チェース・フィールド
- ホーム :アリゾナ・ダイアモンドバックス
- オープン:1998年
- デザイン:Ellerbe Becket
- 収容人数:48,633人
世界初の開閉式天然芝球場。通常であれば悪天候や寒さからプレイヤーやファンを守るため球場には屋根が設置されるが、ココは真逆。修羅の如く照りつけるアリゾナの太陽から身を守るため、晴天時にクローズされるケースがほとんど。
右中間にはマイナー球場のアイディアをそっくりパクったプール&ジャグジーが設置されており、美女が水着でWOW~というケースもしばしば。シャイな日本人には敬遠されかねない商品だが、未だにソールドアウトを続けている人気企画である。
ただしアリゾナに行く機会があれば、個人的にはココよりもフェニックス近郊のユニークなボールパーク達をチェックしてもらいたい。スコッツデール、キャメルバック、ピオリア、サプライズ、グッドイヤーなど、スプリングトレーニングサイトとしても有名な施設が半径数十キロ以内にゴロゴロ転がっているので、車を借りてボールパークお遍路の旅に出かけられてはいかがだろうか。あなた好みのマイナー球場が見つかるハズよ。
圏外/ミニッツメイド・パーク
- ホーム :ヒューストン・アストロズ
- オープン:2000年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:40,981人
”世界初のドーム球場”として人類に多大なるインパクトを与えた先代のアストロ・ドームと比べると、どうしてもかなり影が薄い印象。ココも開閉式の屋根を採用しているが、ほぼ同級生のセーフコと比べると、ハコ庭的圧迫感は否めない。
センター後方のフィールド内に「タルズ・ヒル」と呼ばれる丘があり、かつてシンシナティの本拠地であったクロスリー・フィールドの形状を模したらしい。またかつてのヤンキー・スタジアムやタイガー・スタジアムを模して、フラッグポールが何とフィールド内に立てられている。嗜好を凝らすのは結構だが、当然プレーの邪魔になることは請け合いで、選手からのクレームにより、来季から撤去されることになっている。
また球団自体もオーナーの交代を経て、来季からはリーグを変えア・リーグ西地区に移転し、マリナーズとビリ争いを繰り広げる予定。
圏外/ペトコ・パーク
- ホーム :サンディエゴ・パドレス
- オープン:2004年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:42,445人
ペトコと言えば、第1回WBC準決勝で韓国のキム・ビョンヒョンから、代打・福留が右中間に放った特大ホームランが印象的。ただ通常はメジャー30球場中でも屈指の”打者墓場”として有名。
ココも例によってHOKの中期作品で、ネオクラシックの流れを大いに汲んでいるものの、白い鉄骨やネイビーの座席を採用し、サンディエゴらしいマリンテイストを意識した雰囲気。レフトにはウェスタン・メタル・サプライ社の築100年にもなるビルディングをそのまま利用し、さながらオリオール・パークの二番煎じ的な要素も見受けられる。外野にはメジャーでは珍しい芝生席と、ビーチをイメージした砂場が広がっており、カリフォルニアの解放感をまんま表現した好球場。
そう、確かに良い球場なのだが個人的な思い入れも特に無く、今回惜しくもランク外とさせて頂いた。サンディエゴ・シーワールドでシャチには挨拶しておこう。
- ホーム :オークランド・アスレチックス
- オープン:1966年
- デザイン:Skidmore, Owings and Merrill
- 収容人数:35,067人
ご存じ”メジャー最低の球場”。元々の名称「オークランド・(アラメダ・カウンティ)コロシアム」から、1998年のネーミングライツ販売以降、「ネットワークアソシエイツ・コロシアム」、「マカフィー・コロシアム」、「オーバーストックドットコム・コロシアム」、「オードットコー・コロシアム」と落ち着かない。
球場周辺のコンビニやガソリンスタンドのキャッシャーは鉄格子で囲われており、この街に来た事さえ後悔させる。あまりの治安の悪さに客が寄りつかないため、近年本拠地のフリーモントへの移転を試みており、「シスコ・フィールド」なる新球場の設計図まで出来てたのに計画はとん挫中。
球団がケチな為か、球場スタッフの数が極端に少なく、大概どの席も座り放題。ただ、敢えて2階席に陣取りカリフォルニアの夕暮れをゆっくり拝むのが自分流。色んな意味で哀愁が漂ってくる。
圏外/ドジャー・スタジアム
- ホーム :ロサンゼルス・ドジャース
- オープン:1962年
- デザイン:Praeger-Kavanaugh-Waterbury
- 収容人数:56,000人
かつては「全米一美しい球場」と讃えられた時期もあったが、気づけばボストンのフェンウェイ、シカゴのリグリーについでメジャーリーグで3番目に古い現役球場となってしまった。球場改修は度々行われているものの、辛気臭さをぬぐえないまま老いていく印象を受ける。来季よりオーナー陣が一新されることで、今後の方向性に変化が起こる可能性があり、注目したい。
2011年の開幕戦では駐車場でファンが暴行を受け、意識不明の重体となる悲しい事件が起こったが、このような悲劇が二度と起こらないよう警備も徹底して頂きたいところ。名門・人気チームにしてはチームストアがショボい点も残念。最近マイナーチームでももっと充実してまっせ!とゲキを入れたくなる。
初心者にはお薦めしないが、チケットは駐車場をウロついてるダフ屋と交渉すると、意外な出物にあり付ける可能性大。
圏外/レンジャース・ボールパーク・イン・アーリントン
- ホーム :テキサス・レンジャース
- オープン:1994年
- デザイン:David M. Schwarz Architectural Services, Inc.
- 収容人数:48,194人
ココもネオクラッシック型ボールパークの典型だが、シアトルのセーフコ同様HOK作品では無い。近年には珍しくなった大箱球場で、何もかもがデカいテキサスならでは!と言いたいところだが、意外に場内は圧迫感がある。
外野スタンドはレフト、ライトそれぞれ2-3階席まであり、センター後方には球団事務所や貸しオフィスが入居しているビルがそびえたっている。どうせ周りに何にもないんだから、個人的にはもっと開放感のあるデザインが良かったのだが。
あと、何故か場内売店のアルコール販売のレギュレーションが異常に厳しく、在米IDを所持していないと(日本国籍パスポートは通用しない)この歳でビールの販売を断られるケースが多々ある。そういう時はスタンドを練り歩いてる売り子の兄ちゃんにチップを多めに渡して融通してもらおう。
来季はネーミングライツを売って球場名が変わってるかも。
圏外/チェース・フィールド
- ホーム :アリゾナ・ダイアモンドバックス
- オープン:1998年
- デザイン:Ellerbe Becket
- 収容人数:48,633人
世界初の開閉式天然芝球場。通常であれば悪天候や寒さからプレイヤーやファンを守るため球場には屋根が設置されるが、ココは真逆。修羅の如く照りつけるアリゾナの太陽から身を守るため、晴天時にクローズされるケースがほとんど。
右中間にはマイナー球場のアイディアをそっくりパクったプール&ジャグジーが設置されており、美女が水着でWOW~というケースもしばしば。シャイな日本人には敬遠されかねない商品だが、未だにソールドアウトを続けている人気企画である。
ただしアリゾナに行く機会があれば、個人的にはココよりもフェニックス近郊のユニークなボールパーク達をチェックしてもらいたい。スコッツデール、キャメルバック、ピオリア、サプライズ、グッドイヤーなど、スプリングトレーニングサイトとしても有名な施設が半径数十キロ以内にゴロゴロ転がっているので、車を借りてボールパークお遍路の旅に出かけられてはいかがだろうか。あなた好みのマイナー球場が見つかるハズよ。
圏外/ミニッツメイド・パーク
- ホーム :ヒューストン・アストロズ
- オープン:2000年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:40,981人
”世界初のドーム球場”として人類に多大なるインパクトを与えた先代のアストロ・ドームと比べると、どうしてもかなり影が薄い印象。ココも開閉式の屋根を採用しているが、ほぼ同級生のセーフコと比べると、ハコ庭的圧迫感は否めない。
センター後方のフィールド内に「タルズ・ヒル」と呼ばれる丘があり、かつてシンシナティの本拠地であったクロスリー・フィールドの形状を模したらしい。またかつてのヤンキー・スタジアムやタイガー・スタジアムを模して、フラッグポールが何とフィールド内に立てられている。嗜好を凝らすのは結構だが、当然プレーの邪魔になることは請け合いで、選手からのクレームにより、来季から撤去されることになっている。
また球団自体もオーナーの交代を経て、来季からはリーグを変えア・リーグ西地区に移転し、マリナーズとビリ争いを繰り広げる予定。
圏外/ペトコ・パーク
- ホーム :サンディエゴ・パドレス
- オープン:2004年
- デザイン:HOK Sport(現Populous)
- 収容人数:42,445人
ペトコと言えば、第1回WBC準決勝で韓国のキム・ビョンヒョンから、代打・福留が右中間に放った特大ホームランが印象的。ただ通常はメジャー30球場中でも屈指の”打者墓場”として有名。
ココも例によってHOKの中期作品で、ネオクラシックの流れを大いに汲んでいるものの、白い鉄骨やネイビーの座席を採用し、サンディエゴらしいマリンテイストを意識した雰囲気。レフトにはウェスタン・メタル・サプライ社の築100年にもなるビルディングをそのまま利用し、さながらオリオール・パークの二番煎じ的な要素も見受けられる。外野にはメジャーでは珍しい芝生席と、ビーチをイメージした砂場が広がっており、カリフォルニアの解放感をまんま表現した好球場。
そう、確かに良い球場なのだが個人的な思い入れも特に無く、今回惜しくもランク外とさせて頂いた。サンディエゴ・シーワールドでシャチには挨拶しておこう。
2012年11月13日火曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第6位』
第6位/セーフコ・フィールド
- ホーム :シアトル・マリナーズ
- オープン:1999年
- デザイン:NBBJ
- 収容人数:47,860人
時は1995年、マリナーズの選手たちはロッカールームでマイアミの住宅情報誌に夢中になっていた。チームの人気低迷に輪をかけて、本拠地キングドームの老朽化が進み、シアトルの街に新球場が建設される見込みが無ければ、球団のフロリダ移転がいよいよ現実味を帯びていたからだ。
しかしながら、新球場の建設費の一部は市民への増税により賄われなければならず、世論を味方に付ける為にも、チームの奮起がこの時ほど望まれていた事は無かった。
このシーズンのマリナーズは一時首位エンゼルスから13ゲーム離されていたものの、シーズン終盤に奇跡の大逆転劇を演じ、球団史上初の地区優勝・プレーオフ進出を果たしたのだ。
特にディビジョンシリーズでヤンキース相手に2勝2敗で並んだ最終第5戦、延長11回裏にエドガー・マルティネスがレフト線に放ったタイムリーツーベースヒットは、「The Double」と呼ばれており、サヨナラのホームに滑り込んだまま、チームメイトに揉みくちゃにされた若き日のケン・グリフィー・ジュニアの弾ける笑顔と共に、今でもシアトルのベースボールファンの胸に強烈に焼き付いている。
結果的にこの年、マリナーズはリーグチャンピオンシップシリーズで敗退したものの、この活躍がきっかけとなり新球場建設へ大きなウネりとなっていった。球団社長のアームストロングの言葉を借りれば、ベーブルースがヤンキー・スタジアムを建てたのなら、セーフコ・フィールドを建てたのはケン・グリフィー・ジュニアなのである。
こうして世紀の爆破解体ショーによって消滅した先代のキングドームの南側に、新球場セーフコ・フィールドは世界2番目の「開閉式天然芝球場」として誕生した。
世界中にいくつか存在する他の開閉式球場は、「ドーム(天井)が開く」という感覚だが、ココの場合は「屋外球場に屋根が被さる」といった表現の方が的確である。屋根は晴天時には球場後方の「BNSF鉄道」のレールの上に被せられており、悪天候時にのみ屋根がスライドしてフィールド上に被さる仕組みになっている。
試合中継中にバオ~ンという汽笛が鳴り響くのがお馴染みだが、あれはこの線路を行き来する貨物列車の合図なのである。
ココも例によってレンガと鉄骨を組み合わせたエクステリアや、敢えて手動式のスコアボードを採用するなど、当時の流行『ネオクラシック・スタイル』を地で行くコンセプトとなっているが、意外にもHOKの作品では無い。
スタンドは1階、2階、スイートレベル、3階とシアトルのマーケット規模感から言ったら少々大き目に感じるが、開場当時は年間350万人以上集客するメジャー屈指の人気球場だった。が、近年はチームの低迷と共に観客動員も200万人そこそこと低迷を強いられている。
スイートレベルのど真ん中に鎮座する”オーナーズスイート”の壁には山内溥オーナーの肖像写真が飾られているが、ご本人は一度も球場に足を運んだことは無いそうだ。
さて、シアトルといえばコーヒーが有名だが、実はマイクロブリュワリーの宝庫でもある。球場内でも『Mack & Jack』、『Red Hook』、『Fat Tire』といった地元産ビールをドラフトで楽しめるカウンターがあるので、ここはありふれたバドやクアーズではなく、レアなブランドを手に観戦されたい。
ツマミにはコンコース内売店『Grounders』の "World Famous" Garlic Friesが最適である。ガーリックと油でギトギトまみれたフレンチフライがついついビールを進めてしまうので要注意。また、ダウンタウンにあるクラムチャウダーの老舗『Ivar's』も球場内に出店しており、春先、秋口の肌寒い日には特にお薦め。
個人的には目をつぶっても歩けるくらい通い詰めた球場だけあって、正直6位と言うポジションに友情票は否めないが、シアトルの街や人々同様に非常にフレンドリーで居心地の良い空間であることは間違いない。
3塁側2階席後方にはテラスでくつろげるオープンスペースが広がっているが、そこから望むシアトルダウンタウンのスカイライン越しに沈む夕日の美しさは特筆。エリオット湾から微かに薫ってくる潮風も手伝って実にさわやかな気持ちになれるのだ。
ご存じの通りチームは10年以上の間低迷期に入っているが、願わくば開場当時の大熱狂をいつかまたココで経験してみたいものである。その時には多少のベテランファンとなった自分が感慨にふけることが出来るのではと、淡い夢があるのである。
- ホーム :シアトル・マリナーズ
- オープン:1999年
- デザイン:NBBJ
- 収容人数:47,860人
時は1995年、マリナーズの選手たちはロッカールームでマイアミの住宅情報誌に夢中になっていた。チームの人気低迷に輪をかけて、本拠地キングドームの老朽化が進み、シアトルの街に新球場が建設される見込みが無ければ、球団のフロリダ移転がいよいよ現実味を帯びていたからだ。
しかしながら、新球場の建設費の一部は市民への増税により賄われなければならず、世論を味方に付ける為にも、チームの奮起がこの時ほど望まれていた事は無かった。
このシーズンのマリナーズは一時首位エンゼルスから13ゲーム離されていたものの、シーズン終盤に奇跡の大逆転劇を演じ、球団史上初の地区優勝・プレーオフ進出を果たしたのだ。
特にディビジョンシリーズでヤンキース相手に2勝2敗で並んだ最終第5戦、延長11回裏にエドガー・マルティネスがレフト線に放ったタイムリーツーベースヒットは、「The Double」と呼ばれており、サヨナラのホームに滑り込んだまま、チームメイトに揉みくちゃにされた若き日のケン・グリフィー・ジュニアの弾ける笑顔と共に、今でもシアトルのベースボールファンの胸に強烈に焼き付いている。
結果的にこの年、マリナーズはリーグチャンピオンシップシリーズで敗退したものの、この活躍がきっかけとなり新球場建設へ大きなウネりとなっていった。球団社長のアームストロングの言葉を借りれば、ベーブルースがヤンキー・スタジアムを建てたのなら、セーフコ・フィールドを建てたのはケン・グリフィー・ジュニアなのである。
こうして世紀の爆破解体ショーによって消滅した先代のキングドームの南側に、新球場セーフコ・フィールドは世界2番目の「開閉式天然芝球場」として誕生した。
世界中にいくつか存在する他の開閉式球場は、「ドーム(天井)が開く」という感覚だが、ココの場合は「屋外球場に屋根が被さる」といった表現の方が的確である。屋根は晴天時には球場後方の「BNSF鉄道」のレールの上に被せられており、悪天候時にのみ屋根がスライドしてフィールド上に被さる仕組みになっている。
試合中継中にバオ~ンという汽笛が鳴り響くのがお馴染みだが、あれはこの線路を行き来する貨物列車の合図なのである。
ココも例によってレンガと鉄骨を組み合わせたエクステリアや、敢えて手動式のスコアボードを採用するなど、当時の流行『ネオクラシック・スタイル』を地で行くコンセプトとなっているが、意外にもHOKの作品では無い。
スタンドは1階、2階、スイートレベル、3階とシアトルのマーケット規模感から言ったら少々大き目に感じるが、開場当時は年間350万人以上集客するメジャー屈指の人気球場だった。が、近年はチームの低迷と共に観客動員も200万人そこそこと低迷を強いられている。
スイートレベルのど真ん中に鎮座する”オーナーズスイート”の壁には山内溥オーナーの肖像写真が飾られているが、ご本人は一度も球場に足を運んだことは無いそうだ。
さて、シアトルといえばコーヒーが有名だが、実はマイクロブリュワリーの宝庫でもある。球場内でも『Mack & Jack』、『Red Hook』、『Fat Tire』といった地元産ビールをドラフトで楽しめるカウンターがあるので、ここはありふれたバドやクアーズではなく、レアなブランドを手に観戦されたい。
ツマミにはコンコース内売店『Grounders』の "World Famous" Garlic Friesが最適である。ガーリックと油でギトギトまみれたフレンチフライがついついビールを進めてしまうので要注意。また、ダウンタウンにあるクラムチャウダーの老舗『Ivar's』も球場内に出店しており、春先、秋口の肌寒い日には特にお薦め。
個人的には目をつぶっても歩けるくらい通い詰めた球場だけあって、正直6位と言うポジションに友情票は否めないが、シアトルの街や人々同様に非常にフレンドリーで居心地の良い空間であることは間違いない。
3塁側2階席後方にはテラスでくつろげるオープンスペースが広がっているが、そこから望むシアトルダウンタウンのスカイライン越しに沈む夕日の美しさは特筆。エリオット湾から微かに薫ってくる潮風も手伝って実にさわやかな気持ちになれるのだ。
ご存じの通りチームは10年以上の間低迷期に入っているが、願わくば開場当時の大熱狂をいつかまたココで経験してみたいものである。その時には多少のベテランファンとなった自分が感慨にふけることが出来るのではと、淡い夢があるのである。
2012年10月23日火曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第7位』
第7位/ナショナルズ・パーク
- ホーム :ワシントン・ナショナルズ
- オープン:2008年
- デザイン:HOK Sport (現Populous)
- 収容人数:41,487人
そもそも球場の話しをする前に、涙なしには語れないワシントンDC(以下DC)の野球史について振り返ってみよう...
南北戦争以前の1850年代には既にホワイトハウスの職員連中が中心となって『ナショナル・ベースボール・クラブ』(現在のチーム名の由来となっている)なる団体が存在していたようだが、1891年にはプロリーグの発足を契機に『ワシントン・セネタース』というプロ球団が発足する。が、下記以降の負の歴史である。
●初代セネタース →1891年発足、不人気の為1900年解散。
●2代目セネタース→1901年再発足、不人気の為1960年ミネソタに移転(今のツインズね)。
●3代目セネタース→1961年再々発足、不人気の為1972年テキサスに移転(今のレンジャースね)。
こうして3度も嫁はんに逃げられたDCは「野球人気が定着しない街」というレッテルを張られてしまう。米国では”ナショナルパスタイム”としての地位を確立してきたベースボールだが、その国の首都にメジャー球団が存在しない状況がこの後33年間も続いていく。
転機となったのは2004年オフ、モントリオール・エキスポズが人気低迷の為、球団をMLBに売却し、2005年シーズンよりDCへの移転が決定、新生『ワシントン・ナショナルズ』が誕生した。こういった経緯の中で、2008年に満を持して完成した新球場がこの『ナショナルズ・パーク』である。しかし、チームの不甲斐ない成績に客足は遠のき、新球場ブームは数ヶ月と持たなかった。
かくしてナショナルズは”球界のお荷物”と揶揄される事もあったが、この頃から着々とウェーバー制ドラフトの恩恵を受け、ストラスバーグやハーパーと言った有望株を次々と獲得していった。そして今シーズンのチームのブレイクは御承知の通り、移転以来初の地区優勝を決め、実に首都DCでは79年ぶりのポストシーズンゲームが開催されたのだ(悪夢のような最後だったけど)。
さて球場の話しに戻ろう。ココも例によってHOKの作品だが、球界に与えたインパクトは「エコ」と「脱・ネオクラシック」という2つのコンセプトにチャレンジした点にある。
球場の建築資材には5500トンもの産業廃棄物を再利用し、その他は輸送コストを抑えるため極力地元産の建材を使用。太陽光蓄電により照明に使用するエネルギーを20%削減、照明自体も省電力のものを採用した。フィールドの下には雨水の貯水技術を完備し、水の使用も年間30%削減させた。また、メトロやバスといった公共交通の利用を推奨し、自転車の駐輪場が充実している点もいかにも欧米らしい。
結果的に北米のプロリーグが使用するスタジアムとしては初めて、環境に配慮した建物に与えられる認証システムLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)を所得した施設となり、以降の大型スタジアム建設に大きな影響を与えた。
今まで米国の球場設計のコンセプト(立地選定やデザイン)は日本の20年先を行ってるなーと思ってたけど、ココの取り組みを見て30年以上の差が出来たなと痛感したわ。
球場デザインは白、グレー、ベージュを基調にまとめられ、非常にシンプルなイデタチ。まるで「オフィスビルのようで殺風景」という悪口を良く聞くが、個人的には乱発気味だった”ネオクラシック・スタイル”には正直飽き飽きしていたとこだし、ココのシックで大人な雰囲気の佇まいは逆に新鮮に感じた。座席はネイビーで統一され、チームカラーとのマッチングにも納得感がある。(しかし敢えて苦言を呈するなら、なぜフェンスもネイビーで統一しなかったのだろう。)
スコアボード類のレイアウトもさすがに熟練の感があり、昨今セイバーメトリクスの浸透から、データ・指標が大幅に増えた選手のスタッツや、アウトオブタウン関連の情報などがスッキリまとめられ、観客にとっては見やすくて優しい。
お薦めは右中間のスコアボード後方の「スコアボードウォーク」という巨大なスタンディングバー・スペース。試合前から生バンドのライブが入って、多くの若者で賑わっている。この辺りにNYのハンバーガーの有名店『SHAKE SHACK』(Citi Fieldに続いて2店舗目)が長蛇の列を独占しているので、冷やかしがてら食してみては。
1塁側のアッパーデッキからは連邦議会議事堂やワシントン記念塔が良く見え、プレーボール前のNational Anthemが、いつもよりちょっと特別な音色に聞こえるのは気のせいではないだろう。
合衆国の威厳と、未来への提案がギッシリ詰まった好球場なだけに、もう嫁はんには逃げられないようにと願うばかりである。
- ホーム :ワシントン・ナショナルズ
- オープン:2008年
- デザイン:HOK Sport (現Populous)
- 収容人数:41,487人
そもそも球場の話しをする前に、涙なしには語れないワシントンDC(以下DC)の野球史について振り返ってみよう...
南北戦争以前の1850年代には既にホワイトハウスの職員連中が中心となって『ナショナル・ベースボール・クラブ』(現在のチーム名の由来となっている)なる団体が存在していたようだが、1891年にはプロリーグの発足を契機に『ワシントン・セネタース』というプロ球団が発足する。が、下記以降の負の歴史である。
●初代セネタース →1891年発足、不人気の為1900年解散。
●2代目セネタース→1901年再発足、不人気の為1960年ミネソタに移転(今のツインズね)。
●3代目セネタース→1961年再々発足、不人気の為1972年テキサスに移転(今のレンジャースね)。
こうして3度も嫁はんに逃げられたDCは「野球人気が定着しない街」というレッテルを張られてしまう。米国では”ナショナルパスタイム”としての地位を確立してきたベースボールだが、その国の首都にメジャー球団が存在しない状況がこの後33年間も続いていく。
転機となったのは2004年オフ、モントリオール・エキスポズが人気低迷の為、球団をMLBに売却し、2005年シーズンよりDCへの移転が決定、新生『ワシントン・ナショナルズ』が誕生した。こういった経緯の中で、2008年に満を持して完成した新球場がこの『ナショナルズ・パーク』である。しかし、チームの不甲斐ない成績に客足は遠のき、新球場ブームは数ヶ月と持たなかった。
かくしてナショナルズは”球界のお荷物”と揶揄される事もあったが、この頃から着々とウェーバー制ドラフトの恩恵を受け、ストラスバーグやハーパーと言った有望株を次々と獲得していった。そして今シーズンのチームのブレイクは御承知の通り、移転以来初の地区優勝を決め、実に首都DCでは79年ぶりのポストシーズンゲームが開催されたのだ(悪夢のような最後だったけど)。
さて球場の話しに戻ろう。ココも例によってHOKの作品だが、球界に与えたインパクトは「エコ」と「脱・ネオクラシック」という2つのコンセプトにチャレンジした点にある。
球場の建築資材には5500トンもの産業廃棄物を再利用し、その他は輸送コストを抑えるため極力地元産の建材を使用。太陽光蓄電により照明に使用するエネルギーを20%削減、照明自体も省電力のものを採用した。フィールドの下には雨水の貯水技術を完備し、水の使用も年間30%削減させた。また、メトロやバスといった公共交通の利用を推奨し、自転車の駐輪場が充実している点もいかにも欧米らしい。
結果的に北米のプロリーグが使用するスタジアムとしては初めて、環境に配慮した建物に与えられる認証システムLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)を所得した施設となり、以降の大型スタジアム建設に大きな影響を与えた。
今まで米国の球場設計のコンセプト(立地選定やデザイン)は日本の20年先を行ってるなーと思ってたけど、ココの取り組みを見て30年以上の差が出来たなと痛感したわ。
球場デザインは白、グレー、ベージュを基調にまとめられ、非常にシンプルなイデタチ。まるで「オフィスビルのようで殺風景」という悪口を良く聞くが、個人的には乱発気味だった”ネオクラシック・スタイル”には正直飽き飽きしていたとこだし、ココのシックで大人な雰囲気の佇まいは逆に新鮮に感じた。座席はネイビーで統一され、チームカラーとのマッチングにも納得感がある。(しかし敢えて苦言を呈するなら、なぜフェンスもネイビーで統一しなかったのだろう。)
スコアボード類のレイアウトもさすがに熟練の感があり、昨今セイバーメトリクスの浸透から、データ・指標が大幅に増えた選手のスタッツや、アウトオブタウン関連の情報などがスッキリまとめられ、観客にとっては見やすくて優しい。
お薦めは右中間のスコアボード後方の「スコアボードウォーク」という巨大なスタンディングバー・スペース。試合前から生バンドのライブが入って、多くの若者で賑わっている。この辺りにNYのハンバーガーの有名店『SHAKE SHACK』(Citi Fieldに続いて2店舗目)が長蛇の列を独占しているので、冷やかしがてら食してみては。
1塁側のアッパーデッキからは連邦議会議事堂やワシントン記念塔が良く見え、プレーボール前のNational Anthemが、いつもよりちょっと特別な音色に聞こえるのは気のせいではないだろう。
合衆国の威厳と、未来への提案がギッシリ詰まった好球場なだけに、もう嫁はんには逃げられないようにと願うばかりである。
2012年10月14日日曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第8位』
第8位/エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム
- ホーム :ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム
- オープン:1966年
- デザイン:Noble W. Herzberg and Associates
- 収容人数:45,957人
意外にもメジャー30球場の中で4番目に古い現役球場である(ア・リーグではボストンのフェンウェイ・パークに次いで2番目に古い)。
元々ドジャースタジアムで居候の身だったエンゼルスの為に、66年に専用球場として建設されたが、80年代にはNFLのラムズが流入してきてフットボール兼用スタジアムへ改築される不幸に見舞われた。
しかし97年にチームのオーナーシップがウォルト・ディズニー社に譲渡されるや状況が一変する。
エンターテインメント界の雄・ディズニーによる演出と、ボールパーク界の魔術師ことHOK社のノウハウが融合した大型リノベーションが実現し、辛気臭かった老いぼれスタジアムは、見事子供から大人まで楽しめるボールパークに生まれ変わった。
アメフト用に増築された左中間のスタンドは根こそぎ取り除かれ、代わりにビックサンダーマウンテンを連想させるような岩山を設置、普段は小川が流れ、エンゼルスのHR時には花火と噴水がブチ上がるシカケ。この岩山、表から見ると分かりにくいが、外野コンコースから背後に周るとアルファベットの「A」を型取られている事がしっかりと確認できる。
同じく左中間(現在の照明がある位置)に鎮座していた「ビックAサイン」が代わりに球場横のハイウェイ沿いに移転され、今もアナハイムのランドマークとして余生を送っている。
個人的には夏場の試合終了後に行われる花火大会がお薦め。球場の照明を全て落とし、左中間の岩山後方に上げる花火は他球場のソレとは比較にならないスケール感で圧倒される。さすがディズニー仕込みの演出と唸らずにはいられない。チームのホームページで試合スケジュールをチェックする際は「Fire Works」の注意書きを見落とさず、是非狙って観戦計画を立てて頂きたい。あ、あとココは三塁側がホームだから、座席に拘る人は気を付けて。
ディズニーは既にチームのオーナーシップからは退いてるものの、現オーナー、アルトゥーノ・モレノ氏(MLB史上ヒスパニック系初の球団オーナー)による地道なマーケティング活動が実り、見事2009年にはESPNによる「北米4大スポーツ全122チームの中でのベストフランチャイズ」の栄誉にも選ばれた。
「ボールパークとはどうあるべきか?」この辺の方向性の打ち出し方が非常に分かりやすくて、ほぼ同年代で年々老いていく雰囲気のドジャースタジアムよりも個人的には好き。
近隣にはディズニーランドはもちろん、ちょっと車を飛ばせばユニバーサルスタジオ、ナッツベリーファーム等のテーマパークには事欠かず、ニューポートビーチやハンティントンビーチ、大型ショッピングモールやアウトレットで買い物天国でもある。こんな”ザ・アメリカ”を満喫したい人にとって、ベストなロケーションと言えるだろう。
球場自体の完成度やクオリティーは昨今の新球場たちには到底かなわないかも知れないが、基本的な”ボールパーク”に必要とされるものは揃っている。
何よりLA特有のカラッとした空気、のどかな夕暮れの風景、熱狂的だが決して下品では無いファンが作りだす雰囲気が見事に融合し、球場全体をウェッサ~イな空気が包みこむ。何とも居心地のいい球場である。
まあ、ココがオレンジカウンティじゃなければランクインはしてないけどね!
- ホーム :ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム
- オープン:1966年
- デザイン:Noble W. Herzberg and Associates
- 収容人数:45,957人
意外にもメジャー30球場の中で4番目に古い現役球場である(ア・リーグではボストンのフェンウェイ・パークに次いで2番目に古い)。
元々ドジャースタジアムで居候の身だったエンゼルスの為に、66年に専用球場として建設されたが、80年代にはNFLのラムズが流入してきてフットボール兼用スタジアムへ改築される不幸に見舞われた。
しかし97年にチームのオーナーシップがウォルト・ディズニー社に譲渡されるや状況が一変する。
エンターテインメント界の雄・ディズニーによる演出と、ボールパーク界の魔術師ことHOK社のノウハウが融合した大型リノベーションが実現し、辛気臭かった老いぼれスタジアムは、見事子供から大人まで楽しめるボールパークに生まれ変わった。
アメフト用に増築された左中間のスタンドは根こそぎ取り除かれ、代わりにビックサンダーマウンテンを連想させるような岩山を設置、普段は小川が流れ、エンゼルスのHR時には花火と噴水がブチ上がるシカケ。この岩山、表から見ると分かりにくいが、外野コンコースから背後に周るとアルファベットの「A」を型取られている事がしっかりと確認できる。
同じく左中間(現在の照明がある位置)に鎮座していた「ビックAサイン」が代わりに球場横のハイウェイ沿いに移転され、今もアナハイムのランドマークとして余生を送っている。
個人的には夏場の試合終了後に行われる花火大会がお薦め。球場の照明を全て落とし、左中間の岩山後方に上げる花火は他球場のソレとは比較にならないスケール感で圧倒される。さすがディズニー仕込みの演出と唸らずにはいられない。チームのホームページで試合スケジュールをチェックする際は「Fire Works」の注意書きを見落とさず、是非狙って観戦計画を立てて頂きたい。あ、あとココは三塁側がホームだから、座席に拘る人は気を付けて。
ディズニーは既にチームのオーナーシップからは退いてるものの、現オーナー、アルトゥーノ・モレノ氏(MLB史上ヒスパニック系初の球団オーナー)による地道なマーケティング活動が実り、見事2009年にはESPNによる「北米4大スポーツ全122チームの中でのベストフランチャイズ」の栄誉にも選ばれた。
「ボールパークとはどうあるべきか?」この辺の方向性の打ち出し方が非常に分かりやすくて、ほぼ同年代で年々老いていく雰囲気のドジャースタジアムよりも個人的には好き。
近隣にはディズニーランドはもちろん、ちょっと車を飛ばせばユニバーサルスタジオ、ナッツベリーファーム等のテーマパークには事欠かず、ニューポートビーチやハンティントンビーチ、大型ショッピングモールやアウトレットで買い物天国でもある。こんな”ザ・アメリカ”を満喫したい人にとって、ベストなロケーションと言えるだろう。
球場自体の完成度やクオリティーは昨今の新球場たちには到底かなわないかも知れないが、基本的な”ボールパーク”に必要とされるものは揃っている。
何よりLA特有のカラッとした空気、のどかな夕暮れの風景、熱狂的だが決して下品では無いファンが作りだす雰囲気が見事に融合し、球場全体をウェッサ~イな空気が包みこむ。何とも居心地のいい球場である。
まあ、ココがオレンジカウンティじゃなければランクインはしてないけどね!
2012年10月2日火曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第9位』
第9位/カウフマン・スタジアム
- ホーム :カンザスシティ・ロイヤルズ
- オープン:1973年
- デザイン:Kivett and Myers
- 収容人数:40,933人
「フットボール兼用スタジアム」建設ラッシュだった70年代において、しかもこの田舎街に、敢えて「野球専用球場」を建設した根性が単純にエラい。(NFLカンザスシティ・チーフスのホーム『アローヘッド・スタジアム』は球場と向かい合うように同じ敷地内に建設された。)
当時の流行で、開場当時は人工芝が敷き詰められていたが、96年に全面天然芝に貼り替えられ、この時点で”全米でも5つの指に入るクオリティーのボールパーク”との呼び声も高かった。
さらにカンザスシティは90年代以降一連の新球場建設ブームの火付け役となったHOK SPORT社(現POPULOUS社)がヘッドオフィスを構える地でもある。
ということで2009年からHOKによる大規模なリノベーションが施され、コンクリート造りで殺風景だった球場外観はガラス張りのクールな佇まいに生まれ変わり、おなじみの王冠型のビデオボードも世界最大級のLEDビジョンに取って替えられ、うす暗くて陰気くさかったコンコースも拡張されて明るくなった。
こうして少々クタビレ感のあった球場は見事「近代的ボールパーク」へと変貌を遂げ、めでたく30年ぶりに2012年度のオールスター開催地にも選ばれた。ほぼ同世代の「兼用スタジアム」が次々と姿を消していった中、「専用球場」を作った判断が後に生きた好例だと言えるだろう。
元々同市のシンボルでもある”噴水”が両外野上段スペースに施されていたが、リノベ後はレフト側にはクラブスペースが新設された為、ライト側のみ噴水が継承されている。特にナイター時にライトアップされた噴水は思わず見とれてしまう程美しいので、なかなかバカにできない。こういった遊び心のあるシカケを70年代に実現した点も大いに評価すべきだと思う。
皆さんはお忘れかと思うが、超鳴りもの入りでレッドソックスに入団した松坂大輔が公式戦デビューを果たしたのもこの球場。深夜に眠い目をこすってテレビ中継に釘づけになったのも今となってはいい思い出である。
少々話しはズレるが、カンザスシティはかつて二グロリーグの中心地としての役割を果たしており、特に地元チームの『カンザスシティ・モナークス』はドジャース入団前のジャッキー・ロビンソンや、伝説の2000勝投手、サチェル・ペイジらを擁し、リーグ屈指の実力・人気を誇っていた。
元々二グロリーグに関しては文献も多くないため、同市内にある全米唯一の『グロリーグ博物館』は必見である。(これも余談だが、モナークスで活躍していたロビンソンをドジャースにスカウトしたのは、あのジョージ・シスラーである)。
また博物館から数ブロック離れた場所には、かつてモナークスや、オークランドに移転する前のアスレチックスがホームにしていた『カンザスシティ・ミュニシパルスタジアム』の球場跡地が広がっており(今はただの野原だけど)、ココのベンチにしばらく腰掛け、往年のレジェンド達が躍動していた姿を瞑想し、思いにふけるのも良いだろう。(ここまで来ると相当の上級者か、頭おかしい人。)
かくして野球ファンとしての見識を広げるためには、めちゃくちゃ退屈な同地を訪れることも決してマイナスではないと思う。
カンザスシティには米国の地理重心、人口重心のほぼ中心に位置することから「Heart of America」というニックネームがあるが、ベースボールの過去と未来が共存するこの地には「Heart of Baseball」というニックネームさえ献上したいくらいである。
- ホーム :カンザスシティ・ロイヤルズ
- オープン:1973年
- デザイン:Kivett and Myers
- 収容人数:40,933人
「フットボール兼用スタジアム」建設ラッシュだった70年代において、しかもこの田舎街に、敢えて「野球専用球場」を建設した根性が単純にエラい。(NFLカンザスシティ・チーフスのホーム『アローヘッド・スタジアム』は球場と向かい合うように同じ敷地内に建設された。)
当時の流行で、開場当時は人工芝が敷き詰められていたが、96年に全面天然芝に貼り替えられ、この時点で”全米でも5つの指に入るクオリティーのボールパーク”との呼び声も高かった。
さらにカンザスシティは90年代以降一連の新球場建設ブームの火付け役となったHOK SPORT社(現POPULOUS社)がヘッドオフィスを構える地でもある。
ということで2009年からHOKによる大規模なリノベーションが施され、コンクリート造りで殺風景だった球場外観はガラス張りのクールな佇まいに生まれ変わり、おなじみの王冠型のビデオボードも世界最大級のLEDビジョンに取って替えられ、うす暗くて陰気くさかったコンコースも拡張されて明るくなった。
こうして少々クタビレ感のあった球場は見事「近代的ボールパーク」へと変貌を遂げ、めでたく30年ぶりに2012年度のオールスター開催地にも選ばれた。ほぼ同世代の「兼用スタジアム」が次々と姿を消していった中、「専用球場」を作った判断が後に生きた好例だと言えるだろう。
元々同市のシンボルでもある”噴水”が両外野上段スペースに施されていたが、リノベ後はレフト側にはクラブスペースが新設された為、ライト側のみ噴水が継承されている。特にナイター時にライトアップされた噴水は思わず見とれてしまう程美しいので、なかなかバカにできない。こういった遊び心のあるシカケを70年代に実現した点も大いに評価すべきだと思う。
皆さんはお忘れかと思うが、超鳴りもの入りでレッドソックスに入団した松坂大輔が公式戦デビューを果たしたのもこの球場。深夜に眠い目をこすってテレビ中継に釘づけになったのも今となってはいい思い出である。
少々話しはズレるが、カンザスシティはかつて二グロリーグの中心地としての役割を果たしており、特に地元チームの『カンザスシティ・モナークス』はドジャース入団前のジャッキー・ロビンソンや、伝説の2000勝投手、サチェル・ペイジらを擁し、リーグ屈指の実力・人気を誇っていた。
元々二グロリーグに関しては文献も多くないため、同市内にある全米唯一の『グロリーグ博物館』は必見である。(これも余談だが、モナークスで活躍していたロビンソンをドジャースにスカウトしたのは、あのジョージ・シスラーである)。
また博物館から数ブロック離れた場所には、かつてモナークスや、オークランドに移転する前のアスレチックスがホームにしていた『カンザスシティ・ミュニシパルスタジアム』の球場跡地が広がっており(今はただの野原だけど)、ココのベンチにしばらく腰掛け、往年のレジェンド達が躍動していた姿を瞑想し、思いにふけるのも良いだろう。(ここまで来ると相当の上級者か、頭おかしい人。)
かくして野球ファンとしての見識を広げるためには、めちゃくちゃ退屈な同地を訪れることも決してマイナスではないと思う。
カンザスシティには米国の地理重心、人口重心のほぼ中心に位置することから「Heart of America」というニックネームがあるが、ベースボールの過去と未来が共存するこの地には「Heart of Baseball」というニックネームさえ献上したいくらいである。
2012年9月27日木曜日
独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第10位』
第10位/オリオールパーク・アット・カムデンヤーズ
- ホーム :ボルチモア・オリオールズ
- オープン:1992年
- デザイン:HOK Sport (現Populous)
- 収容人数:45,971人
以降ココの成功にあやかろうと、同様の「ネオ・クラシック型ボールパーク(=古き良きボールパークの風情と最新設備を持ち合わせた野球専用球場)」建設ラッシュへと時代は大きくシフトして行く。。。
本案件で大成功をおさめた設計事務所の『HOK Sport社 (現Populous社)』は、そのブームの真っただ中で、いくつもの名作を生み出していくことになり、今や押しも押されぬ業界最大手へと成長を遂げた。今日のMLB全体の成功はHOK無くして成し遂げられなかったとさえ断言しても良いだろう。
球場のデザインはライト後方に隣接した元鉄道倉庫ビルを基調にまとめられ、球場の外壁やバックストップなど随所に同色調のレンガが施されている(倉庫内は改装され球団事務所やレストランが入居している)。
ただし、コンコースは現在主流のオープンタイプではなく、スタンドの後ろに隠れているタイプなのが唯一・最大の弱点といえる(神宮や甲子園と同じといえば分かりやすいか)。
バックスクリ―ン上部の『SUN紙』の電飾広告はオリオールズがヒットを打つとHが点灯し、エラーだとEが点灯するユニークな仕掛けになっているので、観戦の際には地味に注目されたい。
試合前には球場から徒歩圏内にあるベーブ・ルースの生家を見学すべし。だが、ボルチモアは全米でも有数に治安が悪い街なんで試合後はフラフラせずホテルに直帰するのが懸命である。
結局この球場の建設費がかさんだせいで当時の球団オーナーはチームの破産という状況に追い込まれ、開場当時オリオールズファンでごった返していた観客席は、今となってはフェンウェイパークでチケットを取りそこねたレッドソックスファンの溜まり場になっている。。。
と、開場から20年が経過した現在の状況は決してハッピーとは言えないかもしれないが、ココが球界に与えたインパクト、球場自体の美しさは今も色あせることは無く、本来はもっと上位ランクに位置するはずかもしれないが、文章の構成上10位に設定させてもらったことを関係各位にお詫びしたい。
- ホーム :ボルチモア・オリオールズ
- オープン:1992年
- デザイン:HOK Sport (現Populous)
- 収容人数:45,971人
観客席から手が届くほど近くて美しい天然芝のフィールド、左右非対称でカクカクしたフェンス形状、レンガと鉄骨を組み合わせたクラシックなデザイン。かつて「ボールパーク」と呼ばれた空間を現代に蘇らせたオリオールパークは、1990年代初頭においては全てが斬新だった。
1960~70年代に米国内で建設された多くの”スタジアム”は、無機質なコンクリートで覆われた外観、人工芝のフィールドに、場合によってはドームで密封されていた、いわゆる東京ドームのような「多目的施設」であった。
こういった個性の無い「箱モノ」たちに満足出来なかった当時の野球ファンや選手、球界関係者はたちまちオリオールパークの登場とともに、その魅力に取りつかれた。まさに現代版フィールド・オブ・ドリームスである。
こういった個性の無い「箱モノ」たちに満足出来なかった当時の野球ファンや選手、球界関係者はたちまちオリオールパークの登場とともに、その魅力に取りつかれた。まさに現代版フィールド・オブ・ドリームスである。
以降ココの成功にあやかろうと、同様の「ネオ・クラシック型ボールパーク(=古き良きボールパークの風情と最新設備を持ち合わせた野球専用球場)」建設ラッシュへと時代は大きくシフトして行く。。。
本案件で大成功をおさめた設計事務所の『HOK Sport社 (現Populous社)』は、そのブームの真っただ中で、いくつもの名作を生み出していくことになり、今や押しも押されぬ業界最大手へと成長を遂げた。今日のMLB全体の成功はHOK無くして成し遂げられなかったとさえ断言しても良いだろう。
球場のデザインはライト後方に隣接した元鉄道倉庫ビルを基調にまとめられ、球場の外壁やバックストップなど随所に同色調のレンガが施されている(倉庫内は改装され球団事務所やレストランが入居している)。
ただし、コンコースは現在主流のオープンタイプではなく、スタンドの後ろに隠れているタイプなのが唯一・最大の弱点といえる(神宮や甲子園と同じといえば分かりやすいか)。
バックスクリ―ン上部の『SUN紙』の電飾広告はオリオールズがヒットを打つとHが点灯し、エラーだとEが点灯するユニークな仕掛けになっているので、観戦の際には地味に注目されたい。
試合前には球場から徒歩圏内にあるベーブ・ルースの生家を見学すべし。だが、ボルチモアは全米でも有数に治安が悪い街なんで試合後はフラフラせずホテルに直帰するのが懸命である。
結局この球場の建設費がかさんだせいで当時の球団オーナーはチームの破産という状況に追い込まれ、開場当時オリオールズファンでごった返していた観客席は、今となってはフェンウェイパークでチケットを取りそこねたレッドソックスファンの溜まり場になっている。。。
と、開場から20年が経過した現在の状況は決してハッピーとは言えないかもしれないが、ココが球界に与えたインパクト、球場自体の美しさは今も色あせることは無く、本来はもっと上位ランクに位置するはずかもしれないが、文章の構成上10位に設定させてもらったことを関係各位にお詫びしたい。
2012年6月27日水曜日
ダルビッシュ「10勝」の裏側
ダルビッシュが26日のタイガース戦に登板し、6回2/3を4失点で切り抜け、見事10勝目をあげた。日本人投手によるオールスター前の10勝達成は、2008年の松坂大輔以来であり、ダルビッシュはMLBルーキーイヤーを順調に過ごしているように見える。
しかしながらこれまでの戦いぶりを見ていると、レンジャースの強力味方打線にかなり助けられているな~という印象も見受けられる。この点については恐らく多くの野球ファンも共感する部分ではないだろうか。
そこで今回は様々なデータからダルビッシュの実際の投球内容を分析し、メジャーのライバル先発投手の中での位置付けを考えてみたいと思う。
※尚、本文中の日付は全て米国時間、成績は今日現在のもの、比較対象はアメリカンリーグ(以下AL)の先発投手とする。
① 勝利数:10勝(4敗)
今日現在10勝はALトップの数字だが、クオリティスタート(以下『QS』:勝敗に関らず、先発投手が6回3失点以内に抑えた試合=いわゆる「先発投手が試合を作った」という指標)の観点から分析すると、今季のダルビッシュは15先発の内、QSは約半分の8回しか記録していない。
通常QSを記録したにも関らず、味方打線の援護に恵まれず負けた場合は「Tough Loss(ツイてない負け)」、逆にQSを記録出来なかったにも関らず、味方打線や相手投手の乱調等に助けられて勝ってしまった場合は「Cheap Win(安っぽい勝ち)」と言われているが、ダルビッシュの場合10勝4敗のうち、「Tough Loss」が2回、「Cheap Win」が4回記録されている(デビューしたマリナーズ戦なんてまさに「Cheap Win」の筆頭格だよね)。
QS率については8/15で53%なので、往々にして味方打線に助けられているという印象は間違っていないと思う。ちなみにALの主要先発投手40人のうち、QS率53%は最低の数字である。にも関らず勝利数はリーグ1位なのである。
例えばジェイク・ピービ(CWS)や、ジャスティン・バーランダー(DET)は今季13回のQSを記録し、QS率も80%を超えている。にも関らず、勝利数がピービ6勝、バーランダー8勝止まりなのである。ちなみに黒田はダルビッシュと同じ15回の先発機会で9回のQSを記録している為、当然QS率も60%とダルビッシュよりも高いが、勝利数は7にとどまっている。
② 奪三振数:106個
バーランダー:113個、シャーザー:107個(共にDET)の2人に続き、堂々のリーグ3位である。この数字はCCサバシア(NYY)やキング・ヘルナンデス(SEA)をも上回っており、このままローテーションを守り続けて行けばシーズン200奪三振も射程圏内である。さらに奪三振率(K/9)に関して言えば、10.01とリーグ2位の高水準を記録している(要は9イニング投げれば10個三振取りますよということ)。
近年のセイバーメトリクスの世界で、奪三振率は非常に重要視されている指標であるが(最も簡単・確実にアウトを取れる方法だから)、同様に『K/BB』(四球1つあたり三振をいくつ奪えるかという数値)も重要視されている。いかに「四球を与えず三振を奪えるか」という課題は投手の”完成度の高さ”を裏付ける数値であり、この点同僚のルイスは7.50(1四球に対して7.5三振を奪う)という驚異的な数値を叩きだしている一方、ダルビッシュは1.96(1四球に対して約2三振を奪う)と、リーグ34位/40人中に甘んじている。現状は「三振を沢山取るけど、四球も沢山出す」という評価である。それもそのはずで、ダルビッシュの与四球数50は今日現在リーグワーストの数字である。
③ WHIP:1.38
続いては米国でポピュラーに使用されている投手の新・指標『WHIP』を取り上げたい。『WHIP』とは「Walks plus Hits per Inning Pitched」の略で、要は「1イニングに何人の打者を出塁させたか」という数字である。
リリーフと先発投手では基準が異なるが、先発投手の場合、おおよそ1.00を切ると超一流のエース、1.20でローテの2~3番手級、1.40を割ると問題児。というレベルである。ダルビッシュの場合、1.38とほぼ問題児の領域に達しており(毎回約1.4人を出塁させている計算)、AL全体でも下から2番目の成績である。
一方先述のピービ、バーランダーはいずれも1.00を切っており、ノーヒッターを達成したジェレッド・ウィ―バー(LAA)に関してはリーグトップの0.91を記録している。レンジャースの中ではこちらもコルビー・ルイスがチームトップの1.08を記録しており、さすがローテ1枚目の安定感と言わざるを得ない。
④ 被OPS:0.678
打者の能力を測る上で近年『OPS』(On-base plus Slugging: 出塁率+長打率)の重要性が唱えられている事は皆さん既にご承知の通りだが、コレを投手主体の数値『被OPS』として見た場合、ダルビッシュの0.678はリーグ12位の好数値である。
打者の能力をOPSで測る場合、0.900を超えると超一流スラッガー(余談だがベーブ・ルースの生涯通算OPSは1.164である)、0.800を超えると一流、0.700を超えると普通、逆に割り込むと平均以下となる。
つまり、今季ダルビッシュと対戦した打者はリーグ平均以下の数字(0.678)に抑え込まれているという事である。しかも、上記の通り今季のダルビッシュはリーグワーストの与四球数である。つまり四球で沢山出塁を許しているにもかかわらず、OPSがリーグ12位に留まっていると言う事は、いかに「打たれていないか」という事に繋がるのだ。事実ダルビッシュの被打率は0.228でリーグ8位、被長打率も0.348でリーグ10位、と共にリーグで10番目以内に「単打も長打も打たれにくい投手」であるという事が言える。
⑤ 総評
<ポイント1> 勝利数は見事だが、味方の強力打線に助けられている部分は否定できない。
<ポイント2> 奪三振数・率も見事だが、与四球の多さ、K/BBの悪さは他の一流ピッチャーと比較できるレベルでは無い。
<ポイント3> 与四球で自らの投球を苦しめているものの、リーグ屈指の「打たれにくい投手」であることが言える。与ホームラン数8もリーグ随一の高水準。
こんなことは毎回中継を見ていれば言うまでもない事なのだが、改めて細かく数字を追いかけて浮き彫りになった事実である。本投稿を通してダルビッシュの成績にケチを付けるつもりもないし、むしろ今年の僕は熱狂的な「ダルビッシュマニア」の一人であると考えている。しかしながら上記数字を見る限り、10勝4敗という好成績とは裏腹に、まだまだリーグを代表する他のエースピッチャーとは比較にならない内容であることが裏付けられた。
一方で、数時間の雨天中断後に再度登板を直訴したり、度々リリーフ投手陣を気遣う姿勢は『男気度』として上記数値に反映されない部分である。雨天中止の際には、相手先発投手だった(元レンジャース・エースの)CJウィルソンは中断後早々と降板したが、テキサスのファンやチームメイトがCJがチームから出て行って、代わりにダルビッシュが来てくれて本当に良かったと思った瞬間だったに違いない。
また、元来の投手としてのマウンド上での適応力の高さも去ることながら、あまり得意ではないと言われている英会話で積極的にチームメイトとコミュニケーションをとっている姿にも今後の成長、順応の可能性を大きく感じる。
現状では「期待通りの良い投手」というレベルだが、今後(来季とは言わず後半戦にでも)「与四球数」を改善するだけで、ウィークポイントとされている指標が劇的に改善され、ダルビッシュは名実ともに「球界を代表する投手」になりうるポテンシャルを十二分に秘めていると今更ながら結論付けたい。まだ25歳だしね。
このペースで行くと、僕がシーズン前に上げた「4つの指標」は軽々クリア出来そうな気配で、何かとイチャモン付けたい気分なので今回は筆を執ったまでである。
また、昨今のサイ・ヤング賞の査定には上記の指標が大きく影響してくる実績があるため、コアな野球ファンとしては”ウワベだけの数字”に踊らされない、「数字の裏側」を見抜く根性も供えておきたい所である。
しかしながらこれまでの戦いぶりを見ていると、レンジャースの強力味方打線にかなり助けられているな~という印象も見受けられる。この点については恐らく多くの野球ファンも共感する部分ではないだろうか。
そこで今回は様々なデータからダルビッシュの実際の投球内容を分析し、メジャーのライバル先発投手の中での位置付けを考えてみたいと思う。
※尚、本文中の日付は全て米国時間、成績は今日現在のもの、比較対象はアメリカンリーグ(以下AL)の先発投手とする。
① 勝利数:10勝(4敗)
今日現在10勝はALトップの数字だが、クオリティスタート(以下『QS』:勝敗に関らず、先発投手が6回3失点以内に抑えた試合=いわゆる「先発投手が試合を作った」という指標)の観点から分析すると、今季のダルビッシュは15先発の内、QSは約半分の8回しか記録していない。
通常QSを記録したにも関らず、味方打線の援護に恵まれず負けた場合は「Tough Loss(ツイてない負け)」、逆にQSを記録出来なかったにも関らず、味方打線や相手投手の乱調等に助けられて勝ってしまった場合は「Cheap Win(安っぽい勝ち)」と言われているが、ダルビッシュの場合10勝4敗のうち、「Tough Loss」が2回、「Cheap Win」が4回記録されている(デビューしたマリナーズ戦なんてまさに「Cheap Win」の筆頭格だよね)。
QS率については8/15で53%なので、往々にして味方打線に助けられているという印象は間違っていないと思う。ちなみにALの主要先発投手40人のうち、QS率53%は最低の数字である。にも関らず勝利数はリーグ1位なのである。
例えばジェイク・ピービ(CWS)や、ジャスティン・バーランダー(DET)は今季13回のQSを記録し、QS率も80%を超えている。にも関らず、勝利数がピービ6勝、バーランダー8勝止まりなのである。ちなみに黒田はダルビッシュと同じ15回の先発機会で9回のQSを記録している為、当然QS率も60%とダルビッシュよりも高いが、勝利数は7にとどまっている。
② 奪三振数:106個
バーランダー:113個、シャーザー:107個(共にDET)の2人に続き、堂々のリーグ3位である。この数字はCCサバシア(NYY)やキング・ヘルナンデス(SEA)をも上回っており、このままローテーションを守り続けて行けばシーズン200奪三振も射程圏内である。さらに奪三振率(K/9)に関して言えば、10.01とリーグ2位の高水準を記録している(要は9イニング投げれば10個三振取りますよということ)。
近年のセイバーメトリクスの世界で、奪三振率は非常に重要視されている指標であるが(最も簡単・確実にアウトを取れる方法だから)、同様に『K/BB』(四球1つあたり三振をいくつ奪えるかという数値)も重要視されている。いかに「四球を与えず三振を奪えるか」という課題は投手の”完成度の高さ”を裏付ける数値であり、この点同僚のルイスは7.50(1四球に対して7.5三振を奪う)という驚異的な数値を叩きだしている一方、ダルビッシュは1.96(1四球に対して約2三振を奪う)と、リーグ34位/40人中に甘んじている。現状は「三振を沢山取るけど、四球も沢山出す」という評価である。それもそのはずで、ダルビッシュの与四球数50は今日現在リーグワーストの数字である。
③ WHIP:1.38
続いては米国でポピュラーに使用されている投手の新・指標『WHIP』を取り上げたい。『WHIP』とは「Walks plus Hits per Inning Pitched」の略で、要は「1イニングに何人の打者を出塁させたか」という数字である。
リリーフと先発投手では基準が異なるが、先発投手の場合、おおよそ1.00を切ると超一流のエース、1.20でローテの2~3番手級、1.40を割ると問題児。というレベルである。ダルビッシュの場合、1.38とほぼ問題児の領域に達しており(毎回約1.4人を出塁させている計算)、AL全体でも下から2番目の成績である。
一方先述のピービ、バーランダーはいずれも1.00を切っており、ノーヒッターを達成したジェレッド・ウィ―バー(LAA)に関してはリーグトップの0.91を記録している。レンジャースの中ではこちらもコルビー・ルイスがチームトップの1.08を記録しており、さすがローテ1枚目の安定感と言わざるを得ない。
④ 被OPS:0.678
打者の能力を測る上で近年『OPS』(On-base plus Slugging: 出塁率+長打率)の重要性が唱えられている事は皆さん既にご承知の通りだが、コレを投手主体の数値『被OPS』として見た場合、ダルビッシュの0.678はリーグ12位の好数値である。
打者の能力をOPSで測る場合、0.900を超えると超一流スラッガー(余談だがベーブ・ルースの生涯通算OPSは1.164である)、0.800を超えると一流、0.700を超えると普通、逆に割り込むと平均以下となる。
つまり、今季ダルビッシュと対戦した打者はリーグ平均以下の数字(0.678)に抑え込まれているという事である。しかも、上記の通り今季のダルビッシュはリーグワーストの与四球数である。つまり四球で沢山出塁を許しているにもかかわらず、OPSがリーグ12位に留まっていると言う事は、いかに「打たれていないか」という事に繋がるのだ。事実ダルビッシュの被打率は0.228でリーグ8位、被長打率も0.348でリーグ10位、と共にリーグで10番目以内に「単打も長打も打たれにくい投手」であるという事が言える。
⑤ 総評
<ポイント1> 勝利数は見事だが、味方の強力打線に助けられている部分は否定できない。
<ポイント2> 奪三振数・率も見事だが、与四球の多さ、K/BBの悪さは他の一流ピッチャーと比較できるレベルでは無い。
<ポイント3> 与四球で自らの投球を苦しめているものの、リーグ屈指の「打たれにくい投手」であることが言える。与ホームラン数8もリーグ随一の高水準。
こんなことは毎回中継を見ていれば言うまでもない事なのだが、改めて細かく数字を追いかけて浮き彫りになった事実である。本投稿を通してダルビッシュの成績にケチを付けるつもりもないし、むしろ今年の僕は熱狂的な「ダルビッシュマニア」の一人であると考えている。しかしながら上記数字を見る限り、10勝4敗という好成績とは裏腹に、まだまだリーグを代表する他のエースピッチャーとは比較にならない内容であることが裏付けられた。
一方で、数時間の雨天中断後に再度登板を直訴したり、度々リリーフ投手陣を気遣う姿勢は『男気度』として上記数値に反映されない部分である。雨天中止の際には、相手先発投手だった(元レンジャース・エースの)CJウィルソンは中断後早々と降板したが、テキサスのファンやチームメイトがCJがチームから出て行って、代わりにダルビッシュが来てくれて本当に良かったと思った瞬間だったに違いない。
また、元来の投手としてのマウンド上での適応力の高さも去ることながら、あまり得意ではないと言われている英会話で積極的にチームメイトとコミュニケーションをとっている姿にも今後の成長、順応の可能性を大きく感じる。
現状では「期待通りの良い投手」というレベルだが、今後(来季とは言わず後半戦にでも)「与四球数」を改善するだけで、ウィークポイントとされている指標が劇的に改善され、ダルビッシュは名実ともに「球界を代表する投手」になりうるポテンシャルを十二分に秘めていると今更ながら結論付けたい。まだ25歳だしね。
このペースで行くと、僕がシーズン前に上げた「4つの指標」は軽々クリア出来そうな気配で、何かとイチャモン付けたい気分なので今回は筆を執ったまでである。
また、昨今のサイ・ヤング賞の査定には上記の指標が大きく影響してくる実績があるため、コアな野球ファンとしては”ウワベだけの数字”に踊らされない、「数字の裏側」を見抜く根性も供えておきたい所である。
2012年5月1日火曜日
ダーラムと映画とタバコのハナシ
メジャーリーグも開幕から1ヵ月が経とうとしていたまさに今日、ヒデキのレイズとのマイナー契約締結のニュースが飛び込んできた。
今後チーム内で激しい競争を強いられることは想像に難くないが、好調レイズの一員として今後プレーオフを目指せる環境に身を置ける意義は非常に大きいと思う。また、若い選手が中心のレイズにとっても松井の勝負強い打撃と百戦錬磨の経験は、シーズンが佳境に差し掛かるほど頼られることとなるだろう。球界一のインテリ監督、ジョー・マドンの存在も心強い。
話しは変わるが、35歳のおっさんがメジャーデビューを果たす『オールド・ルーキー』という映画もご記憶の方もいるだろう。ロードサイドのスピードレーダーで球速表示されるシーンが印象的な映画だったが、劇中にも主人公のジム・モリスがマイナーからメジャーにコールアップされるシーンがあり、彼が最後に所属していたのもこのダーラム・ブルズである。
今後チーム内で激しい競争を強いられることは想像に難くないが、好調レイズの一員として今後プレーオフを目指せる環境に身を置ける意義は非常に大きいと思う。また、若い選手が中心のレイズにとっても松井の勝負強い打撃と百戦錬磨の経験は、シーズンが佳境に差し掛かるほど頼られることとなるだろう。球界一のインテリ監督、ジョー・マドンの存在も心強い。
但し、今年はキャンプも練習試合もまだ経験していないヒデキは、暫くの間レイズ傘下のトリプルA『ダーラム・ブルズ』で世話になる事が既に決定している。このチーム、日本人にはなじみが薄いかもしれないが、米国内では最も有名なマイナーチームの一つと言われている存在なのである。
理由は1988年に公開されたケビン・コスナーの主演映画『BULL DURHAM(邦題:さよならゲーム)』の舞台として取り上げられた事による。同作は同じくケビン・コスナー主演でかの有名な『フィールド・オブ・ドリームズ』の一年前に公開された、マイナーリーガーの希望と哀愁を描いたB級映画だが、本作のヒットにより当時ブルズの名も一躍ネイションワイドのものとなった。
ちなみに劇中で描かれていたブルズはシングルAのマイナーチーム(しかもブレーブス傘下)だったが、映画の影響で人気が出てしまったチームに観客が押し寄せ、シングルAのキャパシティでは足らなくなり、新球場の建設と共に1998年にトリプルAへの昇格を果たしたのだ。ノースカロライナの田舎チームが、他の貧乏マイナーチームにとって垂涎のサクセスストーリーをやってのけたのである。その時にアフィリエイトもブレーブスからレイズ(当時のデビルレイズ)に移行したのだ。
さてこのブルズだがチームの歴史は長く、タバコ会社の野球チームとして1902年に創設されたことが起源となっている。ちなみにヤンキースやレッドソックスが創設されたのが1901年であるからほぼ同等の歴史を持つと言うわけだ。チーム名は『ブル・ダーラム・タバコ社』の社名から、ダーラム・ブルズと呼ばれるようになった。
元々ノースカロライナはタバコの名産地として知られており、今もキャメルやKOOL等のブランドでおなじみの『RJレイノルズタバコ社』も隣町のウィンストン・セーラムに本拠地を置いている。(ブル・ダーラム・タバコ社はその後吸収、合併を繰り返し会社自体は現存しないものの、2003年に当時の工場が復元され今もダーラムの観光名所となっている)。
本拠地のダーラム・アスレチック・パークは、ホームランを打つと煙が出るイナたい仕掛けの牛の形をしたブル・ダーラム・タバコ社の広告が有名だったが(劇中にも登場する)、現在は球場も牛も2代目となっている。(先代は旧球場と共に現役を退き、今は新球場のコンコース内でひっそりと余生を過ごしている)
実は「ブルペン」の言葉の由来は「BULL/PEN=牛の囲い」と解釈するのが普通とされているが、このブル・ダーラム社の牛の形をした広告が投球練習場の後ろにあったから、それにちなんで投球練習場自体が「ブルペン」と呼ばれるようになったという説もいまだ有力なのである。この辺はちょっとした野球ウンチクとして押さえておきたい。
尚、現在2代目の牛が鎮座している同球場のレフト側のフェンスは異様に高く設定されており、本場ボストンのアレをそのまんまパクった「ブルーモンスター」と呼ばれている(呼ばせている)。
話しは変わるが、35歳のおっさんがメジャーデビューを果たす『オールド・ルーキー』という映画もご記憶の方もいるだろう。ロードサイドのスピードレーダーで球速表示されるシーンが印象的な映画だったが、劇中にも主人公のジム・モリスがマイナーからメジャーにコールアップされるシーンがあり、彼が最後に所属していたのもこのダーラム・ブルズである。
またダーラムはアメリカの野球のナショナルチームの本拠地としても機能しているため、日米大学野球選手権なんてのもココの球場で行われる事になっている(隔年で)。斎藤祐樹がダーラム・アスレチック・パークのマウンドに登板した記憶がある人は相当の野球オタクに違いない。
まあ、そんなどうでもいい事を考えながらヒデキの活躍と、一日も早いメジャー昇格を願おうではないか。
2012年4月6日金曜日
2012年MLB 5つのトピック
いやいや、気づけばブログへの投稿なんて1年ぶりである。
いよいよ2012年度のメジャーリーグも本格的な開幕となったが、今年個人的に注目している5つのトピックに沿ってハナシを進めて行きたい。酒の席でのちょっとしたウンチクにでもなれば幸いである。尚、本文に記載されている数字や人名など、詳細については一切責任を持たない(持てない)。
1.ダルビッシュのデビューとその他の注目ルーキーについて
やはり今年の話題はダルビッシュで持ち切りだろう。酷なようだが、彼の活躍は自分自身の評価はもちろん、今後渡米する日本人選手の運命(特に投手の)を握っていると言っても過言ではない。それくらいのインパクトがあると思う。
よく「ダルビッシュは活躍すると思う?」なんて質問を受けるが、そういう意味では「活躍してもらわないと困る」のだ。
しかしながら今シーズンを終えた時に、何をもって「ダルビッシュは活躍した」と言えるのだろうか??日本人(特にメディア)は、やたら「勝ち星」にこだわる傾向にあるが、正直自軍の打線の援護やリリーフ陣の結果に左右されやすい「勝ち星」という指標だけでは評価基準は分からない。そこで、、、
■ 年間通してローテを守る事→「200投球回数」の達成
■ 上記を達成すれば自ずと「200奪三振」が見えてくるだろう。
■ 日本で1点台だった防御率は、3.50以下で十分。
■ 上記を踏まえた上で、最終的な勝ち星は15勝程度で十分。
このうち1つも達成できなければ期待外れ。2つを達成すれば上出来。3つを達成すればサイ・ヤング賞(もしろん新人王も)の可能性も出てくると思う。皆さんもちょっとした指標にしてもらえると幸いである。
またその他の注目ルーキーは、ナショナルズの神童ことブライス・ハーパー、エンゼルスのマイク・トラウト、先日も来日し豪快なHRを飛ばしたアスレチックスのヨエニス・セスペデス、同じく来日したマリナーズのヘスス・モンテロ、昨シーズン終了後に早くもレイズと長期契約を結ばれた左腕、マット・ムーアなどがあげられる。是非ダルと併せて注目頂きたい。
一方で既に世界一経験のあるヒデキは遂に所属が決まらないまま開幕を迎えてしまった。しかし彼一人マーケットに取り残されているのであればまだしも、ジョニー・デーモン、ウラジミール・ゲレーロ、マグニオ・オルドネスと4、5年前のオールスター級のビックネームがまだまだ未契約マーケットにゴロゴロいる。
昨年は長年一線で活躍を続けてきた、ジェイソン・バリテック、ティム・ウェイクフィールド、ホルヘ・ポサダ等の引退が非常に印象的だったが、多くのチームで若返り政策が進められている中、彼らベテラン勢にはもうひと花咲かせてもらいたいのだが。。。処遇はいかに。
3.新生マイアミ・マーリンズ、NL東地区とワイルドカードの増枠
今年注目のチームは?と聞かれれば真っ先にマイアミ・マーリンズと答えたい。長年閑古鳥が鳴き続けていたフットボール兼用スタジアムに別れを告げ、今年は念願の自前のボールパークを手に入れた。球団名もフロリダ・マーリンズからマイアミ・マーリンズに改称し、チームのユニフォーム・ロゴも一新された(業界内では悪趣味と評判が悪いが、僕的にはトロピカルな雰囲気で良いんじゃないかと思うけど。)
マーリンズ・ボールパークはマイアミ特有のスコールから試合を守るため、天井はスライド式の開閉タイプ、外野にはおネエちゃんが戯れる為のお約束のプール、バックネット裏には熱帯魚が泳ぐ水槽が施され、既にボールパーク界の独占禁止法に抵触しそうなPOPULUS社(旧HOK Sports)のエッセンスが随所に盛り込まれている球界一のゴキゲンパークとなっている。
こうしたハード面の整備によって収入面でも強気に出たオーナーは常軌を逸した?と言われるほどの大盤振る舞いに出て、オフには大物選手を次々獲得して行った。しかもメンツが濃すぎる。
ホセ・レイエス、マーク・バーリー、ヒース・ベルとこの辺までは良いが、セオ・エプスタインに「彼との信頼関係構築は不可能」と断言された球界一のキレ男カルロス・ザンブラーノ、無気力プレーのハンリー・ラミレス、ツイッターでの奔放発言が相次ぐローガン・モリソン、監督にはホワイトソックスからオジー・ギーエンを迎え入れ、「問題児の特別編入クラス」が出来上がった。
結果は大凶に出るか、大吉に出るか、どっちかになると思う。いずれにしろ今年のマーリンズは2004年に世界一に輝いたレッドソックスより濃いメンツが集まっている。
ある米国人の地元記者が、この「表裏一体のギャンブル性」こそが非常に「マイアミ的」と語っていたがまさにその通りだと思う。大富豪の別荘が立ち並ぶ一方、犯罪がまん延するスラムが同居している街こそがマイアミなのである。今シーズンはこのスリルに酔いしれたいと思う。
マーリンズの所属するナショナルリーグ東地区は、元々「世界最高の先発投手陣」を揃えるフィリーズが盤石であったが、このマーリンズの大補強や、長年低迷を続けていたがようやく戦力が整ってきた(トミージョン明けの怪腕ストラスバーグと、メジャーデビュー寸前の神童ハーパーを擁する)ナショナルズの台頭が期待されており、目が離せない。
また、今年からワイルドカードが2枠に増枠された事も大きな意味を持つだろう。これだけ力のあるチームが同リーグ、同地区内に固まると、優勝チームと、ワイルドカードチームが同地区から2チーム進出し、ワンゲームプレーオフを行うというシナリオも考えられなくはない。
実は全く同じ事がアメリカンリーグの東地区にも言えて、この新ルールの恩恵を最も受けるのはトロント・ブルージェイズではないかと言われている。過去5年間でアメリカンリーグのワイルドカードは全て東地区から進出しており、また過去5年間のワイルドカードが上位から2チーム選出されていたとすると、10チーム中8チームがア・リーグ東地区のチームだったというデータがあるのだ。それがまさにブルージェイズであり、レイズ、レッドソックスなのである。
4.大補強のエンゼルス、タイガース、レンジャース、マーリンズとヤンキースの静すぎるオフ
オフの主役は上記の通り大枚をはたいて次々大物を獲得して行ったマーリンズであり、プーホールズを10年2億5400万円で獲得したエンゼルスであり、メジャーリーグでまだ1球も投げていないダルビッシュに1億ドルをつぎ込み獲得したレンジャースであり、プリンス・フィルダーを獲得し、ミゲル・カブレラと球界屈指のクリーンナップを形成したタイガースであった。
一方ヤンキースの動向はあまりにも静かだったが、プライベートで愛人問題に揺れたキャッシュマンは非常に実のあるディールを行った。唯一最大の懸念だった先発投手陣に一晩で黒田とマイケル・ピネイダを加えると言う離れ業をやってのけ、サバシア、ノバ、ガルシア、ヒューズもしくは引退撤回のペティットという屈指の先発を形成させた。(また長年不安定な結果に悩まされ続けたAJバーネットをパイレーツに放出)
最近の傾向を見ていると、昨年のレッドソックスを筆頭に、「大補強したチームは意外とコケる」というジンクスが個人的には続いており、オフの主役が必ずしもポストシーズンの主役とは限らないという説を今年も唱えてみようかなと思っている。ヤンキースが好きなわけではない(むしろ大嫌いである)が、もしかすると今年の世界一は、、、という事になるかもしれない。
5.2012年注目選手
最後に個人的な注目選手を上記以外で5人列記しよう(上記で言及された選手は全員注目)。
まずは不運なケガから復帰を目指すジャイアンツのバスター・ポージー。個人的には今後10年間のメジャーリーグは彼に引っ張っていってもらいたいと考えている。
「常に人生最後の試合のようなプレーをする」とフランコーナ前監督を唸らせたレッドソックスのダスティン・ペドロイアも頑張ってもらいたい。彼こそが真のメジャーリーガーである。
開幕戦で来日し、日本のファンにも多少名前の売れたマリナーズのダスティン・アクリーも応援している。柔らかいスイング、コンタクトの強さはチェイス・アトリーをしのぐポテンシャルを持っている。ただし打席に入るテーマソングがカントリーミュージックなのは良くない。あれでは気合いが入らないではないか。
昨年のナ・リーグMVPから薬物疑惑のブルワーズ、ライアン・ブラウンも目が離せない。異議申し立てにより出場停止処分は解かれたものの、彼自身の潔白が証明されたわけではない(尿検査のプロセスの不備が指摘されただけ)。潔白を証明する唯一の方法は今年や来年以降も誰もが認める数字を残し続ける事だけである。
あと一人は迷うが松坂大輔を押したい。松坂もイチロー同様今季が契約最終年度。ダルビッシュフィーバーに沸く昨今、5年前の自分の姿と重ね合わせ彼は何を思っているだろう。今季の投球内容、ケガの回復状況によってはレッドソックスへ残留か(個人的に可能性は低いと思う)、他チームへの移籍か、日本に帰国か、いずれかのオプションを選択することになるだろう。まだまだ老けこむには早すぎる、同期の出世頭として頑張ってもらいたい!!
いよいよ2012年度のメジャーリーグも本格的な開幕となったが、今年個人的に注目している5つのトピックに沿ってハナシを進めて行きたい。酒の席でのちょっとしたウンチクにでもなれば幸いである。尚、本文に記載されている数字や人名など、詳細については一切責任を持たない(持てない)。
1.ダルビッシュのデビューとその他の注目ルーキーについて
やはり今年の話題はダルビッシュで持ち切りだろう。酷なようだが、彼の活躍は自分自身の評価はもちろん、今後渡米する日本人選手の運命(特に投手の)を握っていると言っても過言ではない。それくらいのインパクトがあると思う。
よく「ダルビッシュは活躍すると思う?」なんて質問を受けるが、そういう意味では「活躍してもらわないと困る」のだ。
しかしながら今シーズンを終えた時に、何をもって「ダルビッシュは活躍した」と言えるのだろうか??日本人(特にメディア)は、やたら「勝ち星」にこだわる傾向にあるが、正直自軍の打線の援護やリリーフ陣の結果に左右されやすい「勝ち星」という指標だけでは評価基準は分からない。そこで、、、
■ 年間通してローテを守る事→「200投球回数」の達成
■ 上記を達成すれば自ずと「200奪三振」が見えてくるだろう。
■ 日本で1点台だった防御率は、3.50以下で十分。
■ 上記を踏まえた上で、最終的な勝ち星は15勝程度で十分。
このうち1つも達成できなければ期待外れ。2つを達成すれば上出来。3つを達成すればサイ・ヤング賞(もしろん新人王も)の可能性も出てくると思う。皆さんもちょっとした指標にしてもらえると幸いである。
またその他の注目ルーキーは、ナショナルズの神童ことブライス・ハーパー、エンゼルスのマイク・トラウト、先日も来日し豪快なHRを飛ばしたアスレチックスのヨエニス・セスペデス、同じく来日したマリナーズのヘスス・モンテロ、昨シーズン終了後に早くもレイズと長期契約を結ばれた左腕、マット・ムーアなどがあげられる。是非ダルと併せて注目頂きたい。
2.イチローの契約更新、松井やその他ベテラン勢の去就
ご存じの通り今シーズン終了時でイチローとマリナーズの5年契約が切れる事になる。来季以降の更新についても全く問題なし。と思っていたが意外にひと悶着がありそうなので注目したい。前回契約更新の2007年時はシーズン途中に早々に5年契約での延長を発表したが、今回はシーズン終了後まで契約交渉は持ち越しとの見解でチームもイチローも一致している。
チームにしてみれば40歳を間近に迎え、毎年成績低下を懸念されている選手に1,700万ドルは高価すぎる。となると契約年数や年棒でかなり厳しい提示になるのではと予想する(天下のジーターですらそうだったんだからね)。
一方イチロー自身も10年以上一度のプレーオフ進出が無く、体たらくを続けるマリナーズに嫌気がさしている可能性もある。少なくとも2007年当時ではチームに若干の可能性を感じていたかもしれないが、最低でも向こう数年はマリナーズがプレーオフに進出出来る可能性は極めて低いと言える。
つまりマリナーズ残留=現役中でのプレーオフへの望みを無くす。少々大げさだがこういう事になる。個人成績で頂点を極めた男であれば、一度はプレーオフ、いやワールドチャンピオンの味を味わってみたいと考えるのは普通ではないだろうか?
一方で既に世界一経験のあるヒデキは遂に所属が決まらないまま開幕を迎えてしまった。しかし彼一人マーケットに取り残されているのであればまだしも、ジョニー・デーモン、ウラジミール・ゲレーロ、マグニオ・オルドネスと4、5年前のオールスター級のビックネームがまだまだ未契約マーケットにゴロゴロいる。
昨年は長年一線で活躍を続けてきた、ジェイソン・バリテック、ティム・ウェイクフィールド、ホルヘ・ポサダ等の引退が非常に印象的だったが、多くのチームで若返り政策が進められている中、彼らベテラン勢にはもうひと花咲かせてもらいたいのだが。。。処遇はいかに。
3.新生マイアミ・マーリンズ、NL東地区とワイルドカードの増枠
今年注目のチームは?と聞かれれば真っ先にマイアミ・マーリンズと答えたい。長年閑古鳥が鳴き続けていたフットボール兼用スタジアムに別れを告げ、今年は念願の自前のボールパークを手に入れた。球団名もフロリダ・マーリンズからマイアミ・マーリンズに改称し、チームのユニフォーム・ロゴも一新された(業界内では悪趣味と評判が悪いが、僕的にはトロピカルな雰囲気で良いんじゃないかと思うけど。)
マーリンズ・ボールパークはマイアミ特有のスコールから試合を守るため、天井はスライド式の開閉タイプ、外野にはおネエちゃんが戯れる為のお約束のプール、バックネット裏には熱帯魚が泳ぐ水槽が施され、既にボールパーク界の独占禁止法に抵触しそうなPOPULUS社(旧HOK Sports)のエッセンスが随所に盛り込まれている球界一のゴキゲンパークとなっている。
こうしたハード面の整備によって収入面でも強気に出たオーナーは常軌を逸した?と言われるほどの大盤振る舞いに出て、オフには大物選手を次々獲得して行った。しかもメンツが濃すぎる。
ホセ・レイエス、マーク・バーリー、ヒース・ベルとこの辺までは良いが、セオ・エプスタインに「彼との信頼関係構築は不可能」と断言された球界一のキレ男カルロス・ザンブラーノ、無気力プレーのハンリー・ラミレス、ツイッターでの奔放発言が相次ぐローガン・モリソン、監督にはホワイトソックスからオジー・ギーエンを迎え入れ、「問題児の特別編入クラス」が出来上がった。
結果は大凶に出るか、大吉に出るか、どっちかになると思う。いずれにしろ今年のマーリンズは2004年に世界一に輝いたレッドソックスより濃いメンツが集まっている。
ある米国人の地元記者が、この「表裏一体のギャンブル性」こそが非常に「マイアミ的」と語っていたがまさにその通りだと思う。大富豪の別荘が立ち並ぶ一方、犯罪がまん延するスラムが同居している街こそがマイアミなのである。今シーズンはこのスリルに酔いしれたいと思う。
マーリンズの所属するナショナルリーグ東地区は、元々「世界最高の先発投手陣」を揃えるフィリーズが盤石であったが、このマーリンズの大補強や、長年低迷を続けていたがようやく戦力が整ってきた(トミージョン明けの怪腕ストラスバーグと、メジャーデビュー寸前の神童ハーパーを擁する)ナショナルズの台頭が期待されており、目が離せない。
また、今年からワイルドカードが2枠に増枠された事も大きな意味を持つだろう。これだけ力のあるチームが同リーグ、同地区内に固まると、優勝チームと、ワイルドカードチームが同地区から2チーム進出し、ワンゲームプレーオフを行うというシナリオも考えられなくはない。
実は全く同じ事がアメリカンリーグの東地区にも言えて、この新ルールの恩恵を最も受けるのはトロント・ブルージェイズではないかと言われている。過去5年間でアメリカンリーグのワイルドカードは全て東地区から進出しており、また過去5年間のワイルドカードが上位から2チーム選出されていたとすると、10チーム中8チームがア・リーグ東地区のチームだったというデータがあるのだ。それがまさにブルージェイズであり、レイズ、レッドソックスなのである。
4.大補強のエンゼルス、タイガース、レンジャース、マーリンズとヤンキースの静すぎるオフ
オフの主役は上記の通り大枚をはたいて次々大物を獲得して行ったマーリンズであり、プーホールズを10年2億5400万円で獲得したエンゼルスであり、メジャーリーグでまだ1球も投げていないダルビッシュに1億ドルをつぎ込み獲得したレンジャースであり、プリンス・フィルダーを獲得し、ミゲル・カブレラと球界屈指のクリーンナップを形成したタイガースであった。
一方ヤンキースの動向はあまりにも静かだったが、プライベートで愛人問題に揺れたキャッシュマンは非常に実のあるディールを行った。唯一最大の懸念だった先発投手陣に一晩で黒田とマイケル・ピネイダを加えると言う離れ業をやってのけ、サバシア、ノバ、ガルシア、ヒューズもしくは引退撤回のペティットという屈指の先発を形成させた。(また長年不安定な結果に悩まされ続けたAJバーネットをパイレーツに放出)
最近の傾向を見ていると、昨年のレッドソックスを筆頭に、「大補強したチームは意外とコケる」というジンクスが個人的には続いており、オフの主役が必ずしもポストシーズンの主役とは限らないという説を今年も唱えてみようかなと思っている。ヤンキースが好きなわけではない(むしろ大嫌いである)が、もしかすると今年の世界一は、、、という事になるかもしれない。
5.2012年注目選手
最後に個人的な注目選手を上記以外で5人列記しよう(上記で言及された選手は全員注目)。
まずは不運なケガから復帰を目指すジャイアンツのバスター・ポージー。個人的には今後10年間のメジャーリーグは彼に引っ張っていってもらいたいと考えている。
「常に人生最後の試合のようなプレーをする」とフランコーナ前監督を唸らせたレッドソックスのダスティン・ペドロイアも頑張ってもらいたい。彼こそが真のメジャーリーガーである。
開幕戦で来日し、日本のファンにも多少名前の売れたマリナーズのダスティン・アクリーも応援している。柔らかいスイング、コンタクトの強さはチェイス・アトリーをしのぐポテンシャルを持っている。ただし打席に入るテーマソングがカントリーミュージックなのは良くない。あれでは気合いが入らないではないか。
昨年のナ・リーグMVPから薬物疑惑のブルワーズ、ライアン・ブラウンも目が離せない。異議申し立てにより出場停止処分は解かれたものの、彼自身の潔白が証明されたわけではない(尿検査のプロセスの不備が指摘されただけ)。潔白を証明する唯一の方法は今年や来年以降も誰もが認める数字を残し続ける事だけである。
あと一人は迷うが松坂大輔を押したい。松坂もイチロー同様今季が契約最終年度。ダルビッシュフィーバーに沸く昨今、5年前の自分の姿と重ね合わせ彼は何を思っているだろう。今季の投球内容、ケガの回復状況によってはレッドソックスへ残留か(個人的に可能性は低いと思う)、他チームへの移籍か、日本に帰国か、いずれかのオプションを選択することになるだろう。まだまだ老けこむには早すぎる、同期の出世頭として頑張ってもらいたい!!