2012年10月14日日曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第8位』

第8位/エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム
 - ホーム :ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム
 - オープン:1966年
 - デザイン:Noble W. Herzberg and Associates
 - 収容人数:45,957人





意外にもメジャー30球場の中で4番目に古い現役球場である(ア・リーグではボストンのフェンウェイ・パークに次いで2番目に古い)。


元々ドジャースタジアムで居候の身だったエンゼルスの為に、66年に専用球場として建設されたが、80年代にはNFLのラムズが流入してきてフットボール兼用スタジアムへ改築される不幸に見舞われた。


しかし97年にチームのオーナーシップがウォルト・ディズニー社に譲渡されるや状況が一変する。


エンターテインメント界の雄・ディズニーによる演出と、ボールパーク界の魔術師ことHOK社のノウハウが融合した大型リノベーションが実現し、辛気臭かった老いぼれスタジアムは、見事子供から大人まで楽しめるボールパークに生まれ変わった。


アメフト用に増築された左中間のスタンドは根こそぎ取り除かれ、代わりにビックサンダーマウンテンを連想させるような岩山を設置、普段は小川が流れ、エンゼルスのHR時には花火と噴水がブチ上がるシカケ。この岩山、表から見ると分かりにくいが、外野コンコースから背後に周るとアルファベットの「A」を型取られている事がしっかりと確認できる。


同じく左中間(現在の照明がある位置)に鎮座していた「ビックAサイン」が代わりに球場横のハイウェイ沿いに移転され、今もアナハイムのランドマークとして余生を送っている。


個人的には夏場の試合終了後に行われる花火大会がお薦め。球場の照明を全て落とし、左中間の岩山後方に上げる花火は他球場のソレとは比較にならないスケール感で圧倒される。さすがディズニー仕込みの演出と唸らずにはいられない。チームのホームページで試合スケジュールをチェックする際は「Fire Works」の注意書きを見落とさず、是非狙って観戦計画を立てて頂きたい。あ、あとココは三塁側がホームだから、座席に拘る人は気を付けて。


ディズニーは既にチームのオーナーシップからは退いてるものの、現オーナー、アルトゥーノ・モレノ氏(MLB史上ヒスパニック系初の球団オーナー)による地道なマーケティング活動が実り、見事2009年にはESPNによる「北米4大スポーツ全122チームの中でのベストフランチャイズ」の栄誉にも選ばれた。


「ボールパークとはどうあるべきか?」この辺の方向性の打ち出し方が非常に分かりやすくて、ほぼ同年代で年々老いていく雰囲気のドジャースタジアムよりも個人的には好き。


近隣にはディズニーランドはもちろん、ちょっと車を飛ばせばユニバーサルスタジオ、ナッツベリーファーム等のテーマパークには事欠かず、ニューポートビーチやハンティントンビーチ、大型ショッピングモールやアウトレットで買い物天国でもある。こんな”ザ・アメリカ”を満喫したい人にとって、ベストなロケーションと言えるだろう。


球場自体の完成度やクオリティーは昨今の新球場たちには到底かなわないかも知れないが、基本的な”ボールパーク”に必要とされるものは揃っている。


何よりLA特有のカラッとした空気、のどかな夕暮れの風景、熱狂的だが決して下品では無いファンが作りだす雰囲気が見事に融合し、球場全体をウェッサ~イな空気が包みこむ。何とも居心地のいい球場である。


まあ、ココがオレンジカウンティじゃなければランクインはしてないけどね!

2012年10月2日火曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第9位』

第9位/カウフマン・スタジアム
 - ホーム :カンザスシティ・ロイヤルズ
 - オープン:1973年
 - デザイン:Kivett and Myers
 - 収容人数:40,933人




「フットボール兼用スタジアム」建設ラッシュだった70年代において、しかもこの田舎街に、敢えて「野球専用球場」を建設した根性が単純にエラい。(NFLカンザスシティ・チーフスのホーム『アローヘッド・スタジアム』は球場と向かい合うように同じ敷地内に建設された。)


当時の流行で、開場当時は人工芝が敷き詰められていたが、96年に全面天然芝に貼り替えられ、この時点で”全米でも5つの指に入るクオリティーのボールパーク”との呼び声も高かった。


さらにカンザスシティは90年代以降一連の新球場建設ブームの火付け役となったHOK SPORT社(現POPULOUS社)がヘッドオフィスを構える地でもある。


ということで2009年からHOKによる大規模なリノベーションが施され、コンクリート造りで殺風景だった球場外観はガラス張りのクールな佇まいに生まれ変わり、おなじみの王冠型のビデオボードも世界最大級のLEDビジョンに取って替えられ、うす暗くて陰気くさかったコンコースも拡張されて明るくなった。


こうして少々クタビレ感のあった球場は見事「近代的ボールパーク」へと変貌を遂げ、めでたく30年ぶりに2012年度のオールスター開催地にも選ばれた。ほぼ同世代の「兼用スタジアム」が次々と姿を消していった中、「専用球場」を作った判断が後に生きた好例だと言えるだろう。


元々同市のシンボルでもある”噴水”が両外野上段スペースに施されていたが、リノベ後はレフト側にはクラブスペースが新設された為、ライト側のみ噴水が継承されている。特にナイター時にライトアップされた噴水は思わず見とれてしまう程美しいので、なかなかバカにできない。こういった遊び心のあるシカケを70年代に実現した点も大いに評価すべきだと思う。


皆さんはお忘れかと思うが、超鳴りもの入りでレッドソックスに入団した松坂大輔が公式戦デビューを果たしたのもこの球場。深夜に眠い目をこすってテレビ中継に釘づけになったのも今となってはいい思い出である。


少々話しはズレるが、カンザスシティはかつて二グロリーグの中心地としての役割を果たしており、特に地元チームの『カンザスシティ・モナークス』はドジャース入団前のジャッキー・ロビンソンや、伝説の2000勝投手、サチェル・ペイジらを擁し、リーグ屈指の実力・人気を誇っていた。


元々二グロリーグに関しては文献も多くないため、同市内にある全米唯一の『グロリーグ博物館』は必見である。(これも余談だが、モナークスで活躍していたロビンソンをドジャースにスカウトしたのは、あのジョージ・シスラーである)。


また博物館から数ブロック離れた場所には、かつてモナークスや、オークランドに移転する前のアスレチックスがホームにしていた『カンザスシティ・ミュニシパルスタジアム』の球場跡地が広がっており(今はただの野原だけど)、ココのベンチにしばらく腰掛け、往年のレジェンド達が躍動していた姿を瞑想し、思いにふけるのも良いだろう。(ここまで来ると相当の上級者か、頭おかしい人。)


かくして野球ファンとしての見識を広げるためには、めちゃくちゃ退屈な同地を訪れることも決してマイナスではないと思う。


カンザスシティには米国の地理重心、人口重心のほぼ中心に位置することから「Heart of America」というニックネームがあるが、ベースボールの過去と未来が共存するこの地には「Heart of Baseball」というニックネームさえ献上したいくらいである。

2012年9月27日木曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第10位』

第10位/オリオールパーク・アット・カムデンヤーズ
 - ホーム :ボルチモア・オリオールズ
 - オープン:1992年
 - デザイン:HOK Sport (現Populous)
 - 収容人数:45,971人




観客席から手が届くほど近くて美しい天然芝のフィールド、左右非対称でカクカクしたフェンス形状、レンガと鉄骨を組み合わせたクラシックなデザイン。かつて「ボールパーク」と呼ばれた空間を現代に蘇らせたオリオールパークは、1990年代初頭においては全てが斬新だった。


1960~70年代に米国内で建設された多くの”スタジアム”は、無機質なコンクリートで覆われた外観、人工芝のフィールドに、場合によってはドームで密封されていた、いわゆる東京ドームのような「多目的施設」であった。


こういった個性の無い「箱モノ」たちに満足出来なかった当時の野球ファンや選手、球界関係者はたちまちオリオールパークの登場とともに、その魅力に取りつかれた。まさに現代版フィールド・オブ・ドリームスである。


以降ココの成功にあやかろうと、同様の「ネオ・クラシック型ボールパーク(=古き良きボールパークの風情と最新設備を持ち合わせた野球専用球場)」建設ラッシュへと時代は大きくシフトして行く。。。


本案件で大成功をおさめた設計事務所の『HOK Sport社 (現Populous社)』は、そのブームの真っただ中で、いくつもの名作を生み出していくことになり、今や押しも押されぬ業界最大手へと成長を遂げた。今日のMLB全体の成功はHOK無くして成し遂げられなかったとさえ断言しても良いだろう。


球場のデザインはライト後方に隣接した元鉄道倉庫ビルを基調にまとめられ、球場の外壁やバックストップなど随所に同色調のレンガが施されている(倉庫内は改装され球団事務所やレストランが入居している)。


ただし、コンコースは現在主流のオープンタイプではなく、スタンドの後ろに隠れているタイプなのが唯一・最大の弱点といえる(神宮や甲子園と同じといえば分かりやすいか)。


バックスクリ―ン上部の『SUN紙』の電飾広告はオリオールズがヒットを打つとHが点灯し、エラーだとEが点灯するユニークな仕掛けになっているので、観戦の際には地味に注目されたい。


試合前には球場から徒歩圏内にあるベーブ・ルースの生家を見学すべし。だが、ボルチモアは全米でも有数に治安が悪い街なんで試合後はフラフラせずホテルに直帰するのが懸命である。


結局この球場の建設費がかさんだせいで当時の球団オーナーはチームの破産という状況に追い込まれ、開場当時オリオールズファンでごった返していた観客席は、今となってはフェンウェイパークでチケットを取りそこねたレッドソックスファンの溜まり場になっている。。。


と、開場から20年が経過した現在の状況は決してハッピーとは言えないかもしれないが、ココが球界に与えたインパクト、球場自体の美しさは今も色あせることは無く、本来はもっと上位ランクに位置するはずかもしれないが、文章の構成上10位に設定させてもらったことを関係各位にお詫びしたい。

2012年6月27日水曜日

ダルビッシュ「10勝」の裏側

ダルビッシュが26日のタイガース戦に登板し、6回2/3を4失点で切り抜け、見事10勝目をあげた。日本人投手によるオールスター前の10勝達成は、2008年の松坂大輔以来であり、ダルビッシュはMLBルーキーイヤーを順調に過ごしているように見える。



しかしながらこれまでの戦いぶりを見ていると、レンジャースの強力味方打線にかなり助けられているな~という印象も見受けられる。この点については恐らく多くの野球ファンも共感する部分ではないだろうか。



そこで今回は様々なデータからダルビッシュの実際の投球内容を分析し、メジャーのライバル先発投手の中での位置付けを考えてみたいと思う。



※尚、本文中の日付は全て米国時間、成績は今日現在のもの、比較対象はアメリカンリーグ(以下AL)の先発投手とする。



① 勝利数:10勝(4敗)

今日現在10勝はALトップの数字だが、クオリティスタート(以下『QS』:勝敗に関らず、先発投手が6回3失点以内に抑えた試合=いわゆる「先発投手が試合を作った」という指標)の観点から分析すると、今季のダルビッシュは15先発の内、QSは約半分の8回しか記録していない。



通常QSを記録したにも関らず、味方打線の援護に恵まれず負けた場合は「Tough Loss(ツイてない負け)」、逆にQSを記録出来なかったにも関らず、味方打線や相手投手の乱調等に助けられて勝ってしまった場合は「Cheap Win(安っぽい勝ち)」と言われているが、ダルビッシュの場合10勝4敗のうち、「Tough Loss」が2回、「Cheap Win」が4回記録されている(デビューしたマリナーズ戦なんてまさに「Cheap Win」の筆頭格だよね)。



QS率については8/15で53%なので、往々にして味方打線に助けられているという印象は間違っていないと思う。ちなみにALの主要先発投手40人のうち、QS率53%は最低の数字である。にも関らず勝利数はリーグ1位なのである。



例えばジェイク・ピービ(CWS)や、ジャスティン・バーランダー(DET)は今季13回のQSを記録し、QS率も80%を超えている。にも関らず、勝利数がピービ6勝、バーランダー8勝止まりなのである。ちなみに黒田はダルビッシュと同じ15回の先発機会で9回のQSを記録している為、当然QS率も60%とダルビッシュよりも高いが、勝利数は7にとどまっている。



② 奪三振数:106個

バーランダー:113個、シャーザー:107個(共にDET)の2人に続き、堂々のリーグ3位である。この数字はCCサバシア(NYY)やキング・ヘルナンデス(SEA)をも上回っており、このままローテーションを守り続けて行けばシーズン200奪三振も射程圏内である。さらに奪三振率(K/9)に関して言えば、10.01とリーグ2位の高水準を記録している(要は9イニング投げれば10個三振取りますよということ)。



近年のセイバーメトリクスの世界で、奪三振率は非常に重要視されている指標であるが(最も簡単・確実にアウトを取れる方法だから)、同様に『K/BB』(四球1つあたり三振をいくつ奪えるかという数値)も重要視されている。いかに「四球を与えず三振を奪えるか」という課題は投手の”完成度の高さ”を裏付ける数値であり、この点同僚のルイスは7.50(1四球に対して7.5三振を奪う)という驚異的な数値を叩きだしている一方、ダルビッシュは1.96(1四球に対して約2三振を奪う)と、リーグ34位/40人中に甘んじている。現状は「三振を沢山取るけど、四球も沢山出す」という評価である。それもそのはずで、ダルビッシュの与四球数50は今日現在リーグワーストの数字である。



③ WHIP:1.38

続いては米国でポピュラーに使用されている投手の新・指標『WHIP』を取り上げたい。『WHIP』とは「Walks plus Hits per Inning Pitched」の略で、要は「1イニングに何人の打者を出塁させたか」という数字である。



リリーフと先発投手では基準が異なるが、先発投手の場合、おおよそ1.00を切ると超一流のエース、1.20でローテの2~3番手級、1.40を割ると問題児。というレベルである。ダルビッシュの場合、1.38とほぼ問題児の領域に達しており(毎回約1.4人を出塁させている計算)、AL全体でも下から2番目の成績である。



一方先述のピービ、バーランダーはいずれも1.00を切っており、ノーヒッターを達成したジェレッド・ウィ―バー(LAA)に関してはリーグトップの0.91を記録している。レンジャースの中ではこちらもコルビー・ルイスがチームトップの1.08を記録しており、さすがローテ1枚目の安定感と言わざるを得ない。



④ 被OPS:0.678

打者の能力を測る上で近年『OPS』(On-base plus Slugging: 出塁率+長打率)の重要性が唱えられている事は皆さん既にご承知の通りだが、コレを投手主体の数値『被OPS』として見た場合、ダルビッシュの0.678はリーグ12位の好数値である。



打者の能力をOPSで測る場合、0.900を超えると超一流スラッガー(余談だがベーブ・ルースの生涯通算OPSは1.164である)、0.800を超えると一流、0.700を超えると普通、逆に割り込むと平均以下となる。



つまり、今季ダルビッシュと対戦した打者はリーグ平均以下の数字(0.678)に抑え込まれているという事である。しかも、上記の通り今季のダルビッシュはリーグワーストの与四球数である。つまり四球で沢山出塁を許しているにもかかわらず、OPSがリーグ12位に留まっていると言う事は、いかに「打たれていないか」という事に繋がるのだ。事実ダルビッシュの被打率は0.228でリーグ8位、被長打率も0.348でリーグ10位、と共にリーグで10番目以内に「単打も長打も打たれにくい投手」であるという事が言える。



⑤ 総評

<ポイント1> 勝利数は見事だが、味方の強力打線に助けられている部分は否定できない。

<ポイント2> 奪三振数・率も見事だが、与四球の多さ、K/BBの悪さは他の一流ピッチャーと比較できるレベルでは無い。

<ポイント3> 与四球で自らの投球を苦しめているものの、リーグ屈指の「打たれにくい投手」であることが言える。与ホームラン数8もリーグ随一の高水準。



こんなことは毎回中継を見ていれば言うまでもない事なのだが、改めて細かく数字を追いかけて浮き彫りになった事実である。本投稿を通してダルビッシュの成績にケチを付けるつもりもないし、むしろ今年の僕は熱狂的な「ダルビッシュマニア」の一人であると考えている。しかしながら上記数字を見る限り、10勝4敗という好成績とは裏腹に、まだまだリーグを代表する他のエースピッチャーとは比較にならない内容であることが裏付けられた。



一方で、数時間の雨天中断後に再度登板を直訴したり、度々リリーフ投手陣を気遣う姿勢は『男気度』として上記数値に反映されない部分である。雨天中止の際には、相手先発投手だった(元レンジャース・エースの)CJウィルソンは中断後早々と降板したが、テキサスのファンやチームメイトがCJがチームから出て行って、代わりにダルビッシュが来てくれて本当に良かったと思った瞬間だったに違いない。



また、元来の投手としてのマウンド上での適応力の高さも去ることながら、あまり得意ではないと言われている英会話で積極的にチームメイトとコミュニケーションをとっている姿にも今後の成長、順応の可能性を大きく感じる。



現状では「期待通りの良い投手」というレベルだが、今後(来季とは言わず後半戦にでも)「与四球数」を改善するだけで、ウィークポイントとされている指標が劇的に改善され、ダルビッシュは名実ともに「球界を代表する投手」になりうるポテンシャルを十二分に秘めていると今更ながら結論付けたい。まだ25歳だしね。



このペースで行くと、僕がシーズン前に上げた「4つの指標」は軽々クリア出来そうな気配で、何かとイチャモン付けたい気分なので今回は筆を執ったまでである。



また、昨今のサイ・ヤング賞の査定には上記の指標が大きく影響してくる実績があるため、コアな野球ファンとしては”ウワベだけの数字”に踊らされない、「数字の裏側」を見抜く根性も供えておきたい所である。

2012年5月1日火曜日

ダーラムと映画とタバコのハナシ

メジャーリーグも開幕から1ヵ月が経とうとしていたまさに今日、ヒデキのレイズとのマイナー契約締結のニュースが飛び込んできた。



今後チーム内で激しい競争を強いられることは想像に難くないが、好調レイズの一員として今後プレーオフを目指せる環境に身を置ける意義は非常に大きいと思う。また、若い選手が中心のレイズにとっても松井の勝負強い打撃と百戦錬磨の経験は、シーズンが佳境に差し掛かるほど頼られることとなるだろう。球界一のインテリ監督、ジョー・マドンの存在も心強い。



但し、今年はキャンプも練習試合もまだ経験していないヒデキは、暫くの間レイズ傘下のトリプルA『ダーラム・ブルズ』で世話になる事が既に決定している。このチーム、日本人にはなじみが薄いかもしれないが、米国内では最も有名なマイナーチームの一つと言われている存在なのである。



理由は1988年に公開されたケビン・コスナーの主演映画『BULL DURHAM(邦題:さよならゲーム)』の舞台として取り上げられた事による。同作は同じくケビン・コスナー主演でかの有名な『フィールド・オブ・ドリームズ』の一年前に公開された、マイナーリーガーの希望と哀愁を描いたB級映画だが、本作のヒットにより当時ブルズの名も一躍ネイションワイドのものとなった。






ちなみに劇中で描かれていたブルズはシングルAのマイナーチーム(しかもブレーブス傘下)だったが、映画の影響で人気が出てしまったチームに観客が押し寄せ、シングルAのキャパシティでは足らなくなり、新球場の建設と共に1998年にトリプルAへの昇格を果たしたのだ。ノースカロライナの田舎チームが、他の貧乏マイナーチームにとって垂涎のサクセスストーリーをやってのけたのである。その時にアフィリエイトもブレーブスからレイズ(当時のデビルレイズ)に移行したのだ。



さてこのブルズだがチームの歴史は長く、タバコ会社の野球チームとして1902年に創設されたことが起源となっている。ちなみにヤンキースやレッドソックスが創設されたのが1901年であるからほぼ同等の歴史を持つと言うわけだ。チーム名は『ブル・ダーラム・タバコ社』の社名から、ダーラム・ブルズと呼ばれるようになった。



元々ノースカロライナはタバコの名産地として知られており、今もキャメルやKOOL等のブランドでおなじみの『RJレイノルズタバコ社』も隣町のウィンストン・セーラムに本拠地を置いている。(ブル・ダーラム・タバコ社はその後吸収、合併を繰り返し会社自体は現存しないものの、2003年に当時の工場が復元され今もダーラムの観光名所となっている)。



本拠地のダーラム・アスレチック・パークは、ホームランを打つと煙が出るイナたい仕掛けの牛の形をしたブル・ダーラム・タバコ社の広告が有名だったが(劇中にも登場する)、現在は球場も牛も2代目となっている。(先代は旧球場と共に現役を退き、今は新球場のコンコース内でひっそりと余生を過ごしている)







実は「ブルペン」の言葉の由来は「BULL/PEN=牛の囲い」と解釈するのが普通とされているが、このブル・ダーラム社の牛の形をした広告が投球練習場の後ろにあったから、それにちなんで投球練習場自体が「ブルペン」と呼ばれるようになったという説もいまだ有力なのである。この辺はちょっとした野球ウンチクとして押さえておきたい。



尚、現在2代目の牛が鎮座している同球場のレフト側のフェンスは異様に高く設定されており、本場ボストンのアレをそのまんまパクった「ブルーモンスター」と呼ばれている(呼ばせている)。









話しは変わるが、35歳のおっさんがメジャーデビューを果たす『オールド・ルーキー』という映画もご記憶の方もいるだろう。ロードサイドのスピードレーダーで球速表示されるシーンが印象的な映画だったが、劇中にも主人公のジム・モリスがマイナーからメジャーにコールアップされるシーンがあり、彼が最後に所属していたのもこのダーラム・ブルズである。







またダーラムはアメリカの野球のナショナルチームの本拠地としても機能しているため、日米大学野球選手権なんてのもココの球場で行われる事になっている(隔年で)。斎藤祐樹がダーラム・アスレチック・パークのマウンドに登板した記憶がある人は相当の野球オタクに違いない。



まあ、そんなどうでもいい事を考えながらヒデキの活躍と、一日も早いメジャー昇格を願おうではないか。