2012年4月6日金曜日

2012年MLB 5つのトピック

いやいや、気づけばブログへの投稿なんて1年ぶりである。


いよいよ2012年度のメジャーリーグも本格的な開幕となったが、今年個人的に注目している5つのトピックに沿ってハナシを進めて行きたい。酒の席でのちょっとしたウンチクにでもなれば幸いである。尚、本文に記載されている数字や人名など、詳細については一切責任を持たない(持てない)。



1.ダルビッシュのデビューとその他の注目ルーキーについて
やはり今年の話題はダルビッシュで持ち切りだろう。酷なようだが、彼の活躍は自分自身の評価はもちろん、今後渡米する日本人選手の運命(特に投手の)を握っていると言っても過言ではない。それくらいのインパクトがあると思う。



よく「ダルビッシュは活躍すると思う?」なんて質問を受けるが、そういう意味では「活躍してもらわないと困る」のだ。


しかしながら今シーズンを終えた時に、何をもって「ダルビッシュは活躍した」と言えるのだろうか??日本人(特にメディア)は、やたら「勝ち星」にこだわる傾向にあるが、正直自軍の打線の援護やリリーフ陣の結果に左右されやすい「勝ち星」という指標だけでは評価基準は分からない。そこで、、、


 ■ 年間通してローテを守る事→「200投球回数」の達成
 ■ 上記を達成すれば自ずと「200奪三振」が見えてくるだろう。
 ■ 日本で1点台だった防御率は、3.50以下で十分。
 ■ 上記を踏まえた上で、最終的な勝ち星は15勝程度で十分。


このうち1つも達成できなければ期待外れ。2つを達成すれば上出来。3つを達成すればサイ・ヤング賞(もしろん新人王も)の可能性も出てくると思う。皆さんもちょっとした指標にしてもらえると幸いである。


またその他の注目ルーキーは、ナショナルズの神童ことブライス・ハーパー、エンゼルスのマイク・トラウト、先日も来日し豪快なHRを飛ばしたアスレチックスのヨエニス・セスペデス、同じく来日したマリナーズのヘスス・モンテロ、昨シーズン終了後に早くもレイズと長期契約を結ばれた左腕、マット・ムーアなどがあげられる。是非ダルと併せて注目頂きたい。







2.イチローの契約更新、松井やその他ベテラン勢の去就
ご存じの通り今シーズン終了時でイチローとマリナーズの5年契約が切れる事になる。来季以降の更新についても全く問題なし。と思っていたが意外にひと悶着がありそうなので注目したい。前回契約更新の2007年時はシーズン途中に早々に5年契約での延長を発表したが、今回はシーズン終了後まで契約交渉は持ち越しとの見解でチームもイチローも一致している。

チームにしてみれば40歳を間近に迎え、毎年成績低下を懸念されている選手に1,700万ドルは高価すぎる。となると契約年数や年棒でかなり厳しい提示になるのではと予想する(天下のジーターですらそうだったんだからね)。

一方イチロー自身も10年以上一度のプレーオフ進出が無く、体たらくを続けるマリナーズに嫌気がさしている可能性もある。少なくとも2007年当時ではチームに若干の可能性を感じていたかもしれないが、最低でも向こう数年はマリナーズがプレーオフに進出出来る可能性は極めて低いと言える。

つまりマリナーズ残留=現役中でのプレーオフへの望みを無くす。少々大げさだがこういう事になる。個人成績で頂点を極めた男であれば、一度はプレーオフ、いやワールドチャンピオンの味を味わってみたいと考えるのは普通ではないだろうか?



一方で既に世界一経験のあるヒデキは遂に所属が決まらないまま開幕を迎えてしまった。しかし彼一人マーケットに取り残されているのであればまだしも、ジョニー・デーモン、ウラジミール・ゲレーロ、マグニオ・オルドネスと4、5年前のオールスター級のビックネームがまだまだ未契約マーケットにゴロゴロいる。


昨年は長年一線で活躍を続けてきた、ジェイソン・バリテック、ティム・ウェイクフィールド、ホルヘ・ポサダ等の引退が非常に印象的だったが、多くのチームで若返り政策が進められている中、彼らベテラン勢にはもうひと花咲かせてもらいたいのだが。。。処遇はいかに。


3.新生マイアミ・マーリンズ、NL東地区とワイルドカードの増枠
今年注目のチームは?と聞かれれば真っ先にマイアミ・マーリンズと答えたい。長年閑古鳥が鳴き続けていたフットボール兼用スタジアムに別れを告げ、今年は念願の自前のボールパークを手に入れた。球団名もフロリダ・マーリンズからマイアミ・マーリンズに改称し、チームのユニフォーム・ロゴも一新された(業界内では悪趣味と評判が悪いが、僕的にはトロピカルな雰囲気で良いんじゃないかと思うけど。)


マーリンズ・ボールパークはマイアミ特有のスコールから試合を守るため、天井はスライド式の開閉タイプ、外野にはおネエちゃんが戯れる為のお約束のプール、バックネット裏には熱帯魚が泳ぐ水槽が施され、既にボールパーク界の独占禁止法に抵触しそうなPOPULUS社(旧HOK Sports)のエッセンスが随所に盛り込まれている球界一のゴキゲンパークとなっている。


こうしたハード面の整備によって収入面でも強気に出たオーナーは常軌を逸した?と言われるほどの大盤振る舞いに出て、オフには大物選手を次々獲得して行った。しかもメンツが濃すぎる。


ホセ・レイエス、マーク・バーリー、ヒース・ベルとこの辺までは良いが、セオ・エプスタインに「彼との信頼関係構築は不可能」と断言された球界一のキレ男カルロス・ザンブラーノ、無気力プレーのハンリー・ラミレス、ツイッターでの奔放発言が相次ぐローガン・モリソン、監督にはホワイトソックスからオジー・ギーエンを迎え入れ、「問題児の特別編入クラス」が出来上がった。


結果は大凶に出るか、大吉に出るか、どっちかになると思う。いずれにしろ今年のマーリンズは2004年に世界一に輝いたレッドソックスより濃いメンツが集まっている。
ある米国人の地元記者が、この「表裏一体のギャンブル性」こそが非常に「マイアミ的」と語っていたがまさにその通りだと思う。大富豪の別荘が立ち並ぶ一方、犯罪がまん延するスラムが同居している街こそがマイアミなのである。今シーズンはこのスリルに酔いしれたいと思う。


マーリンズの所属するナショナルリーグ東地区は、元々「世界最高の先発投手陣」を揃えるフィリーズが盤石であったが、このマーリンズの大補強や、長年低迷を続けていたがようやく戦力が整ってきた(トミージョン明けの怪腕ストラスバーグと、メジャーデビュー寸前の神童ハーパーを擁する)ナショナルズの台頭が期待されており、目が離せない。


また、今年からワイルドカードが2枠に増枠された事も大きな意味を持つだろう。これだけ力のあるチームが同リーグ、同地区内に固まると、優勝チームと、ワイルドカードチームが同地区から2チーム進出し、ワンゲームプレーオフを行うというシナリオも考えられなくはない。



実は全く同じ事がアメリカンリーグの東地区にも言えて、この新ルールの恩恵を最も受けるのはトロント・ブルージェイズではないかと言われている。過去5年間でアメリカンリーグのワイルドカードは全て東地区から進出しており、また過去5年間のワイルドカードが上位から2チーム選出されていたとすると、10チーム中8チームがア・リーグ東地区のチームだったというデータがあるのだ。それがまさにブルージェイズであり、レイズ、レッドソックスなのである。

4.大補強のエンゼルス、タイガース、レンジャース、マーリンズとヤンキースの静すぎるオフ
オフの主役は上記の通り大枚をはたいて次々大物を獲得して行ったマーリンズであり、プーホールズを10年2億5400万円で獲得したエンゼルスであり、メジャーリーグでまだ1球も投げていないダルビッシュに1億ドルをつぎ込み獲得したレンジャースであり、プリンス・フィルダーを獲得し、ミゲル・カブレラと球界屈指のクリーンナップを形成したタイガースであった。


一方ヤンキースの動向はあまりにも静かだったが、プライベートで愛人問題に揺れたキャッシュマンは非常に実のあるディールを行った。唯一最大の懸念だった先発投手陣に一晩で黒田とマイケル・ピネイダを加えると言う離れ業をやってのけ、サバシア、ノバ、ガルシア、ヒューズもしくは引退撤回のペティットという屈指の先発を形成させた。(また長年不安定な結果に悩まされ続けたAJバーネットをパイレーツに放出)


最近の傾向を見ていると、昨年のレッドソックスを筆頭に、「大補強したチームは意外とコケる」というジンクスが個人的には続いており、オフの主役が必ずしもポストシーズンの主役とは限らないという説を今年も唱えてみようかなと思っている。ヤンキースが好きなわけではない(むしろ大嫌いである)が、もしかすると今年の世界一は、、、という事になるかもしれない。


5.2012年注目選手
最後に個人的な注目選手を上記以外で5人列記しよう(上記で言及された選手は全員注目)。
まずは不運なケガから復帰を目指すジャイアンツのバスター・ポージー。個人的には今後10年間のメジャーリーグは彼に引っ張っていってもらいたいと考えている。


「常に人生最後の試合のようなプレーをする」とフランコーナ前監督を唸らせたレッドソックスのダスティン・ペドロイアも頑張ってもらいたい。彼こそが真のメジャーリーガーである。


開幕戦で来日し、日本のファンにも多少名前の売れたマリナーズのダスティン・アクリーも応援している。柔らかいスイング、コンタクトの強さはチェイス・アトリーをしのぐポテンシャルを持っている。ただし打席に入るテーマソングがカントリーミュージックなのは良くない。あれでは気合いが入らないではないか。


昨年のナ・リーグMVPから薬物疑惑のブルワーズ、ライアン・ブラウンも目が離せない。異議申し立てにより出場停止処分は解かれたものの、彼自身の潔白が証明されたわけではない(尿検査のプロセスの不備が指摘されただけ)。潔白を証明する唯一の方法は今年や来年以降も誰もが認める数字を残し続ける事だけである。



あと一人は迷うが松坂大輔を押したい。松坂もイチロー同様今季が契約最終年度。ダルビッシュフィーバーに沸く昨今、5年前の自分の姿と重ね合わせ彼は何を思っているだろう。今季の投球内容、ケガの回復状況によってはレッドソックスへ残留か(個人的に可能性は低いと思う)、他チームへの移籍か、日本に帰国か、いずれかのオプションを選択することになるだろう。まだまだ老けこむには早すぎる、同期の出世頭として頑張ってもらいたい!!