2013年3月12日火曜日

独断と偏見で選ぶボールパーク・ベスト10 『第3位』

第3位/AT&Tパーク
 - ホーム :サンフランシスコ・ジャイアンツ
 - オープン:2000年
 - デザイン:HOK Sport(現Populous)
 

 - 収容人数:41,915人





上の写真は数年前にサンフランシスコで観光用ヘリコプターをチャーターし、自ら球場を上空から撮影したものである。


何といってもココの特徴は球場後方がすぐ海!というロケーションである。これはワールドワイドな人気を誇る観光地”ベイタウン・サンフランシスコ”をまんま体現した演出となっており、この手の景観・ロケーションを生かした球場設計は、先日紹介したスタテンアイランド・ヤンキースの『リッチモンドカウンティバンク・ボールパーク』や、ピッツバーグの『PNCパーク』等々、以降HOKの十八番になっていく。


球場後方の海は厳密には湾の”入り江”になっており、かつてジャイアンツで活躍したウィリー・マッコビーにちなみ、「マッコビーコーブ」と呼ばれている。このマッコビーコーブにダイレクトで着水した場外ホームランは「スプラッシュヒット」と呼ばれているが、2000年の球場開場とちょうど同時期に活躍したバリー・ボンズのスプラッシュヒットが本球場を有名にしたらしめたといっても過言ではないだろう。


特にボンズの節目のホームラン記録がかかった試合で、記念ボール(一攫千金)を狙ってマッコビーコーブに群がったカヌーやボートの姿は皆さんも記憶に新しいはず。


ボンズが去った後もオールスターゲームやプレーオフといったビックゲームには、目立ちたがりやの輩が仮装したり、思い思いのデコレーションを施したボートでココに集結するので、ゲームとは別の楽しみとして地味に注目してみよう。


一度彼らの気分を味わう為に、ダウンタウン・ユニオンスクエアから発着している『ダックツアー』への参加をお勧めしたい。ボストンやシアトルでもお馴染みの水陸両用車観光ツアーであるが、SFダウンタウンの観光地を一通り回った後、マッコビーコーブに突入し、湾の中から球場を眺めるという貴重な体験を提供してくれる。(ただし、ツアーの経路についてはいくつかのパターンがあるようなので、事前に確認されたい。)


ライトフェンスがホームベースから近い上に、全盛期のボンズがパカパカスプラッシュヒットを連発していたもんだから、一見「ホームランがよく出る球場」という印象がついてしまっているかも知れないが、実際にはESPNによるパークファクターではMLBのフランチャイズ30球場中、なんと下から2番目の29位となっている。


実は高いフェンスと、湾から吹き込む強烈な海風が左打者にとって、非常に手ごわい相手となっているのだ。


そういえば2007年のオールスターゲームでイチローがランニングホームランを記録しMVPに輝いたのもココだが、アレは打球が右中間フェンスの角度が変わっている部分に当たり、打球を追っていたケン・グリフィーJr.がクッションボールの処理を誤ったことによるものである。言い換えればアレは左右非対称でいびつな外野フェンスの形状がもたらした奇跡と言える。


ライト外野席後方は少々の座席と立ち見スペースがあるが、一般客もアクセス可能なオープンコンコースになっているので、試合中海を眺めながら散策するのもいいだろう。そのままレフト外野席後方に回り込むとこれまた有名なコカ・コーラのオブジェと、巨大グラブが鎮座している。コーラのオブジェの中身は子供用の滑り台になっており4台のチューブが仕掛けられている。一方巨大グラブはホームプレートから150mの距離にあり、未だにダイレクトで着弾した選手はいない。


球場・ロケーションの美しさ、アクセスの良さ、近年のチームの好調も手伝って雰囲気も良く、ほとんどケチの付けようが無い素晴らしい球場であるが、敢えて苦言を。


球場後方の景観を維持する為、観客席を内野側に集約した判断は間違っていないと思うが、その分アッパーデッキの座席数を確保したかった為か、内野の1階席後方は2階席のヒサシが強烈にかぶって視界を妨げられる点が非常にストレスになる(特にフライボールが追いづらい)。


となると通常の内野席は高いチケット料金の割りには満足度が低いので、代わりに1塁側の3階席をお勧めしたい。チケット料金が安価な上に、球場後方のサンフランシスコ湾と、オークランドに向かって架かるベイブリッジが一望でき、これぞサンフランシスコ!という絶景が広がって見える特等席なのである(3塁側席からベイブリッジは見えない)。


観戦のお供には、地元産で有名な『Anchor Steam Beer』を、ツマミには元祖・ガーリックフライこと『Gilroy Garlic Friesがマスト。特に天気のいい日には昼真っからでもグイグイ進んじゃうこと請け合いであるが、カリフォルニアとはいえサンフランシスコの春先、秋口の夜は特に冷えるのでくれぐれも防寒対策は忘れずに。


ココがいよいよ来週に迫ったWBC決勝ラウンドの舞台にもなるわけだが、現地へ足を運べる人も、テレビ中継に釘付けになる予定の人も、こんなくだらない予備知識を持って観戦に望んでいただければ幸いである。「阿部や糸井といったキーとなる左打者がサンフランシスコ湾からの強烈な海風にどう対応するかが鍵だね~。」なんてウンチクで通ぶるのも良いだろう(でもウザがられないよう気をつけて。)


さて、サムライたちがここで躍動できるか否か、今から楽しみである。